2015 Fiscal Year Annual Research Report
木材細胞壁模倣多糖類マトリックス中でのリグニンの形成とその構造決定因子の解明
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26252022
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浦木 康光 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90193961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50281796)
吉永 新 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60273489)
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
高部 圭司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70183449)
幸田 圭一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80322840)
重冨 顕吾 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20547202)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2018-03-31
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Keywords | リグニン / 細胞壁模倣多糖類マトリックス / 免疫蛍光標識 / 同位体顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究において、細胞壁模倣多糖類マトリックスへのモノリグノールを浸透は、マトリックス中のキシランが足場となり、キシランの拡散を助けているとの新規知見を得た。しかし、この結果は、モノリグノールが酵素的に重合して、その重合体の分布から推測した知見であり、直接、モノリグノールの拡散過程を観測した結果ではなかった。そこで、平成27年度では、重水素化コニフェリルアルコールを合成し、これをモノリグノールとしてマトリックスへの拡散・分布を同位体顕微鏡を用いて観測した。この結果、キシランがないとモノリグノールはマトリックス表面にしか存在しないが、キシランの存在によりマトリックス内部に拡散することが、確認できた。 また、当該年度は、beta-O-4結合物からなるリグニンモデル高分子の分子量測定を、昨年度購入した光散乱検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。その結果、平均重合度が約20という低分子量であっても、有意な散乱強度が観測され、光散乱によるリグニンモデル高分子の構造解析が可能との結果が得られた。しかし、想定していた分子サイズより、大きな回転半径を示したことより、種々の溶媒を用いて測定する必要があることが分かった。 最後に、グルコマンナンを含有する細胞壁模倣多糖類マトリックを調製する目的で、針葉樹の木粉より、グルコマンナンの抽出を試みた。文献で示されているジメチルスルホキシドを用いた抽出では、ほとんどグルコマンナンが得られなかった。しかし、アルカリ水溶液を用いなくても、単なる水でグルコマンナンが抽出できることが分かった。現在、この抽出物の化学組成、特に、アセチル基量について分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
beta-O-4結合のみから成るリグニンモデル高分子は、多量調製が可能となり、抗体の力価評価などに使用できるようになったが、従来の倍以上の重合度を持つモデル高分子の合成や分離に、少々手間取っている。しかし、上述したように、重合度が高くなくても、光散乱検出器で分子量等の測定が可能であることが分かり、次年度、予定通りの研究が継続できることが確認できた。 グルコマンナンの単離については、文献通りの方法では収率が悪いことが分かったが、それに代わる抽出方法を見出したことより、今年度の遅れは来年度で達成できる見込みがたった。 最後に、免疫標識した木材切片の観察は、2次元的にはほぼ終了しており、現在、3次元画像を取得するための測定条件の設定中であり、予定通り、来年度にはデータの取得のめどが立った。 その他の項目については、ほぼ計画通り、進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
主要なヘミセルロースの一つであるキシランの機能、即ち、モノリグノールの多糖類マトリックスへの拡散およびモノリグノールの重合にに及ぼす影響について明らかにしたが、針葉樹の代表的なヘミセルロースであるグルコマンナンの機能については未解明である。そこで、キシランを用いた細胞壁模倣多糖類マトリックスの解析と同じ手法で、グルコマンナンの機能を解明する。 また、光散乱法で構造解析が可能との示唆を得たリグニンモデル高分子の構造、特に、種々の溶媒中での分子の広がりや屈曲性について、静的および動的光散乱法を用いて、解析する。この測定において、より高精度な測定には、より高重合度のモデル高分子を合成する必要があるが、未だ達成されていない。そこで、重合条件(溶媒、触媒や反応温度など)を再精査して、重合度の向上に取り組む予定である。
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Research Products
(5 results)