2016 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Stronger, Tougher Steel by Microstructure Control and Development of Fracture Control Technology
Project/Area Number |
26249107
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
井上 忠信 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点 設計・創造分野 塑性加工プロセスグループ, 分野長 (90354274)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 機械材料・材料力学 / 材料の強靭化 / 破壊制御 / 微細組織制御 / き裂伝播挙動 / 低合金鋼 / 結晶粒微細化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までに創成した超微細繊維状結晶粒組織を有する1800MPa級の棒鋼(TF材)を対象に,層状破壊を引き起こす微視き裂発生のクライテリアを検討した.実験では,-196℃~200℃の温度範囲で初期ノッチを導入した3点曲げ試験(10mm角×55mm長さ,ノッチ底の局率半径0.13mmの試験片)を実施した。初期き裂発生のクライテリオンを明確化するため,ノッチ底近傍の組織を変化させない適切な条件を電子ビーム溶接で探索し,TF材の14mm幅の両端を低炭素鋼と溶接後,繊維(圧延)方向とノッチの方向が平行となる3点曲げ試験片(TF90材)を作成した.TF90材は-196℃~100℃の温度範囲で脆性的に,200℃で延性的に破壊した.脆性破壊した各温度におけるノッチ底の応力分布をFEMで解析し,各温度の脆性破壊応力sFを定量化した.その結果,TF材のRDと垂直な方向のsF(長軸粒径に相当)は,-100℃以上で3.2GPa,-196~-170℃で2.6GPaであった.これらの値が層状破壊を引き起こす微視き裂発生のクライテリオンと考えられる.なお,同じ強度レベルの通常の焼入れ焼戻し材(QT材)は-100℃以上で4.2GPa, -196~-170℃で3.6 GPaだった. 破壊の有効結晶粒径は,微細フェライト結晶粒と言うよりはむしろマルテンサイト変態で形成されるパケット径である可能性が高い.圧延加工で伸張したパケット径が有効結晶粒径と仮定した場合,TF材のRD方向のsF(短軸粒径に相当)は,-100℃以上で6.2 GPa,-196~-170℃で5.0 GPaと試算された.すなわち,これらの値は,QT材のsFに比べ1.4倍,TF90材のそれに比べ1.9倍以上高かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶接材の3点曲げ試験評価の結果、破壊データに予期しなかったばらつきが見られた。試験材を検討したところ、溶接不良とみられたため、開発材を新たに創製後、再度溶接条件の洗い出しを実施することに時間を要し、結果的に5ヶ月の繰越し(H29年8月31日迄)を実施したが,その後は溶接不良も無く3点曲げ試験を問題なく実施でき予定通りに研究は進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
一般的に,材料の降伏応力は温度に依存(低温になるほど高くなる)するが,脆性破壊応力は依存しないと言われていた.しかし,数値解析と実験結果から,脆性破壊応力を定量的に検討することで,ある遷移領域で破壊応力が変化することを見出した.この事実は,微視組織に強く依存しており,脆性破壊応力と結晶粒径の関係を含めて検討を行う. また,強度レベルの異なる材料を創成するため,0.15%C-0.3%Si-1.5%Mn成分の鋼を空冷および水冷後,500℃で2方向平ロール圧延を施し,微細繊維状結晶粒組織を有する800MPa級の棒鋼の創成し,特性試験を実施する.
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Research Products
(9 results)