2016 Fiscal Year Annual Research Report
A new approach to mangrove estuary conservation based on fish distribution and migration ecology
Project/Area Number |
26252027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 光彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50178810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 良朗 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (90280958)
河野 裕美 東海大学, 付置研究所, 教授 (30439682)
岡本 研 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20160715)
菊池 潔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20292790)
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70463908)
細谷 将 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60526466)
南條 楠土 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (70725126)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マングローブ水域 / 非回遊魚 / 通し回遊魚 / DNA分析 / 遺伝的な分化 / 琉球諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯のマングローブ水域では,しばしば汽水魚が種数や個体数で優占する。汽水魚には,汽水域(あるいは河川)と海の間を往き来する通し回遊魚と,海に回遊せず,生活史のほぼすべてをマングローブ水域内で完結させる非回遊魚の2種類が主に存在すると言われている。昨年度までに,耳石の微量元素組成分析および酸素同位体比分析によって,沖縄県西表島浦内川のマングローブ水域に優占するコモチサヨリ,アマミイシモチ,リボンスズメダイの3種が非回遊魚であることが示唆された。そこで,今年度は,これらの非回遊魚が西表島内や石垣島内の河川間,および琉球諸島の島間(西表島,石垣島,宮古島,沖縄島の間)で遺伝的にどの程度分化しているのかをDNA分析で調べることを目的とした。 非回遊魚の2種(コモチサヨリ,アマミイシモチ)と,通し回遊魚であることが既往研究によってわかっているオキフエダイ(海水性両側回遊魚)を西表島の2河川(浦内川とウダラ川),石垣島の2河川(吹通川と轟川),宮古島の1か所(川満),沖縄島の1河川(汀間川)において採集した。各採集地点における各魚種の採集個体数は18個体以上を目標とした。しかし,宮古島や西表島では,採集時,水質環境が例年とかなり異なっていたため,十分な個体数を採集することができなかった。このため,2017年度に追加採集を行い,DNA分析を実施した。その結果,コモチサヨリは石垣島の2河川間,および西表島,石垣島,宮古島の3島間で遺伝的な分化が認められた。また,アマミイシモチは島内の河川間では分化していなかったものの,4島間では分化が認められた。一方,オキフエダイでは島内の河川間および島間での分化は認められなかった。したがって,非回遊魚では島間のほか,島内の河川間でも遺伝的に分化している種の存在が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度まで,マングローブ水域に生息する優占魚類3種(アマミイシモチ,リボンスズメダイ,コモチサヨリ)について,耳石の微量元素組成分析と酸素同位体比分析を行い,それらのすべてが非回遊魚であることを明らかにすることができた。これは,本研究の大きな成果であると言える。この結果に基づき,今年度は,これらの非回遊魚が沖縄県西表島内や石垣島内の河川間,および琉球諸島の島間で遺伝的にどの程度分化しているのかをDNA分析で調べる予定であった。しかし,調査地での水質環境が例年とかなり異なり,魚類の生息密度が極端に減少していたため,DNA分析に必要となる十分な標本数を集めることができなかった。このため,今年度においてはDNA分析を実施せず,来年度に追加採集を行い,まとめてDNA分析を実施することにした。したがって,今年度の達成度は低いと評価せざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はDNA分析用の十分な標本数を集めることができなかったため,来年度は不足している標本数を速やかに採集し,DNA分析を実施する。採集後,各標本の核ゲノムDNAの塩基配列を決定し,分子系統樹,ハプロイドネットワーク図,pair-wise Fstなどを用いて,遺伝的構造が琉球諸島の島間および島内の河川間で異なるかどうかを明らかにする。 また,来年度は本課題の最終年度となるため,成果をまとめ,報告書や論文等を作成する。
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