2014 Fiscal Year Annual Research Report
肉用牛の生産性向上を目指した個体精密管理のための基盤技術の確立
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26252044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 直 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20183353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 政幸 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00144923)
福島 護之 兵庫県立農林水産技術総合センター, その他部局等, その他 (60463395)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肉牛 / マシンビジョン / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
肉用牛の両目の瞳孔画像を飲水中に自動的に撮影し,画像から血中ビタミンA濃度を計測するため瞳孔画像自動撮影装置の開発を行った。この装置はカメラ,白色リングLED,距離センサ,PLフィルタ,および粉塵除去ワイパ等から構成し,飲水中の牛の両目の瞳孔画像が得られるよう両目の位置に各1台取り付けた。牛が飲水中に安定的に撮影するため,距離センサにより顔を検出するとともに,流量計で水槽への水量を計測して,実際に飲水を開始してから撮影を開始した。LEDの光量は,距離センサで計測した牛顔面までの距離により制御し,牛顔面で1200ルクス程度になるようにした。撮影装置が飲水頻度に与える影響を調べた結果,撮影装置が飲水頻度に影響を与えないことが示された。LED は10 秒間点灯し,画像入力,PC への保存を行うようプログラムしたが,牛を保定しないで撮影したため,短時間で飲水場から出ることもあり,有効な画像を選択的に用いる必要があると考えられた。画像から瞳孔色やLED光照射による瞳孔収縮を計測するためには,暗いところで瞳孔が開いたときにLEDを点灯して画像入力する必要があるので,夜間に撮影する必要があった。また,睫を切らずに瞳孔画像を撮影するために,撮影装置を25度程度上向きに設置する必要があった。個体識別は,首輪に巻いた色布を上部からカメラで撮影し,色による識別を行う方式とした。実験は兵庫県立農林水産技術総合センターおよび京都大学附属牧場の2か所で行った。 血液検査によって血中ビタミンA,C濃度等を,ドアフィーダを用いて濃厚飼料と粗飼料の給餌量,残飼量等を記録するとともに,体重,体尺,環境データとして畜舎の温度,湿度,照度等を計測して記録している。これらのデータはデータベースに蓄積し,肉用牛の飼料摂取量ならびに健康・品質・収量のデータを活用するため統計解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
瞳孔画像自動撮影装置は,当初6牛房分(兵庫県5牛房,附属牧場1牛房)計画していたが,実験計画を再検討した結果,9牛房分が必要となり,必要数だけ試作・設置を行った。画像データから牛の血中ビタミンA濃度を推定する検量線モデルを作成する計画であるが,そのためには牛の血中ビタミンA濃度のコントロールを行う期間を含む20か月程度の計測期間を要すると考えられ,現在は画像データや血液検査による血中ビタミンA濃度データを蓄積している段階である。データベースについては,データの入力および修正機能の設定を終え,今後グラフ等の表示,データのダウンロード機能等を実装して,得られたデータを活用するために用いる予定である。今年度の実験では,牛が飲水場に斜め方向を向いて入ってくることがあった。その結果,牛の顔が斜めになり,両眼を撮影するために顔の両側に設置した撮影装置の視野内に瞳孔が入らないこともあった。より確実に両眼の瞳孔を撮影するよう,今後,飲水時の牛の方向を規制する枠を設置することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,血中ビタミンA,C濃度,濃厚飼料と粗飼料の給餌量・残飼量等の給餌データ,飲水量,畜舎の温度,湿度,照度,風速等の環境データ,体重,体尺等をデータベースに蓄積していく。試験中の牛は,今後肥育前期から中期に移行し,肥育前期に比べて血中ビタミンA濃度を急激に下げる時期である。初年度は瞳孔画像は,画像ファイルとしてハードディスクに蓄積してきたが,今後,蓄積された画像から血中ビタミンA濃度の推定に必要な特徴量の抽出を行い,瞳孔画像から血中ビタミンA濃度予測可能な検量線モデルを作成する。本研究で求める検量線は,各牛の瞳孔色および光反射強度から血中ビタミンA濃度を推定するもので,それらのデータに瞳孔収縮速度および収縮割合のデータを加えて多変量解析することも試みる。ビタミンC濃度については,データベースを用い,肉質に寄与する程度を考察する。さらにビタミンCを考慮した濃厚飼料の設計を行う。初年度の実験では,牛の飲水時の体の方向によって,瞳孔が撮影装置の視野から外れることがあった。飲水時の方向を規制するための枠を設置して,有効な画像の割合を高める予定である。 平成28年には,出荷後の枝肉形質情報として,枝肉重量,ロース芯面積,バラの厚さ,皮下脂肪の厚さ,歩留まり基準値および脂肪交雑基準値(BMS)の6項目について結果をデータベースに入力する。これらのデータを統計解析することにより,どの因子が枝肉形質情報のどのデータに寄与しているか等,肉用牛の「飼料摂取量」と「健康・品質・収量」との関係を明らかにするための解析手順を作成する。
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Research Products
(4 results)