2015 Fiscal Year Annual Research Report
熱弾性マルテンサイト組織の形成ダイナミクスと3次元構造の超顕微解析
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26249090
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 稔 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90183540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (10514218)
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20203078)
Farjami Sahar 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20588173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 晶癖面 / 格子不変変形 / 結晶学 / 自己調整 / 超顕微解析 / 動的観察 / 多次元観察 / 形状記憶・超弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱弾性マルテンサイト(以下M)組織の形成ダイナミクスについてTi-Ni合金を中心として以下の研究を実施した. 1)等温熱弾性M変態:Ti-Ni単相合金についてM相の核発生と不変面の形成過程を時間軸上で再現することを目的とした. 等温変態に伴うと考えられる僅かな電気抵抗の変化は確認できたものの,組織変化を認めることはできなかった.一方,直径100 nm 程度のレンズ状の整合析出相を含むNi過剰Ti-Ni時効材においては,変態点直上における等温保持によって著しい電気抵抗の低下とM相の出現が認められた.これは析出相の整合応力によって等温変態が促進されたものと考えられ,応力誘起等温M変態と定義できる. 2)自己調整構造に及ぼす合金組成の影響:Ti-50.0~51.0 at.% Ni合金を溶製しM相の自己調整構造である2,3,4,6HPVsクラスターの形成過程を調べた結果,Ni濃度の上昇に伴い6HPVsクラスターの出現頻度が高くなった.各試料の格子定数の温度依存性をX線回折により精密に測定し6HPVsクラスター を完成させるために必要な回転角を数値解析により求めたが,Ni濃度の上昇に伴い回転角が大きくなるという矛盾した結果が得られた. 3)3次元解析:自己調整組織を{111}B2と晶癖面との交角を基にモデル化すると非常に長大な6角錘となる.これを確認するためにクライオFIB/SEMによるSlice and View 観察を行ったが,M相が非晶質化した.そこで様々な面方位を持つ母相多結晶に現われる逆変態レリーフを系統的に観察した結果,モデルの特徴と一致する結果が得られた. 4)Cu-Al-Mn合金のM相とベイナイト(以下B)相の階層的組織解析:M変態と無拡散変態と拡散変態の両者の特徴を持つB変態のSEM内その場観察,FIB/SEMによる3次元観察を行い,両変態の類似点と相違点を描出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)等温熱弾性M変態の微細構造解析:Ti-Ni合金の自己調整構造の形成過程を準静的に観察する研究であるが,単相試料における等温変態量は極めて少なく,目的の達成には至っていない.しかし,2相試料において応力誘起等温M変態と定義できる新たな現象を見出した. 2)Ti-Ni合金のB19’Mの自己調整構造に及ぼす合金組成の影響:Ti-Ni合金の理想的な自己調整構造である6HPVsクラスターの出現頻度がNi濃度の上昇とともに高くなることを定量的に確認できたが,その拠り所となる理論解析との間に矛盾が生じた. 3)自己調整組織の3次元解析:クライオFIB/SEMによるSlice and View 観察と並行して実施している様々な面方位を持つ母相単結晶・多結晶に現われる逆変態レリーフの系統的な観察によって,提唱している3次元モデルの特徴と一致する結果が得られた. 4)Cu-Al-Mn合金のM相とベイナイト(以下B)相の階層的組織解析:M変態と無拡散変態と拡散変態の両者の特徴を持つB変態のSEM内その場観察,FIB/SEMによるSlice and View 観察を行い,学術誌に成果を公表した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した研究事項1) ~ 4)について更に精査し,主要な結果を学術誌に投稿する.これらに加えて,「自己調整組織の形成・消滅・再形成に伴い導入される格子欠陥の解析と制御」に関する研究を遂行する.具体的な計画を以下に示す. 熱弾性M変態においては単純な冷却・加熱サイクル,すなわち,正変態・逆変態を繰り返すことのみでも結晶中に転位などの不可逆欠陥が導入され,サイクル数の増加に伴い変態点が低下し,設定温度で所望の形状回復が起こらないなど特性が劣化する.しかし,M相の自己調整組織のどこに格子欠陥が蓄積するかは明らかになっていない.そこで本課題では,自己調整構造が逆変態レリーフとして残存する薄膜試料をTEM観察することで,種々の結晶界面にどのような格子欠陥が発生するか調査する. 以上の成果を踏まえ,特性劣化の起こり難い自己調整組織の特徴を明確にする.次に母相の結晶粒径や形状を制御することによって,自己調整組織の制御が可能であるかを検討する.例えば,Ti-Ni合金において単一の自己調整組織のみが形成されるように,自己調整組織に近い形状の母相結晶粒,すなわち,長軸が<111>B2でアスペクト比の大きな母相結晶粒の調製を試みる.これが達成されれば特性劣化の抑制のみならず,変態温度履歴および超弾性における応力履歴の低減につながる.以上を通じて熱弾性M変態に伴う組織形成過程と形状記憶効果の改善に資する基礎学理を確立する.
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Research Products
(10 results)