2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26251003
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平野 達也 国立研究開発法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 主任研究員 (50212171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / タンパク質 / 遺伝学 / ゲノム / 分化・発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要 (1)細胞レベルにおけるコンデンシンの機能分担:H27年度は、染色体構築における2つのコンデンシンの差次的貢献を検定するための新しいアッセイ系を確立することができた。Mgキレート剤を含む低張バッファーで分裂期細胞を処理すると染色体はおおきく膨潤する(脱組織化)が、これを適切な塩濃度のバッファーにさらすと染色体は可逆的にもとの形態にもどる(再組織化)。詳細な解析から、この再組織化反応にはコンデンシンIIが大きく貢献しており、コンデンシンIの貢献は小さいことが分かった。また、機械学習プログラムを利用した画像解析を導入することにより、こうした染色体形態の変化をより定量的に見積もることにも成功した。こうした解析を通して、コンデンシンサブユニットが有する特徴的な物理化学的性質が、いかにして分裂期染色体の構築に貢献しているかという問題に対して新しい視点を与えることができるものと期待している。 (2)組織レベルにおけるコンデンシンの機能分担:マウス卵母細胞から2つのコンデンシンをノックアウトする実験系を構築し、減数第一分裂期から受精後の第一卵割まではコンデンシンIIの機能がドミナントであることを明らかにした(K. Nasmythグループとの共同研究;Houlard et al, 2015 Nat Cell Biol)。さらに、コンデンシンが有する、スピンドルチェックポイントの不活化における減数分裂特有の役割についても理解を深めることができた。 さらに細胞周期における細胞内局在の違いがどういうメカニズムによって制御されているかという問題について研究を進める予定であったが、研究担当者が個人的な事情により退職することが判明した。同様の知識と技能を持つ新たな人材を確保するまでに6ヶ月の期間を要したことから、当初平成28年(2016年)3月までに取りまとめる予定であった研究が、平成28年(2016年)9月までかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)細胞レベルにおけるコンデンシンの機能分担:染色体構築の物理化学的基盤を理解する目的で、可逆的組織化アッセイを確立し、2つのコンデンシンの差次的貢献を示すことができた意義は大きい。 (2)組織レベルにおけるコンデンシンの機能分担:これまでに、条件的ノックアウトマウスを用いた解析を通して、神経幹細胞の増殖と染色体分離における2つのコンデンシンの役割を明らかにするとともに (Nishide and Hirano, 2014)、減数分裂期における両者の異なる貢献についても深い理解に到達することができた(Houlard et al., 2015)。 細胞内局在の問題については、細胞種間での微妙な差異を解析する手段の乏しさや局在シグナルを迅速に定量する技術の困難に直面した結果、残念ながら発表に足るだけのデータを取得することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年(2014年)度と平成27年(2015年)度にわたって、条件的ノックアウトマウスを用いた論文を発表していること、また上記のようにその後の研究には迅速な発展性が望めないことが判明したことから、「組織レベルにおけるコンデンシンの機能分担」についてはここまでで区切りをつけることとする。平成28年(2016年)度はもう一つのプロジェクト「細胞レベルにおけるコンデンシンの機能分担」に集中して研究を進める。
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Research Products
(4 results)