2015 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚統合による自他の統合と向社会的行動 ―社会的共生に向けた基礎的研究―
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26280048
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐藤 徳 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (00422626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験心理学 / 社会認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
動作に特定の結果が随伴するという経験を繰り返すと、動作の結果を予測し、予測された結果を引き起こすために意図的にその動作を選択することが可能となる。動作とその結果の双方向的関係に関する表象(行為表象)は、運動制御のみならず、自他弁別にも利用される。この行為表象は、自己の動作とそれに対する他者の動作の間にも形成され、他者の行為の理解や他者との行為の協調などに利用される。 この行為表象は、連合学習の法則、すなわち、時間的近接性と随伴性に基づいて形成される。ボタンを押すと音が鳴るなど、動作に随伴する結果が物理的な環境変化の場合、動作によって結果が生じるまで1秒から2秒もかかるとそれだけ学習は困難になる。しかし、現実的な対人インタラクションでは、乳児と養育者の関係ですら乳児が行動してから養育者が反応するまでには1秒から2秒かかるのが普通である。それでも人が自己の行為と他者の行為の関係性を学習するとすれば、時間的な遅延を補う何らかのメカニズムが存在するはずである。 そこで、本年度は、アイコンタクトに時間を縮める効果があると仮説を立て、恒常法など精神物理学的方法を用いたいくつかの実験によりその検証を行った。暫定的な結果は以下の通りである。①自己の行為に随伴する結果の場合、行為とは無関連な結果に比べて、行為と結果の間の時間が短く知覚された。②行為と結果の間が 500 msと短い場合、①の効果は見られたが、結果が物理的な環境変化か、他者の行為か、さらには他者とアンコンタクトがあるかの違いは見られなかった。③しかし、行為と結果の間が 1500 msと長い場合、①の効果のほかに、アイコンタクトの効果が見られ、アイコンタクトのある場合に全般的に時間が短く知覚された。 また、12か月と14か月の乳児を対象に、他者と動作が同期さえすれば、音楽があってもなくても同程度に援助行動が示されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、3年の期間内に、①模倣のように類似した動作でなくても、自己の動作に他者の行為が随伴しさえすれば、その他者が外集団成員だったとしても、その他者に対する好感情が生じ、潜在的な差別が低減することを示す。そのうえで、②同様の手続きによって、外集団成員に対しても、内集団の絆形成に関わるとされるオキシトシンなどのホルモンが分泌されることを示す。さらに、③乳児においても随伴性が向社会的行動を引き出す要因となることを示す、の3つを目指している。 ①は初年度に達せられ、外集団成員の行為が予測可能かつ自己の行為に随伴する場合に、それが自己の動作とは異なる動作であっても、外集団成員に対する潜在的な差別が低減し、外集団成員に対する援助行動が示されるようになることが見出されている。本年度は、さらに、自己の行為に随伴する結果の場合、行為と結果の間隔が短く知覚され、その分、学習が促進されること。また、特に行為と結果の間に遅延がある場合、アイコンタクトの有無によって時間知覚が変わり、アイコンタクトがある場合に時間が短く知覚される可能性があることを示した。 ③については、先行研究において、乳児においても動作の同期により向社会的行動が促進されることが示されていたが、動作が同期していれば、必ずしも先行研究のように音楽を乳児が聴いている必要はないことが示唆された。しかし、統制条件の適切な設定など、課題も残っている。 以上より、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、社会的随伴性が向社会的行動を引き出す重要な要因であることが示されつつある。また、随伴性は、アイコンタクトとともに、時間知覚をも変容させる可能性も示されつつある。今後は、これらの知見をさらに確実なものとするとともに、拡張していく必要がある。そこで、本年度は、①実験参加者の動作をモーションキャプチャーで読み取り、動作に随伴または非随伴してヘッドマウントディスプレイ上の外集団アバターを動かすことで、アバターが自己身体に組み込まれ、視点取得の促進や自己概念の変容が起こるか、②随伴性のある場合に実際の位置より近く感じられるなど、随伴性により空間知覚の変容が起こるか、を検討する。
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Causes of Carryover |
最終年度に、研究補助員の雇用、ヴァーチャルリアリティシステムの購入、オープンジャーナルへの投稿を予定しており、それらに必要な経費を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助員の雇用、ヴァーチャルリアリティシステムの購入、オープンジャーナルへの投稿またはオープンアクセス化を予定している。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] The role of social eye-gaze in children's and adults' ownership attributions to robotic agents in three cultures2015
Author(s)
Kannegiesser, P., Itakura, S., Zhou, Y., Kanda, T., Ishiguro, H., & Hood, B.
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Journal Title
Interaction Studies
Volume: 16
Pages: 1-28
DOI
Peer Reviewed
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