2015 Fiscal Year Annual Research Report
DNAトランスアクションと共役したクロマチンリモデリング機構の構造基盤
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26251008
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Research Institution | International Institute for Advanced Studies |
Principal Investigator |
森川 耿右 公益財団法人国際高等研究所, チーフリサーチフェロー (80012665)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNAトランスアクション / クロマチンリモデリング / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度のクロマチンリモデリング因子FACTに加えて、様々なヒストンシャペロンやATP依存的クロマチンリモデリング因子でもNickヌクレオソームに対して親和性があるのか否か、について調べた。しかし、明確に強い親和性を示すものは今のところえられていない。また昨年度、制限酵素によってDNAが両鎖とも切断されたヌクレオソームはFACTに強く結合し、安定な複合体を形成することがわかった。そこで今年度は、二本鎖DNA切断 (DSB) 部位を任意の箇所に導入した数種類のヌクレオソームを用いて、FACTに対するヌクレオソーム立体構造上のDSBの位置の結合選択性を解析した。つまり、ヌクレオソーム上のどの位置にDSBが存在すると、FACTが結合しやすいかを精査する解析である。その結果、ヒストンH2BのN末端塩基性領域の近傍にDSBがあるヌクレオソームに最も効率よくFACTが結合できることがわかった。加えて、FACTはヒストンH2BのN末端塩基性領域に結合することが生化学的解析から明らかとなった。このヒストンH2BのN末端塩基性領域はヌクレオソーム内で二本のDNA鎖に挟まれて存在し、DNAと強く結合している。したがって、FACTが結合するためにはDSBによってDNAの局所的な構造変化を誘発し、この領域をヌクレオソームDNAから露出させる必要があると示唆される。この結果を基に、FACTによる新しいヌクレオソーム構造変換の分子機構を提案した。この研究成果は国際学術雑誌「Genes & Development」に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の変更はあったが、研究成果を論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々なクロマチンリモデリング因子とDNA切断部位のあるヌクレオソームの複合体のうち、安定で、均一な複合体を形成したものについて、X線結晶構造解析、電子顕微鏡(EM)観察を行う。結晶構造決定に成功すれば、複合体構造の全容に加えて、各分子の構造変化、接触部位等が原子レベルの分解能で明確となる。それ故、クロマチンリモデリング因子の結合で、ヌクレオソームDNAにどのようなテンションがかかり、その結果、どんな構造変化が引き起こされているのか、その疑問を解明できる。例えば、リモデリング因子がDNA切断部位周辺のDNAのアレンジメントを引き起こし、内部のヒストン表面に接触している構造が明らかなれば、研究目的で述べた我々の仮説を完全に実証する事ができる。次に、EM観察はクロマチンリモデリング因子の結合による構造変化をオリゴヌクレオソームレベルで検出するのに効果的である。従って、ヌクレオソーム間の構造変化や相互作用変化なども考慮に入れて解析する。さらに、EM解析は超分子複合体のより詳細な立体構造モデルの構築を可能にする。例えば、EM単粒子解析を行って得られた電子密度マップに、各ドメインのX線構造原子モデルを当てはめることで、複合体の詳細な立体構造モデルを構築することが可能となる。これらの解析により、クロマチンリモデリング因子がどのようにしてDNA切断部位の挿入されたクロマチンを構造変換に導くのかを立体構造の観点から明確にしたい。
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Research Products
(2 results)