2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26253029
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
樗木 俊聡 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50233200)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 樹状細胞(DC) / DC前駆細胞(CDP) / 従来型DC(cDC) / 形質細胞様DC(pDC) / CDPニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
樹状細胞(DC)は、抗原提示能に優れた従来型DC(cDC)と、核酸を認識して大量のI型インターフェロンを産生する形質細胞様DC(pDC)に大別される。平成26年度は、cDCあるいはpDCのみを生み出すDC前駆細胞(CDP)の同定、CDPニッチの実態解明を目的とした。 当初の計画通り転写因子IRF8のレポーターマウスIRF8-Venusを作製した。同マウス骨髄中に存在するcDCの前駆細胞(pre-cDC)をIRF8の発現の有無を指標に2分画して、各々のDC分化能を検討したところ、IRF8+pre-cDCからはCD8+cDCのみが出現した。また、作製済みE2-2-KuOrangeと交配してIRF8/E2-2ダブルレポータマウスを作製した。現在、同マウス骨髄中のCDPを、IRF8/E2-2の発現を指標に4分画し、各々の分画のex vivo, in vivoにおけるDC分化能を検討している。 次に、E2-2-KuOrangeマウス骨髄からE2-2を高発現するCDP分画を単離、レシーピエントマウスに移植してin vivoにおける分化能を検討した。既存のex vivoの結果(未発表)と同様に、in vivo二次リンパ組織においてもE2-2を高発現するCDP分画は大部分がpDCに分化した。対照的に、腸粘膜関連リンパ組織では約4割がcDCに分化した。この結果は、E2-2を高発現するCDPは本来pDCへ分化する細胞であるが、腸の微小環境下では当該分画のpDCへの分化の方向性が変化してcDCに分化したことを示している。現在、詳細なメカニズムを検討している。 さらにCDPニッチの実態解明を試みた。E2-2レポーターマウスを用いてCDPの一部を可視化、血管内皮細胞を抗VE-カドヘリン抗体、CAR細胞を抗PDGFRbeta抗体で染色したところ、CDPがCAR細胞と共局在することを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、主にcDCあるいはpDCのみを生み出すCDPを同定すること、骨髄内のCDP局在の場(CDPニッチ)の実態を解明することを目的とした。 既に研究概要の実績で述べたように、当該目的を達成するために必要なマウスの作製・交配・実験実施は順調に遂行している。現在、作製したレポーターマウスの骨髄から、転写因子の発現に基づいて細分化したCDPを用いてcDC/pDC分化能を検討しており、cDCあるいはpDCのみを生み出すCDPの同定に関する結果が近々得られる予定である。また、E2-2を高発現するCDPを用いてin vivoでのcDC/pDC分化能を検討する過程で、通常の二次リンパ組織と腸粘膜関連リンパ組織では、E2-2を高発現するCDPのcDC/pDC分化能・バランスが明らかに異なることが示唆された。この結果は、平成27年度に予定していた”ストレス環境下でのCDPの可塑性とその生物学的意義”を解明する研究計画の一部を含んでおり、今後、どのような腸の微笑環境が如何なる機序によって分化の方向性を変換させるのかを、腸内常在菌や腸サイトカイン環境がDC分化に重要な転写因子群の発現に及ぼす影響を含めて検討する予定である。 CDPニッチの実態解明も順調に推移、CDPがCAR細胞と共局在していることを示唆する結果を得た。しかしながら、CDPの可視化を目的として用いたE2-2レポーターマウスでは約半数のCDPしか可視化できないため、IRF8レポーターマウス等で残りのCDPの可視化の可能性を検討する必要がある。 以上より、平成26年度の計画は概ね順調に進んではいるものの最終結論に至っていないこと、一方、研究遂行の過程で、平成27年度に予定していた検討事項に対する結果の一部が既に得られたこと等を総合的に判断して、”おおむね順調に進展している”と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
cDCあるいはpDCのみを生み出すCDPの同定に関しては、転写因子の発現に基づき細分化(4分画)したCDPの分化能をex vivoおよびin vivoで明らかにする。 次に、当初の平成27年度研究実施計画に従って、ストレス環境下でのCDPの可塑性とその生物学的意義を明らかにする。平成26年度計画の遂行途上で見出した、E2-2を高発現するCDPの分化の方向性を変換させ得る腸の微小環境の詳細を、特にサイトカイン環境に焦点を当て検討する。その際、二次リンパ組織よりも腸関連リンパ組織で高発現するサイトカインを選択して、ex vivoにおいてCDPからDCの分化誘導系に添加してpDCからcDCへの分化転換能を示す候補サイトカインを同定する。その結果に基づき、E2-2を高発現するCDPを当該サイトカインKOマウスに移入あるいは当該サイトカイン受容体欠損マウスからE2-2を高発現するCDPをレシーピエントマウスに移植して、in vivoにおける分化能を検討する。単一ではなく複数のサイトカインがCDPの分化変換に関与する可能性も予測されるため、その場合には共通のサイトカイン受容体欠損マウスや中和抗体の利用価値・可能性を検討する。これらの解析を通じて、腸の微小環境に存在する当該サイトカインを同定する。さらに同サイトカイン環境の構築における腸内常在菌あるいはその代謝産物の関与の可能性を検討する。 CDPニッチの実態解明に関しては、約半数のCDPしか可視化できないため、IRF8レポーターマウスを含む他のレポーターマウスでの検討を試みる。今年度のCAR細胞がCDPと共局在している結果から、詳細な相互作用や生物学的意義の解析にはex vivoにおける共培養系の構築が重要と考えられるため、マトリゲル培養法などを試行する予定である。
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Research Products
(5 results)