2015 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染の重症化を調節する核内ネットワークの解明
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26253083
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
今井 由美子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50231163)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 染色体 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、H5N1鳥インフルエンザ、H7N9鳥インフルエンザ、新種のコロナウイルスによる中東呼吸器症候群 (MERS)などの重症型の新興呼吸器ウイルス感染症が発生している。これらの感染症では、重症化すると人工呼吸をはじめとした集中治療が必要となるが、今のところ救命につながる有効な治療薬がない。ウイルスが感染した宿主細胞では「宿主特異的ウイルス複製シグナル」と「宿主応答シグナル」が、分子レベルで競合、統合されて病原性の発現に帰結する。しかしながら、今までのところ重症化を調節するウイルスと宿主システムの相互作用のネットワーはほとんど解明されていない。本研究課題では、ウイルス感染の重症化機構をウイルス・宿主の核内ネットワークに着目して解析を行っている。当該年度は、インフルエンザウイルス感染に伴う宿主のエピゲノム応答機構の解明に重点をおいて解析を行った。具体的にはエピゲノム関連遺伝子siRNAライブラリーを用いたスクリーニングから得られた分子に焦点を当てて、そのノックアウトマウスならびにノックスト細胞を用いて解析を進めた。その結果、宿主核内のヘテロクロマチンを中心としたネットワークがダイナミックに変化し、これがインフルエンザ感染症の病態の形成に関わっていることを示唆する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、ウイルス感染の重症化機構をウイルス・宿主の核内ネットワークに着目して解析を行っている。当該年度は、インフルエンザウイルス感染に伴う宿主のエピゲノム応答機構の解析、核内ネットワーク情報に基づいた創薬の可能性の検討を計画していた。宿主のエピゲノム応答機構の解析に関しては、ヘテロクロマチンを中心としたネットワークの重要性を示唆する知見を得た。また、同ネットワーク上のメチル化酵素の活性を調節する化合物を使って、インフルエンザの病態の改善効果に関する興味深い知見を得た。これらのことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を総合して、今後は患者における基盤情報の獲得に力を入れたい。しかしながら、重症インフルエンザ患者の症例はそれほど多くない。そこで、当初の計画を若干変更し、ヒトの気道由来細胞サンプルに加え、インフルエンザウイルスに感染したカニクイザルの肺組織サンプルを用いた解析に重点をおく。これに関してはすでに予備的解析を始めている。
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Research Products
(15 results)