2014 Fiscal Year Annual Research Report
極長鎖脂肪酸の産生及び代謝機構と代謝異常による病態の解明
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26251010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木原 章雄 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50333620)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 極長鎖脂肪酸 / 脂質 / 脂肪酸 / 小胞体 / 皮膚 / バリア / スフィンゴ脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
極長鎖脂肪酸は炭素数20を超える脂肪酸の総称である。極長鎖脂肪酸の生体内量は少ないものの,長鎖脂肪酸(炭素数11-20)では代替することのできない重要な生理機能を有している。極長鎖脂肪酸は小胞体における脂肪酸伸長サイクルによって産生される。このサイクルでは,脂肪酸はアシルCoAの状態で,縮合,還元,脱水,還元の4ステップにより,1サイクルあたり炭素数を2ずつ伸長される。各反応は異なった酵素により触媒され,哺乳類ではELOVL1-7(縮合),KAR(還元),HACD1-4(脱水),TER(還元)がそれぞれの反応を担う。 本研究では脂肪酸伸長酵素群による極長鎖脂肪酸産生の分子機構と酵素間の相互調節機構を明らかにするために,精製したELOVL6とKARを用いて生化学的な解析を行った。その結果,ELOVL6はKARによって活性が増強されること,ELOVL6活性増強にはKAR活性に依存したものと依存しないものの2つの機構が存在することが明らかになった。 脂肪酸伸長サイクルの最終反応を触媒するTERには,極長鎖脂肪酸伸長以外にも,スフィンゴシン1-リン酸の代謝過程で働くという別の役割があることを明らかにした。極長鎖脂肪酸はスフィンゴ脂質の構成成分として用いられ,スフィンゴシン1-リン酸代謝はスフィンゴ脂質分解経路である。このようにTERはスフィンゴ脂質の合成と分解の両方に関わる重要な因子であることが明らかになった。 脂肪酸伸長酵素群は真核生物で保存されており,担子菌(キノコ)にも存在する。これまで,キノコからの胞子の射出の分子メカニズム及び射出に関わる酵素には不明な点が多かったが,我々はHACD1-4の担子菌ホモログであるPhs1が胞子の射出に関わることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究成果として,研究実績の概要に記載のとおりの成果を挙げ,3報の学術論文に発表している。また,それ以外にもHacd1ノックアウトマウスの解析を行い,ミオパチー発症の分子メカニズムを明らかにしつつある。さらに,皮膚バリアに重要なアシルセラミドの産生機構の解析に関して,シトクロームP450の1つであるCYP4F22がアシルセラミド産生に必要な極長鎖脂肪酸のオメガ末端の水酸化に関与していることを見出しており,学術論文発表に向けて準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
HACDの基質特異性の解析に関しては,Hacd1ノックアウトマウスの脂質組成の測定,CRISPRを用いた培養細胞レベルでの遺伝子ノックアウト,酵母を用いた系などを利用して行っていく。アシルセラミド産生に関わる因子については,脂肪酸オメガ水酸化酵素以外にもアシルトランスフェラーゼが未同定なので,我々が確立した細胞でのアシルセラミド産生系を利用して同定を目指す。Elovl1ノックアウトマウスを用いた解析では,表現型の探索を行う。
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