2016 Fiscal Year Annual Research Report
コンポジット電解質膜を用いた中温無加湿作動燃料電池システムの構築と信頼性評価
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26249097
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 剛 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10548192)
武藤 浩行 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20293756)
服部 敏明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80198762)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70514404)
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, グループリーダー (90354216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 電解質膜 / コンポジット / 中温 / 信頼性 / リン酸 / 触媒 / イオノマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、コンポジット電解質膜を独自設計し、100℃を超える中温領域において無加湿条件でも作動する燃料電池を構築して実用化に向けた課題抽出を行い、研究開発を発展させることを目的としている。 平成28(2016)年度は、(1)PBI電解質膜の添加剤に関する検討を行った。共同研究によって独自に合成した骨格に窒素含むヘテロ環式化合物A、Bを硫酸水素セシウム(CHS)とメカニカルミリング処理を行い80CHS-20Aおよび80CHS-20B(mol%)複合体を調製した。XRD測定から出発物質の回折ピークがほぼ消失し、無機有機複合体が合成されていることを確認した。得られた複合体の導電率は、100℃無加湿条件下で10-7Scm-1程度であった。これは、これまでに開発してきたトリアゾール(Tz)との80CHS-20Tz無機有機複合体の導電率と比較して4桁以上低いものの、PBIへの標準的な添加物としてきたケイタングステン酸(WSiA)との複合体50CHS-50WSiA無機固体酸複合体と比べると1桁程度低い値であった。80CHS-20Aおよび80CHS-20BをPBIに添加(20~2wt%)した膜は、150℃無加湿条件下において当初高い発電特性を示すものの、24時間後には大きく出力が低下することがわかった。出力低下の原因は膜の耐久性によるものと考えられた。(2)また、発電特性の一層の向上を目指して、カーボンペーパーに触媒層を塗布する技術の開発と、電極・触媒・電解質からなる三相界面に無機固体酸をイオノマーとして導入することを試みた。50CHS-50WSiA複合体を燃料極アノードに添加した場合にも、空気極カソードに添加した場合にも、出力が大きく向上することを見出し、50CHS-50WSiA複合体が電解質膜中のみならず、電極中においても有効なイオノマーとして作用することを実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)平成27年度からスタートした化学系企業A社およびB大学研究所との共同研究は継続的に実施されており、順調に進んでいる。 (2)骨格に窒素含むヘテロ環式化合物を設計し、合成する技術は独自性が高く、現時点で特性の向上と長期安定性は両立できていないものの、さらなる進展が期待できる。 (3)本年度初めて無機固体酸複合体を電極触媒にイオノマーとして導入することで特性が向上する非常に有用な知見を得た。 (4)無機固体酸のPBIへの添加に関しては、無機固体酸複合体を湿式微粉砕処理、直接有機溶媒中で合成などすることで、コンポジット電解質膜の均質性と特性が向上することなどが明らかとなっている。 以上のことから、「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)骨格に窒素含むヘテロ環式化合物を別途設計し、PBI電解質膜の添加剤としての可能性を検討して行く。 (2)無機固体酸複合体が電解質膜のみならず電極触媒に対してもイオノマーとして有効に作用することを見出した。今後、スラリーの調製方法や塗布方法などについてプロセス技術を向上させていく必要があると考えている。 (3)無機固体酸複合体を湿式微粉砕処理、直接有機溶媒中で合成などすることで、コンポジット電解質膜の均質性と特性が向上することなどが明らかとなっている。特に、直接有機溶媒中で合成する手法は新規プロトン伝導体の合成方法として可能性を秘めており、サイエンスとしての基礎を確立して行きたい。 (4)最近公表された論文を参考にPBI電解質膜への酸化物微粒子の添加効果についても調査する。また、プロトン伝導体/カーボン複合体のイオンセンサ等への応用の可能性についても検討を進める。 (5)長期発電特性の評価および信頼性評価試験を進めて行く。
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