2015 Fiscal Year Annual Research Report
肥満による発癌促進機構の解明とその予防法開発への応用
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26250028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 英二 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80263268)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 肥満 / 腸内細菌 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満に伴う腸内細菌叢の変化とそれによって引き起こされる発癌誘導機構の詳細を明らかにすることを目的とした研究を行い、今年度は以下の研究結果を得た。
(1)我々はこれまでマウスを用いた研究から、Clostridium クラスターXIに属する未同定の腸内細菌の増加 が肥満に伴う肝癌の発症にかかわっている可能性が高いことを見出していた。そこで昨年度よりこのClostridium クラスターXIに属する未同定の腸内細菌の探索を試みてきた。今年度はこの腸内細菌を同定し、そのゲノム配列を解読することに成功した。ゲノム配列の解読結果から、この腸内細菌のゲノム上には当初期待していた二次胆汁酸産生酵素をコードする遺伝子は存在していなかったが、二次胆汁酸を含む胆汁酸を脱抱合化し、より毒性の高い胆汁酸へと変換する作用のある酵素(脱抱合化酵素)をコードしていることを見出した。このため、肥満に伴い二次胆汁酸産生菌が増加すると同時に、この細菌が増加することでより毒性の高い二次胆汁酸が産生される可能性が高いと考えられた。また、この結果は、二次胆汁酸を産生する菌が我々が当初予想していたClostridium クラスターXIに属する腸内細菌以外に存在することを示しており、改めて肥満で増える二次胆汁酸産生菌の探索を行った。その結果、二次胆汁酸産生酵素の産生に必要な酵素を有しているClostridium属に属する別の腸内細菌の単離培養に成功した。
(2)RNAiや化合物を用いた検討により細胞老化に伴うSASPの誘導には従来知られていたDNAダメージ応答経路だけでなく、異なる複数のシグナル伝達経路も関与していることを見出した。更にそれらがクロストークしながら、転写因子NFkBの活性化と、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構の変化を引き起こしていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定のうち、一部予想通り進んでいない部分もあるが、多くは予想通り進行していると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)同定した腸内細菌のゲノム配列を基に肥満に伴いそれら腸内細菌が増殖しやすくなる作用機序の解明を行う。更にそれらの作用機序を標的とするような化合物や天然物の探索を行うことで、肥満に伴う発がんを予防する方法の開発につなげて行く。
2)肥満に伴い増加する二次胆汁酸による肝星細胞のSASP誘導機構の解明を行い、その作用機序を標的とした化合物や天然物の探索を行うことで、肥満に伴う発がんを予防する方法の開発につなげて行く。
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