2014 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚統合による自他の統合と向社会的行動 ―社会的共生に向けた基礎的研究―
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26280048
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐藤 徳 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (00422626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知科学 / 社会性 / 向社会的行動 / 実験心理学 / 多感覚統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
共感、援助行動などの向社会的行動を調べた研究では、向社会的行動が主に内集団の成員に対してしか示されないことが示されている。本研究では、成人を対象に、自己の行為に対する外集団成員の応答の随伴性を操作し、随伴性のある場合には、外集団成員への潜在的な好感情が生じ、外集団成員に対する援助行動を示すようになるかを検討した。 まず、感情誤帰属手続きにより外集団成員に対する潜在的な好悪を測定し、差別尺度や共感尺度などの顕在指標と潜在指標のどちらが実際の外集団への援助行動を予測するかを検討した。その結果、潜在指標のみが援助行動を有意に予測することが示された。顕在的な差別尺度や共感尺度のいずれも実際の援助行動をまったく予測しなかった。 次に、実験参加者の行為に対する外集団成員の応答の随伴性を操作し、潜在的な好悪への効果を調べた。随伴性は、Δp=P(E/A)-P(E/~A)(あることをして応答があった確率-何もしないのに応答があった確率)により定義した。その結果、随伴性のある場合(Δp=0.5)に、ない場合(Δp=0)に比べ、外集団成員への潜在的な好感情が高まることが示された。なお、随伴性の操作に際しては、特定の外集団成員の顔刺激を用いたが、好感情はその特定個人に限らず、その外集団全般に般化されることが示された。操作に用いていない内集団成員に対しては条件差が見られなかった。本研究では、アイコンタクトのある刺激を用いており、アイコンタクトの有無が集団全般への般化に関与している可能性があり、現在、検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、3年間の研究期間内に、成人を対象に、模倣のように類似した動作でなくても、①他者の動作が自己の動作と随伴さえしていれば(たとえば、右手を上げると口を膨らませるなど、一貫した応答がある)、その他者が外集団の成員だったとしても、その他者に対する好感情が生じ、潜在的な差別が低減することを示す。そのうえで、②同様な随伴性の操作によって、外集団の成員に対しても、内集団の絆形成に関わるとされるオキシトシンなどのホルモンが分泌されるようになることを示す。さらに、③乳幼児においても随伴性が向社会的行動を引き出す要因となることを示す、の3つを目指している。 上記の平成26年度の課題である①は、上記の【研究実績の概要】に記したようにおおむね達成されており、現在はアイコンタクトの有無を操作するなどし、般化の要因を探っている。外集団成員を対象としたものではないが、動作を模倣されると模倣した相手ならびに同集団成員に対して援助行動を示すようになることを示した先行研究は存在する。本研究では、実験参加者とは異なる動作で相手が応答する場合でも同様な結果が得られる可能性が示唆されており、重要な要因は類似性というよりも社会的随伴性なのだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アイコンタクトなど、社会的随伴性の操作と交互作用する可能性のある要因を加えた検討を行うとともに、社会的随伴性の操作によって、外集団の成員に対しても、内集団の絆形成に関わるとされるオキシトシンなどのホルモンが分泌されるようになることを示す。また、乳幼児を対象に内集団・外集団区別の起源を探るとともに、社会的随伴性の有無がその区別に関わるのか、さらには、社会的随伴性がある場合、外集団の成員に対しても向社会的行動が生じるかを検討する。可能であれば、社会的随伴性の操作によりオキシトシン関連遺伝子のヒストン修飾やDNAメチル化が生じるかも検討したい。 そのうち、平成27年度においては、乳幼児を対象とした実験を行う予定でいる。当初、乳幼児を対象とした実験は、最終年度である平成28年度に予定していたが、乳児を対象とする実験パラダイムの開発に困難が予測されるため、27年度に行うこととした。
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Causes of Carryover |
次年度に乳幼児を対象とした研究を京都大学で実施するため、その際に必要な経費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
乳幼児を対象とした研究は京都大学にて実施する。それに伴い、旅費や実験に必要な機材が必要であり、繰越金で補填する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Can children with Autism read emotions from the eyes? The Eye Test revisited.2014
Author(s)
Franco, F., Itakura, S., Pomorska, K., Abramowski, A., Nikaido, K., & Dimitriou, D.
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Journal Title
Research in Developmental Disability
Volume: 35
Pages: 1015-1026
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Neural and sympathetic activity associated with exploration in decision-making: Further evidence for involvement of insula.2014
Author(s)
Ohira, H., Ichikawa, N., Kimura, K., Fukuyama, S., Shinoda, J., & Yamada, J.
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Journal Title
Frontiers in Behavioral Neuroscience
Volume: 8
Pages: 381
DOI
Peer Reviewed
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