2015 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤分子標的シアン耐性酸化酵素のケミカルバイオロジー
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26253025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北 潔 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90134444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲岡 健ダニエル 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10623803)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シアン耐性酸化酵素 / トリパノソーマ / アスコフラノン / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は寄生虫のエネルギー代謝に焦点を絞り、寄生適応の分子機構の解明を目的として研究を進めて来た。その結果、寄生虫では多様な酵素系が機能し、生活環における環境の変化に巧妙に適応している事が判って来た。中でもエネルギー代謝系酵素群が極めて特殊な性質を持ち、宿主中での寄生適応に重要な役割を果している事が明らかになりつつある。そこでこれらの酵素のうち、宿主の血流中に生息するアフリカトリパノソーマの増殖に必要不可欠であり、しかも解析が非常に遅れているシアン耐性酸化酵素(Trypanosome alternative oxidase:TAO)と特異的阻害剤アスコフラノンに着目し、化学の領域から生命現象を捉え、その応用を視野に入れたケミカルバイオロジーの観点により酵素の特徴、阻害剤との相互作用、生理的意義を明らかにする事を目的に本研究を進めている。平成27年度の研究実績は以下の通りである。 1) T. brucei TAOの分子構築と生理機能 前年度に引き続き、これまでのアスコフラノン誘導体とTAOの共結晶解析及び共同研究を行なって来た連携研究者の鳥取大学の斎本博之教授の合成した200種の誘導体を用いた構造活性相関を原虫の培養系を用いたin vitroおよびマウスを用いたin vivoの系で解析した。その結果、フラノン環部分を置換することによりin vitroおよびin vivoの両者で効果を示す完全化学合成誘導体4種を見出す事ができた。 2)アスコフラノン生合成経路の解明 前年度までの研究で、これまで用いてきた糸状菌はA. sclerotigenumである事が明らかになった。そこでこの菌株の培養系でアスコフラノン合成量の大きく異なる条件で発現する遺伝子群の詳細な解析から、アスコフラノンの生合成に関わる遺伝子群がクラスターを構成している事を突き止めた。さらにその全ての遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シアン耐性酸化酵素は極めて不安定な酵素で、しかも膜タンパク質であり、植物ミトコンドリアの酵素も含め、どの研究グループも結晶化に成功していなかった。我々はその結晶化に初めて成功した事により本研究を開始する事が可能となった。その後、多くの誘導体との共結晶から阻害活性に必須なアスコフラノンの部位を特定する事が可能となり、トリパノソーマの培養系のみならず、マウスを用いたin vivoの系で完治させる完全合成誘導体を4種類も見出した事は予想以上の成果と考えられる。しかもマウスの系に置いて、併用効果を示すグリセロールなしでアスコフラノン以上の効果を示す誘導体を見出した事は、今後の臨床応用を考えた時、特筆に値する。 また、アスコフラノン生合成に関わる全ての遺伝子を明らかにした点は、本薬剤の実用化のみならず、フラノン環の生成過程と言うこれまで未知であった環構造形成過程の解明に大きく近づいた事から高く評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い以下の研究を推進する。 1) T. brucei TAOの分子構築と生理機能:これまでの研究で性質を明らかにしてきた分子標的TAOの生理的意義を明確にする目的で、T. bruceiの代謝系に対する特異的阻害剤添加時および遺伝子発現抑制時の代謝の変動をキャピラリー電気泳動-MS(CE-MS)を用いた代謝物一斉分析(メタボローム)法により解析し、代謝経路の変動を精密に把握してトリパノソーマの増殖に必須な薬剤標的としての「糖代謝の流れ」の全体像を明らかにする。 2) アスコフラノンの生合成経路解明と阻害剤としての最適化:これまでに得られた遺伝情報と同位体ラベルによる解析からアスコフラノンの全生合成経路を明らかにし、酵母にこの遺伝子群を導入して必要なアスコフラノン合成中間体を得るための発現系を構築する。この中間体を用いた有機合成から得た充分量の有効な誘導体によって、安全性も含めたマウスでの最適治療レジュメを確立する。 最終年度である平成28年度の研究遂行に問題点はないと考えられるが、この成果を基礎研究および応用研究の両面でさらに大きく展開するための研究費の継続的な獲得が現時点で最も重要な鍵となる点である。
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[Journal Article] Parasites resistant to the anti-malarial atovaquone fail to transmit by mosquitoes.2016
Author(s)
Goodman, C. D., Siregar, J., Mollard, V., Vega-Rodriguez, J., Syafruddin, D., Matsuoka, H., Matsuzaki, M., Toyama, T., Sturm, A., Cozijnsen, A., Jacobs-Loreno, M., Kita, K., Marzuki, S. and McFadden, G. I.
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Journal Title
Science
Volume: 352
Pages: 349-353
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Pharmacophore Modeling for Anti-Chagas Drug Design Using the Fragment Molecular Orbital Method.2015
Author(s)
Yoshino, R., Yasuo, N., Inaoka , D.K., Hagiwara, Y., Ohno, K., Orita, M., Inoue, M., Shiba, T., Harada, S., Honma, T., Balogun, E.O., da Rocha, J.R., Montanari, C.A., Kita, K. & Sekijima, M.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 10
Pages: e0125829
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] In vivo curative and protective potential of orally administrated 5-aminolevulinic acid plus ferrous ion against malaria.2015
Author(s)
Suzuki, S., Hikosaka, K., Balogun, E.O., Komatsuya, K., Niikura, N., Kobayashi, K., Takahashi, K., Tanaka, T., Nakajima, M. & Kita, K.
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Journal Title
Antimicrob. Agents Chemother.
Volume: 59
Pages: 6960-6967
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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