2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンのグリコシル化による栄養膜幹細胞のエピジェネティクス
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26252052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩田 邦郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80196352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣澤 瑞子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60533982)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2017-03-31
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Keywords | グリコシル化 / 栄養膜幹細胞 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / ゲノムワイド |
Outline of Annual Research Achievements |
母親の妊娠初期の栄養状態は胎児の発育に影響を与える大きな要因である。栄養膜外胚葉に由来する栄養膜幹細胞(TS細胞)は胎盤を構成するすべての栄養膜細胞に分化する能力を有し、胎盤発生および機能を理解する上で強力なツールである。 細胞内でグルコースの2-5%はヘキソサミン合成経路で代謝されグリコシル化修飾の供与体であるUDP-GlcNAcとなる。グリコシル化修飾はO-GlcNAc転移酵素OGTによって標的タンパク質に付加され、脱O-GlcNAc酵素OGAによって除去される。本年度では、OGT特異抗体を用い、TS細胞および分化TS細胞(dTS細胞)におけるOGTの発現およびゲノム標的領域をChIP-seqによって明らかにした。TS細胞に比べdTS細胞では、OGTは細胞全体における発現量は低下していたが、細胞質と核に分けOGTの量を調べたところ、クロマチンが含まれる難溶性核画分ではむしろ分化に伴いOGTの量は増加していた。ChIP-seq法によってTS細胞とdTS細胞のOGT標的領域を同定した。TS細胞では標的領域が1000領域程度であったの対し、dTS細胞では10,000領域以上であった。興味深いことに、dTS細胞においてOGT標的領域の一つにOGAをコードする遺伝子Mgea5が含まれており、OGTはMgea5のゲノム制御に働くことが考えられた。そこで、OGT発現ベクターをTS細胞またはdTS細胞に導入しMgea5の発現解析を行った。その結果、TS細胞ではMgea5の発現に変化はなかったが、dTS細胞ではMgea5の発現増加が観察された。これまで、OGT・OGAの発現はグルコースに反応することが知られていたが、その発現制御機構は不明あった。本研究によってその一端を初めて明らかにすることができ、dTS細胞においてはOGTがMgea5遺伝子領域に結合することで細胞内O-GlcNAc修飾の恒常性を保っていることが示唆された。また、今年度は我々が発見した新規のヒストングリコシル化修飾を特異的に認識する抗体を用いChIP-seqを行い、TSおよびdTS細胞におけるデータも取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的通り研究を遂行することができた。本年度、主に行ったTS細胞におけるOGT標的領域の解析は次年度行う新規ヒストン修飾グリコシル化のゲノムワイド解析の為の基盤データとなる。また現在、本年度行ったOGTに関する研究については学術論文を作成するに至っている。これまでに我々が作製した新規ヒストン修飾グリコシル化の特異抗体を用いてTS細胞および分化TS細胞におけるChIP-seqのデータも取得することができており、次年度に向けての準備も行うことができた。 TS細胞の多分化能性に対するヒストングリコシル化の役割を明らかにするために、グルコース濃度を変えて培養したTS細胞およびそれらに由来する分化TS細胞の発現・クロマチン解析用にサンプルも得ることができた。 以上、本年度の達成状況および次年度に向けての準備状況を含め「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) TS細胞における新規ヒストン修飾グリコシル化のゲノムワイド解析 本年度に、これまでに作成した新規ヒストン修飾グリコシル化を認識する抗体を用いChIP-seqのデータを得ている。これを利用し、TS細胞および分化TS細胞におけるグリコシル化標的ゲノム領域およびその特徴をバイオインフォマティクス解析によって明らかにする。[i] 遺伝子領域のどこに存在するか(転写開始点、エクソン・イントロン領域など)、[ii] 既知のヒストン修飾(メチル化、アセチル化)やDNA結合タンパク質標的領域との関係、[iii] 細胞特異性(分化TS細胞やES細胞との比較)、[iv] 前年度に解析したO-GlcNAc転移酵素OGTのゲノム標的との比較、以上の4つに特に焦点を当て解析をしていく (2) TS細胞の多分化能性に対するグリコシル化ヒストンの役割 TS細胞を含め幹細胞用培地には25 mMグルコースが含まれている。これは生体血中濃度のおよそ5倍になる。TS細胞の維持になぜ、高濃度のグルコースが必要であるのか、大きな疑問である。前年度までに、1, 5, 10または25 mM グルコース濃度の培地でTS細胞の未分化状態を維持した、またはそれらに由来する分化TS細胞を遺伝子・タンパク質・ChIP用に回収した。果たして、低濃度グルコースで培養したTS細胞の分化能は保たれるであろうか? 本年度では、このサンプルを用いて、ヒストングリコシル化レベルを免疫染色法・ウエスタンブロッティング法によって解析し、TS細胞の分化能維持・喪失とヒストン修飾の関係を明らかにしていく。加えて、未分化時のグルコース濃度が分化能に影響するかをマーカー遺伝子および免疫染色法を組み合わせた形態評価を行う。グルコース濃度によって変化するグリコシル化標的領域を知るため、ChIP-seqのデータも取得する。
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[Journal Article] Diabetes Induces Aberrant DNA Methylation in the Proximal Tubules of the Kidney.2015
Author(s)
Marumo T, Yagi S, Kawarazaki W, Nishimoto M, Ayuzawa N, Watanabe A, Ueda K, Hirahashi J, Hishikawa K, Sakurai H, Shiota K, Fujita T.
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Journal Title
J Am Soc Nephrol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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