2015 Fiscal Year Annual Research Report
乳文化の視座からの牧畜論考―全地球的地域間比較による新しい牧畜論の創生
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26257014
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
平田 昌弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (30396337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池谷 和信 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10211723)
月原 敏博 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (10254377)
辻 貴志 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (30507108)
増野 高司 総合研究大学院大学, その他の研究科, 研究員 (40569159)
兒玉 香菜子 (児玉香菜子) 千葉大学, 文学部, 准教授 (20465933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳文化 / 牧畜 / 地域間比較 / 牧畜類型分類モデル / 牧畜定義 / 生業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、旧大陸各地域と新大陸の牧畜を対象に、1)乳利用の視座から牧畜の構造を全地球的に地域間比較して、その特徴を分析し、2)旧・新大陸の牧畜の特徴と乳文化の視座を鑑みた新しい牧畜モデルを提起することにある。科研第二年度目の平成2015年度は、公開シンポジウム「家畜化と乳利用 その地域的特質をふまえて」を開催すると共に、科研メンバーがこれまでに培ってきたフィールドでの調査研究に専念した。公開シンポジウムでは、搾乳の起原論の第一人者である谷泰氏を招聘し、谷氏の基調講演を基に、科研メンバーによる乳文化についての発表をおこなった。課題として挙った大きな点は、動物種、生態環境、時代、経済的背景や市場もそれぞれに異なる西アジア牧畜、極北牧畜、南米牧畜、東南アジア家畜飼育の事例を単に挙げても十分には議論できなかたことである。これらの項目の相違性を認識しつつ考察し直し、改めて議論することが次への課題であり、成果であった。フィールドでの調査研究においては、平田はタジキスタン(パミール高原)、ブルガリア(バルカン半島)でヒツジ・ヤギ・ウシ牧畜を、平田と鳥塚はペルー(南米大陸)でリャマ・アルパカ牧畜を、児玉はモンゴル(北アジア)でヒツジ・ヤギ・ウシ牧畜を、大石、吉田、中田は極北でトナカイ牧畜について、更に、辻は東南アジアのフィリピンで漁撈民の生業を、阿良田と増田は東南アジアのタイでの農耕民の生業を、それぞれに調査研究した。特に、アンデス山脈でのケチュア系リャマ・アルパカ牧畜の調査においては、牧畜民の栄養摂取と家畜管理について詳細なデータを収集することができ、乳を必要としない生業へと発達していったことについて説明できる仮説構築を進めることができ、旧・新大陸における牧畜と乳文化の論考を大きく進めることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研第2年目に、公開シンポジウム「家畜化と乳利用 その地域的特質をふまえて」を開催し、科研メンバーによる成果を発表し合い、真摯に意見交換することができた。この公開シンポジウムにより、これまでの研究の進捗状況を確認し、今後の研究の方向性を確認することができた。フィールドワークでは、科研メンバーそれぞれが自らの調査地で、「牧畜」「乳文化」「生業」「食文化」について調査を進めることができた。乳利用の視座から牧畜の構造を全地球的に地域間比較し、旧・新大陸の牧畜の特徴と乳文化の視座を鑑みた新しい牧畜モデルを構築するための準備が着々と進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
公開シンポジウム「家畜化と乳利用 その地域的特質をふまえて」での成果をまとめ、科研研究を推進させていくために、報告書を出版することが重要である。次年度は、公開シンポジウムの報告書をまとめあげることが先ず重要な学術活動となる。フィールドでの調査研究においては、自らの調査地での研究を推進すると共に、科研メンバー間の調査地を互いに調査し合うことが課題となる。つまり、乾燥地研究の平田が極北および東南アジアで、南米研究者の鳥塚と佃が旧大陸乾燥地帯で、極北研究者の高倉、大石、中田が旧大陸乾燥地帯で調査を実施していくことにしている。そして、旧・新大陸の牧畜の特徴と乳文化の視座を鑑みた新しい牧畜モデルの構築を推進していくために、数回の研究会を開催し、具体的に検討作業に取りかかることも次年度の重要な課題となる。
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Research Products
(16 results)