2016 Fiscal Year Annual Research Report
南アフリカ大深度鉱山でのAE計測による岩盤破壊規模と時期の予測に関する研究
Project/Area Number |
26249137
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森谷 祐一 東北大学, 工学研究科, 教授 (60261591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 正生 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90345174)
直井 誠 京都大学, 工学研究科, 助教 (10734618)
川方 裕則 立命館大学, 理工学部, 教授 (80346056)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地殻工学 / 地震 / 資源 / AE |
Outline of Annual Research Achievements |
南アフリカ(以下南ア)の金鉱山では, 深度1~3.6 kmで採鉱が行われており,採鉱による応力変化に起因して大きな地震(岩盤破壊)が起きている.本研究の目的は,前駆現象から大規模破壊に至るまで様々なスケール(数cm ~100m)の岩盤破壊を, AE観測網により至近距離で計測し,観測される膨大な数のAEに着目して,大規模破壊に至るプロセスを明らかにすることにある.本年度は,Cook4金鉱山内の1.掘削前面岩盤内の破壊ゾーンで発生したAE,および2.目視で確認されている地層断面上で繰り返し発生するAEに着目した詳細な解析を行った.その結果,1.については,Collapsing法を適用し,約200万個のAEが描き出す構造を調べた結果,二次元状AE分布は普遍的に形成されており,時空間分布から分析すると,二次元状分布は切羽から一定の距離で規則的に始まるわけではないことや,ある場所から徐々に広がるような活動を示すのではなく,最初から最終的な活動域全体で始まることがわかった.さらに,時間とともにb値が顕著に低下する傾向も確認され,大規模の破壊が発生しやすい傾向になることもわかった.2.については,地層断層面上で繰り返し発生する類似波形を有したAE群を解析したところ,1年以上にわたって活動が続くもの,途中で活動が始まるもの,停止するものが存在することがわかった.そして,マグニチュードの減少が見られる群もあり,断層上の局所的応力集中が緩和されていく過程,かみ合っている部分が摩耗・解消していく過程に対応している可能性があることがわかった.本年度ターゲットとした領域では大規模AEは発生していないが,準備過程と思われる現象を計測することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは,金鉱石採掘による応力変化により発生する掘削前面岩盤内の破壊,地層断面上固着部の破壊について,観測される大量のAEを用いて検討を行ってきた.その結果,断層面上の固着部が繰り返し破壊を起こす現象や,微小き裂面のせん断滑りが各所で発生することで岩盤のダメージゾーンが形成されることを,AEの発生挙動や震源分布から明らかにした.本年度はさらに解析を進めた結果,金鉱石掘削前面については,AEが発生する領域は,時間とともに徐々に拡大するのではなく,最初から活動領域が決まっていることが明らかとなった.本観測結果は,大規模破壊が発生する領域や規模は,応力変化の領域や岩盤の力学的性質により決まる影響領域にほぼ規定されている可能性を示唆されるものであり有意な結果である.微小破壊から大規模破壊に至るプロセスを検討する一つのアプローチとして,繰り返し発生するAE群の発生挙動に着目していたが,地層断層面上で発生する繰り返しAE群の解析の結果から,1年以上にわたって発生し続けるAE群,途中で発生しなくなるAE群が存在することが明らかになり,断層面上のアスペリティが摩耗・解消していく現象や局所的,応力集中が緩和されていく現象と推測される事象を観測できた.このように多数のAEとそれらの時空間分布から,大規模破壊に至るまでの準備過程を明らかにするうえで重要な知見が逐一得られており,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,掘削前面および地層断層上での破壊現象の双方について得られた解析結果を精査,整理し,他の研究者らにより得られている知見も併せて大規模破壊に至る準備過程を検討する.ここでは,現場での目視観測により得られた知見も取り入れて考察する予定である.一方,地熱開発においても規模の大きな地震の発生が開発上の問題となっているが,申請者らは各国の地熱フィールドで観測されたAEデータを有していることを利用して,申請時の計画にあったように,地熱フィールドデータの解析結果と鉱山内AEの解析結果との対比を行うことにより現象の普遍性について検討する.繰り返し発生する類似波形を有したAE群を検出するためのソフトウエアを開発したが,実際のAE波形に適用し,性能を明らかにする.成果を逐一学会等で発表するとともにこれまでの研究成果や知見をまとめる.
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