2014 Fiscal Year Annual Research Report
排砂バイパスによる土砂輸送およびダム下流生態系変化の解明
Project/Area Number |
26257304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (40311732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
竹門 康弘 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50222104)
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80634435)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 排砂バイパストンネル / スイス / 流砂観測技術 / ハイドロフォン / 摩耗対策 / 河川環境 / 底生動物群集 / 遺伝的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本とスイスの排砂バイパストンネル(日本:4、スイス:6、建設中もあり)の計画・水理設計・管理の基本情報として、トンネルの形状・設計流速・通過礫の粒度・岩質・年運用日数、通過土砂量などのデータを収集整理した。 2.(1)既存の排砂バイパストンネルである関西電力㈱の旭ダムの摩耗実績に関するデータを収集し、実績の流砂量を用いて、日本で広く用いられている摩耗予測式(石橋式)とスイス連邦工科大学で提案された摩耗予測式の両者による摩耗予測精度の比較検討を行った。 2.(2)流砂量の観測技術において、従来のパイプ型ハイドロフォンに対して、高流速・大粒径の衝撃に耐えうるプレート型ハイドロフォンを開発した。スイス連邦工科大学の水理実験施設における実験により、計測可能な流砂の粒径範囲や、流砂量の推定に最適な信号(ゲイン)を特定した。ハイドロフォンによる通過礫の検知率が、流砂の飽和度(流砂量の関数)と衝突率(流量や流速の関数)で表されることを明らかにした。 2.(3)スイス連邦工科大学におけるトンネル内の流速分布や磨耗発生の空間分布についての実験をもとに、磨耗発生機構についての検討を行った。 3.日本とスイスのダム上下流における河床環境・底生動物調査により、排砂バイパスの運用前や運用直後のダムの下流では、河床の粗礫化が生じており、安定河床や止水環境を好む動物群集が生じているが、バイパス運用年数の長いダム下流では、こうした状況は解消されダム上流に近い環境が生じていることを明らかにした。また、ダムのない河川、ダムのある河川(バイパスある河川とない河川)の計16河川地点で水生昆虫を採集し、H27年度に実施する次世代DNAシーケンシング解析による地域間交流の遺伝的評価に必要なサンプルを揃えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スイスの排砂バイパスに関する現地調査を8月に実施し、スイスのカウンターパート機関(スイス連邦工科大学水理研究所(ETH-VAW)やスイス水環境研究所(EAWAG))との連携構築が実施できた。 また、スイスの排砂バイパストンネルの運用実績や摩耗データを入手し、平成26年度は、これらデータに、日本の同種のデータを加えて分析を開始しており、有益な知見を導きつつある。 流砂量の観測技術については、従来のパイプ型ハイドロフォンに対して、高流速・大粒径の衝撃に耐えうるプレート型ハイドロフォン(プレートマイクロフォン)を開発し、スイス連邦工科大学の水理実験施設において共同実験を実施し、計測可能な流砂の粒径範囲や、流砂量の推定に最適な信号(ゲイン)を特定するとともに、プレートマイクロフォンによる通過礫の検知率が、流砂の飽和度(流砂量の関数)と衝突率(流量や流速の関数)で表されることを明らかにした。 排砂バイパス上下流の河川環境調査では、河床環境・底生動物調査により、排砂バイパスの運用前や運用直後のダムの下流では、河床の粗礫化が生じており、安定河床や止水環境を好む動物群集が生じているが、バイパス運用年数の長いダム下流では、こうした状況は解消されダム上流に近い環境が生じていることを明らかにした。 これら成果は、平成27年4月に、スイス・チューリヒで共同開催する排砂バイパスに関するワークショップで報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,1)トンネル内部の高速流の流下特性と土砂流下に伴う摩耗損傷実態と対策手法の検討,2)トンネル下流への土砂供給に伴う生態的応答の検討,について研究を行う. 1)では,1-1)として平成26年度に収集した実際の排砂バイパス施設の摩耗損傷の実績調査データを用いて,トンネル流砂量と摩耗損傷発生の関係を明らかにするとともに,日本およびスイスで提案されている摩耗損傷予測式の予測精度の検証を行う.次に,1-2)として,平成26年度にスイス連邦工科大学との共同研究で実施したプレートマイクロフォンに関する水理模型実験結果を用いて,観測された信号データから掃流砂量および粒径特性を 推定する手法について検討を行う. 2)では,これまで日本やイタリアで確立した水生昆虫の種・遺伝的多様性からダムによる河川分断の影響を評価する手法をスイスの一連のダム上下流域に適用する.具体的には,平成26年度に収集した日本の旭ダムおよびスイスのSolisおよびPfaffensprungダムの上下流の河川環境調査データの分析を実施する.分析項目は,水質,河床材料,付着藻類,流下粒状有機物(POM),底生昆虫であり,特に,ダム上下流の河床材料および流況特性と底生昆虫の群集特性の関係を分析する.さらに,サンプリングデータを用いてDNA分析を行う. 以上の2項目の研究を通じて,トンネル内の砂礫輸送形態と摩耗損傷メカニズムに関する検討および排砂バイパスの設置による河川分断の解消の効果について検討を行う.また,平成27年4月にスイス連邦工科大学において開催される「排砂バイパスに関する国際ワークショップ」に参加し,これまでに得られた知見を成果発表するとともに,スイスおよび台湾などのその他諸国における排砂バイパスの計画・設計・管理運用に関する最新情報の 収集および統一的なガイドライン策定のための討議を行う.
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Research Products
(10 results)