2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26252057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日下部 宜宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30253595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 昌直 北海道大学, 農学研究院, 助教 (20517693)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分散型動原体 / 染色体 / クロマチン / 遺伝子ネットワーク / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、既知のカイコ動原体タンパク質複合体を発現する培養細胞から免疫沈降法を用いて動原体タンパク質を単離し、質量解析により動原体タンパク質、および動原体形成に関連すると思われるタンパク質を複数同定した。それらのうち一つのタンパク質について詳細な解析を行い、カイコ動原体タンパク質としてKnl1タンパク質を同定した。 CRISPR(不活性型Cas9)を用いたde novo動原体形成については、効率よく不活性型Cas9を染色体上に局在させるため、標的配列の設計方法の改良、guide RNAの改変を行った。また、詳細なカイコゲノム情報をもとに、カイコ染色体に低・中・高頻度で存在するトランスポゾン配列を選定し、さらにそれら配列の近傍における転写のアクティブな遺伝子の有無によりトランスポゾン配列をクラス分けした。 変異細胞のRNA-seqデータをもとに構築した遺伝子ネットワークがカイコ特異的な機能未知遺伝子の機能推定に有効であるかを検証するため、ネットワークから推定された染色体制御因子と関連のある44個の遺伝子について機能阻害を行った。機能阻害を行った44個の遺伝子のうち、9つの遺伝子において細胞周期、染色体動態、細胞の形態に異常がみられた。 染色体複製の制御については、人工染色体の骨格となるプラスミドの構築、およびそのプラスミドを培養細胞内で効率よく複製開始させるのに必要な遺伝子の探索を行い、Cdt1とCdc6を同定した。 ヒストン関連因子の解析では、機能阻害実験において細胞周期に与える影響が大きかったHDAC、HATについて機能阻害細胞のトランスクリプトーム解析を行った。さらに、HDAC(5種)とHAT遺伝子(3種)をそれぞれ組み合わせた二重機能阻害実験を行い、HDAC、HAT遺伝子の遺伝的相互作用を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
免疫沈降法と質量解析を組み合わせたインタラクトームからKnl1タンパク質を動原体タンパク質として同定したが、その他にも2つの新規タンパク質候補を見出している。その内の1つは、動原体タンパク質のリン酸化制御、もう一つは、他生物とは全く異なる動原体ヌクレオソームのリモデルニングに関与する因子では内科と推定している。 カイコゲノムに散在するトランスポゾン配列にde novo動原体形成を誘導する計画についても、多様な問題点を克服して、効率よく不活性型Cas9を染色体上に局在させる技術の確立に成功した。本法は、de novo動原体形成のみならず、クロマチンへの標的タンパク質のテザリング全般に有益であると考えられる。 遺伝子ネットワークモデルを用いたカイコ特異的な機能未知遺伝子の機能推定ついては、推定44個の遺伝子のうち、上位20候補から7つの「当たり遺伝子」を予測することができた。この予測精度は、期待以上であり、より精緻な遺伝子ネットワークモデルに改良すれば、さらに予測精度が上昇すると考えられる。 人工染色体についても、骨格となる染色体プラスミドの構築を終了し、Cdt1とCdc6がそのプラスミドを培養細胞内で複製開始させることを見出しており、同系を用いて、より効率よく複製誘導が可能な新規タンパク質の探索が可能となった。 ヒストン関連因子機能阻害細胞のトランスクリプトーム解析では、多数のクロマチン修飾因子、転写因子のデータ取得を終了しており、解析を進めている。このデータは、遺伝子ネットワークモデルの精緻化にも有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、質量解析により単離した遺伝子については、機能阻害、および局在解析を行い動原体の形成に関わっているかを検証する。ベイトとなる既知動原体タンパク質の数を増やし、昨年度と同様に新規動原体タンパク質の同定を試みる。これまでカイコ動原体タンパク質として、13種のタンパク質を同定しているが、Cenp-Iを機能阻害した時もっとも重篤な染色体動態異常がみられる。Cenp-Iの機能阻害を行った際の他の動原体タンパク質の局在、Cenp-I変異体の作製、さらにインターラクトーム分析により、Cenp-Iの詳細な機能解析を行う。 昨年度改良したCRISPR(不活性型Cas9)システムを用い、選定したトランスポゾン配列に動原体タンパク質を異所局在させ、de novoセントロメア形成によるその周辺に与える影響を解析する。 ネットワークから推定された染色体制御因子と関連のある遺伝子のうち、機能阻害によって細胞周期、染色体動態、細胞の形態に異常がみられた遺伝子については、機能阻害後の詳細な表現型解析、およびタンパク質の局在解析を行う。また、そのうちいくつかは免疫沈降、質量分析を用いたインターラクトーム解析を行う。 染色体複製の制御については、人工染色体の骨格となるプラスミドの改良、および昨年度単離した遺伝子について詳細な解析を行う。複製因子に加えて、動原体タンパク質をプラスミドにテザリングさせることで、効率よくプラスミドが娘細胞に分配されるかを検証する。 ヒストン関連因子の解析では、昨年度行ったHDAC、HAT機能阻害細胞のトランスクリプトーム解析の結果をもとに、これら因子がどの遺伝子を制御しているのかを調べる。HDAC、HAT遺伝子の二重機能阻害実験とトランスクリプトーム解析をもとに、HDAC、HAT遺伝子の遺伝的相互作用を解析する。 昨年度行ったパイオニア因子と基本転写因子機能阻害細胞のトランスクリプトーム解析結果を用い、遺伝子ネットワークモデルの更新・修正を行う。
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[Presentation] Characterization of Histone H1 Variants in Bombyx mori2017
Author(s)
Takumi Yano, Yoshiki Morifuji, Masato Hino, Tsuneyuki Tatsuke, Hiroaki Mon, Jae Man Lee, Takahiro Kusakabe
Organizer
The 5th Asia-Pacific Congress of Sericulture and Insect Biotechnology
Place of Presentation
Bangkok, Thailand
Year and Date
2017-02-28 – 2017-03-02
Int'l Joint Research
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