2015 Fiscal Year Annual Research Report
表面形態・構造のナノスケール制御に基づく医療用金属材料の長期信頼性設計
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26249111
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 愼司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70199371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 博昭 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432513)
末廣 さやか (宮部) 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50584132)
廣本 祥子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (00343880)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気化学プロセス / 表面改質 / 生体材料 / 再不働態化 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面酸化物層が再不働態化挙動に及ぼす影響、表面形態が腐食疲労寿命に及ぼす影響を検討するとともに、摩擦・摩耗下における金属の溶解・再不働態化挙動を検討するためのシステム構築を行った。またすき間内腐食の数値解析シュミレーションに取り組んだ。表面酸化物層が再不働態化挙動に及ぼす影響では、従来用いられているスクラッチ法ではアノード反応、カソード反応が混在した情報になるため、再不働態化にとって肝要なカソード反応のみを解析することが出来なかった。そこで、表面酸化物層が損傷した際に非損傷部へ流れる電流を模擬することでカソード過程のみを解析するシステムを構築し、ステンレス鋼にて実験を行った。模擬電流により電位は降下し、その降下幅は表面処理法により変化することが分かった。この電位が卑であるほど、アノード電流すなわち局部腐食が抑制されるため、電位降下幅を大きくするための条件を検討した。その結果、皮膜容量が小さく、酸素還元反応抵抗が大きい試料で、降下幅が大きくなることが分かった。また皮膜容量を小さくするには電位を早期にフラットバンド電位より卑にすること、酸素還元反応抵抗を大きくするには電荷移動抵抗を小さくし皮膜表面での溶存酸素を早期に低減させることが有効であることを見出した。ナノホール形成や表面研磨などで表面形態を変化させたステンレス鋼の生理食塩水中での疲労試験を行った結果、疲労寿命は表面形態により大きく変化することを見出した。さらに摩耗・摩擦試験と電気化学測定が同時に実施できるシステムを構築しステンレス鋼を用いて基礎実験を行った。その結果タンパク質が鋼表面を被覆すると、摩擦・摩耗により表面酸化物層が破壊された際の金属イオン溶出を抑制するが、再不働態化を抑制することが分かった。また、すき間腐食シュミレーションでは、すき間間隔だけでなくすき間の構造もすき間内の腐食挙動に影響することを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュミレーションによるpH変化を考慮した環境下での再不働態化挙動の評価やナノホール構造の効果の解明には至らなかったが、局部腐食を抑制するための皮膜構造について大きな進捗が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
腐食疲労寿命に及ぼすナノホール構造の効果の解明のため、ナノホールサイズや応力レベルの影響や、強度・組織を制御した実験も併せて行う。またナノホール構造の効果が他の金属でも見られるかについてもチタンやアルミニウムならびそれら合金を用いて検討を加える。これらの検討については、繰り返し応力負荷試験時の電気化学的状況のモニタリングを実施するだけでなく、随時試験を中断してき裂の発生状況とナノホール構造の相関を調査する。一方で、遅い材料変形に伴う応力腐食割れ試験も実施して、表面ナノホール構造と環境脆化挙動との相関を材料学的観点から検討を加える。また摩擦・摩耗試験においては、金属材料表面に吸着したタンパク質が溶解・再不働態化挙動に影響を及ぼすことが分かったので、装置を無菌状態に維持し、高度な模擬生体環境が金属の摩擦・摩耗特性に及ぼす影響を検討する。
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