2014 Fiscal Year Annual Research Report
HB-EGFの特性を理解した新たながん抑制法の開発
Project/Area Number |
26250033
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
目加田 英輔 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (20135742)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | HB-EGF / 増殖抑制 / マイコプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では以下に示す(1),(2)の実験を実施した。 (1) HB-EGFが示す増殖抑制作用の解析 HB-EGFはcardiac cushionの内皮細胞で発現し、内皮細胞から分化転換した間質細胞に働いてその増殖を抑制する。間質細胞にはEGFR/EGFRホモダイマーとEGFR/ErbB4ヘテロダイマーが存在するにもかかわらず、EGFR/ErbB4ヘテロダイマーだけを選択的に活性化していると考えられる。この増殖抑制機構を明らかにするために、EGFR/ErbB4ヘテロダイマーの下流で流れる因子の解析、およびこれまでに報告されているErbB4のnon-canonical pathwayについて検討し、HB-EGFはEGFR/ErbB4ヘテロダイマーを介して細胞増殖抑制機構を発揮していることを明らかにした。 (2)HB-EGFによる発がん・悪性化とマイコプラズマ感染との因果関係の解明 マイコプラズマ感染はToll様受容体を介したNF-κBの活性化を誘導することが知られている。またHB-EGFはNF-κBの標的遺伝子の一つとして知られている。これらのことから、HB-EGFによる発がん・悪性化とマイコプラズマ感染に因果関係があると考えられる。すなわち、1)マイコプラズマが上皮組織に感染し、2)その感染が引き金となってTNF-αが誘導され、3)発現したTNF-αがNF-κB経路を活性化し、4)それによって標的遺伝子であるHB-EGFの発現を亢進させ、5)誘導されたHB-EGFがオートクライン、パラクラインによって細胞増殖や運動性を亢進させることでがんの発症・悪性化に寄与する、というメカニズムである。上記の作業仮説をヒト卵巣癌由来培養細胞を用いて解析を進め、マイコプラズマ感染によってTNF-αが誘導され、TNF-αがHB-EGFを誘導することを明らかにした。また、マイコプラズマ感染細胞と非感染細胞の軟寒天培地上での増殖性や、ヌードマウス皮下に移植したときの腫瘍形成速度を計測し、マイコプラズマ感染によるHB-EGFの発現上昇が癌化に寄与していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
卵巣癌細胞を用いたマイコプラズマ感染実験の結果、当初予定の卵巣癌細胞への感染方法では、用いるマイコプラズマの感染力価にばらつきが生じ、条件設定が予想以上に困難なことが判明した。このため、マイコプラズマの純粋培養法を行い、感染実験を再度行う必要が生じたが、本研究で使用するマイコプラズマに関しての純粋培養法は確立されていないため、時間を要した。そのために実験の進捗が約1年遅れてしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)の実験については順調に進行し、平成28年4月11日現在、この研究の成果を論文に取りまとめ、平成28年6月を目途に投稿予定である。 (2)の実験については、一部の実験についてより正確詳細なデータを採取しており、これが終了次第論文として取りまとめ、今年度中の公表を目指す。
|