2014 Fiscal Year Annual Research Report
図地の知覚と皮質におけるその群表現 --- 自然光景の理解に向けて
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26280047
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
酒井 宏 筑波大学, システム情報系, 教授 (80281666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 弘 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (80304038)
山根 ゆか子 大阪大学, 生命機能研究科, 講師 (70565043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 脳・神経 / 画像・文章・音声等認識 / 心理物理実験 / 知覚 / 視覚 / 計算神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚の目的は,光景中の何処に何があるかを知ることにある。図地分離は,光景を理解する上で基礎となる根源的な問題である。図地分離の基礎となっていると考えられているのは,輪郭上で図の方向に対して選択性を示すBO(Border Ownership)選択性細胞である。しかし,従来は矩形の刺激群に対する単一細胞記録・解析しか行われていない。本研究は,複雑な自然光景のなかで背景(地)から物体領域(図)を分離する視覚メカニズムを明らかにすることを目的とする。 H26年度は,電気生理実験を実施して,自然画像に対する視覚皮質(V1, V4)にある神経細胞の応答を記録・解析し,その機能の理解を開始した。まず,電気生理実験に供する自然輪郭刺激を作成した。このために,心理物理実験を計画・実施して,ヒト知覚に対応した自然輪郭特徴の定量方法を提案した。多様な輪郭をもつ自然画像パッチについて,凸性・閉合性・対称性を要因として,系統的な刺激群を作成することに成功した。 電気生理実験では,まず微小多点電極記録におけるCRF位置の自動調整機構を構築し,この精度を確認した。多点電極記録では,事前に各細胞のCRF 位置を同定することは困難である。そこで,少数の電極の反応から,CRFを推定するシステムを構築した。作成した自然輪郭刺激群を鎮痛不動化した動物に呈示して,視覚神経細胞の反応を微小多点電極より記録した。多数(100個程度)の細胞からの同時記録を得ることに成功した。これらの記録をspike sortingし,各細胞のCRF位置,方位選択性,BO(Border Ownership)選択性,図地等に対する応答を解析した。 その結果, 図地分離に関連する応答を示す細胞を数十個認めることがができた。H27度には,これら細胞応答の解析を本格化させ,図地知覚を生起する神経メカニズムの解明にアプローチしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気生理実験に供する自然輪郭刺激を作成した。このために,心理物理実験を計画・実施して,自然輪郭特徴の定量方法を提案した。多様な輪郭をもつ自然画像パッチについて,凸性・閉合性・対称性を要因として,系統的な刺激群を作成することに成功した。さらに,心理物理実験の結果から,ヒトの知覚が使っている刺激特徴が推定された。 電気生理実験では,微小多点電極記録におけるCRF位置の自動調整機構を構築した。作成した自然輪郭刺激群を鎮痛不動化した動物に呈示して,視覚神経細胞の反応を微小多点電極より記録した。これらの記録をspike sortingし,各細胞のCRF位置,方位選択性,BO選択性,図地分離等に対する応答を解析した。調整の結果,多数(100程度)の細胞からの同時記録を得ることに成功した。BO選択性を示す細胞を認めることができた。また,図地分離への応答を示す細胞(20~30個)を認めることがができた。 このように,H26年度は,電気生理実験において微小多点電極による同時記録を可能とし,視覚野細胞が図地を符号化しているかどうかの解析を開始できるようになった。この結果,視覚野(V4)の神経細胞が図地に対応する反応を示すことが判ってきた。また,自然輪郭の特徴を心理物理実験によって定量化し,系統的な自然画像輪郭群を作成することに成功した。これにより,ヒトが凸性・閉合性・対称性などの輪郭特徴によって輪郭を知覚していることが判った。以上の結果から,当初の研究計画に比して順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は,自然輪郭に対する神経反応記録を継続する。神経細胞が図地を直接符号化している可能性についても解析する。V4の細胞が図または地に対する選択性を示すかどうかを明らかにする。同時に,計算実験によって,BO細胞モデル群の出力から図方向の機械識別を試みる。具体的には,Support Vector Machineによる図方向判断を行って,群としての識別能力・特性を得る。計算実験と同様に,機械学習による識別を基にして,複数細胞の反応に内在する情報を解析する。 細胞の選好性・CRF位置等に依存した同期解析・共選択性解析等によって,機能的な群を形成するための統合機構の理解にもアプローチする。 大域情報が与える機能を,自然画像に対する視線追跡から解析していく。自然画像を呈示した時の視線追跡実験は容易ではないため,円滑に実験を進める為に,予備実験および解析プログラムの開発を開始する。
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Research Products
(17 results)