2014 Fiscal Year Annual Research Report
多様なダイナミクスを有する環境で持続・成長可能な自律適応的分散システムの研究
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26280022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角川 裕次 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80253110)
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 分散アルゴリズム / 分散システム / 自律適応性 / エネルギー効率 / 自己安定性 / エージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代ユビキタスネットワーク環境に構築される超大規模次世代分散システムの持続可能性,成長可能性を保証するには,ネットワーク環境やサービス要求などの変動に起因する多様なダイナミクスに対して分散システムがエネルギー効率よく自律的に適応して安定動作することが必要である.これまでに,分散システムのさまざまな適応的安定性モデルが提案されており,本研究では,これらの多様な安定性モデルを統融合することにより,多様なダイナミクスの時間・空間的特性に応じた適切な安定性を自律的に選択し,エネルギー効率よく実現する自律適応的分散アルゴリズムの理論的基盤と設計法を確立することを目指す.そのために,以下の課題に取り組む. (1) 多様なダイナミクスの下でのさまざまな適応的安定性モデルの共生可能性の解明.(2) ダイナミクスに応じた多様な適応的安定性を実現するための統融合的手法の確立.(3) 適応的安定性のエネルギー効率にすぐれた実現方法の確立. 今年度は初年度であり,主として,(1),(2)の課題に取り組んだ. 課題(1)について:(a) 自己安定性,厳安定性,強安定性,故障封じ込め,安全収束性,時間適応安定性,弱安定性,緩安定性などさまざまな適応的安定性モデルについて,これらを実現可能なダイナミクス特性の特徴付けを行い,自己安定性,強安定性,時間適応安定性,緩安定性について,新たな知見を得た.(b) 適応的安定性モデルの時間・空間的共生可能性について検討した.また,異なる安定性のシームレスな接続可能性を実現するために有望なモバイル・エージェントの基盤問題について,分散アルゴリズムを提案した. 課題(2)について:(c) ダイナミクスの時間・空間的特性を推定する手法について検討した.また,安定性のシームレスな切り替えを実現するために,自己安定性とモバイル・エージェントをベースとする手法について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は初年度であり,研究実施計画通りに以下の課題(1)および(2)に取り組んだ.当初計画では,これら2つの課題への取り組みには2年半を要するとしているが,既に一定の成果を得ており,順調に進展している. (1) 多様なダイナミクスの下でのさまざまな適応的安定性モデルの共生可能性の解明:この課題では,以下の2つのサブテーマに取り組み,今後の研究の基盤となる成果を得ている.(a) 適応的安定性モデルが実現可能なダイナミクス特性の解明.(b) 適応的安定性モデルの時間・空間的共生可能性の解明. (2) ダイナミクスに応じた多様な適応的安定性を実現するための統融合的手法の確立:この課題では,サブテーマ「(c) ダイナミクス特性の推定に基づく統合的手法の開発」に取り組み,基盤となる要素技術に関する成果を得ている.本課題に関しては,平成27年度からは,もう一つのサブテーマ「(d) 安定性モデルの融合による,新たな適応的安定性モデルの創出」にも,計画通りに取り組む予定である. さらに,当初計画では,平成27年度途中から取り組みの開始を予定していた,課題「(3) 適応的安定性のエネルギー効率にすぐれた実現方法の確立」への取り組みも,平成26年度中に開始することができ,成果を得ている. このように,当初に計画していた課題については順調に進展しており,さらに,当初計画より早くに実施を開始した課題もあることから,「当初計画以上に進展している」と評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,当初の計画以上に順調に進展しており,これまでのところ,当初の研究計画で実施が困難になるなどの問題は発生していない.そこで,今後も,研究分担者と共に,海外の共同研究者や研究代表者が指導する大学院学生の協力を得ながら,当初計画に沿って研究を進めていく.特に,平成27年度は,平成26年度に引き続き,本研究の基盤となるべき要素技術やアイデアの確立に取り組みながら,3年目以降の研究の方向性を定めていく予定である. 海外共同研究者の,Sebastien Tixeuil教授(フランス・パリ第6大学),Shay Kutten教授(イスラエル・テクニオン),Ajoy Datta教授(米国ネバダ大学)それぞれのグループとは,平成26年度にも意見交換を行っている.平成27年度は本研究の重要な時期にさしかかっており,相互訪問などもまじえて,これまで以上に密な意見交換を行い,当該分野のグローバルな研究動向や技術動向を踏まえながら,3年目以降の本研究の方向性を定めていく予定である.
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Causes of Carryover |
全体で90万円強の次年度使用額が生じたが,これは主として,物品費によるものである.使用計画では,物品費として80万円を計上していたが20万円弱しか使用せず,60万円余りの次年度使用額が生じた.これは,研究遂行のためにパソコン及び周辺機器(計35万円程度)の新規購入を予定していたが,初年度は資料整理用の端末の購入にとどめ,シミュレーション実験などに使用するパソコン等の購入を次年度に変更したためである.また,論文別刷の支払い(25万円程度)が,査読期間が予定より長くなり,次年度にずれこんだためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度にパソコンを購入しなかったので,次年度には,シミュレーション実験等を実施できるタイミングで,実験に使用するパソコンを購入する計画である.また,次年度にずれこんだ論文別刷の支払い経費も計上している.
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