2014 Fiscal Year Annual Research Report
「わたしたち」の起源:自己概念の拡張とその心理基盤の発達に関する多角的検討
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26280049
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋弥 和秀 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (20324593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 智子 東京学芸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20296792)
小林 洋美 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (30464390)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | わたしたち / 他者意図理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己と他者とを包括する「わたしたち」という概念(”We”概念)の発達過程を解明することで、ヒトの社会集団形成の重要な基盤となる、個と集団とを同一化する心的機構の起源に迫り、現代における人間観を構築する上で不可欠かつ新たな知見を提示することである。 「わたしたち」を意味する語彙はほぼすべての言語において日常的に観察されるが、社会集団を構成する心的要素としての”We”概念の意味は大きく、社会的存在としての個々人のアイデンティティ形成とも深く関わっている。これを可能にする心的機構をあきらかにするため、共同研究体制の下、実験発達心理学・生理的指標計測・認知発達語用論の理論と手法とを併用し、高密度母子会話コーパスデータの詳細な解析と新たに案出した複数の行動実験を組み合わせることで、”We”概念の発達機序および関与する社会的認知能力との相互作用をあきらかにし、自己・他者理解の定型/非定型発達研究と教育実践に、新たな展望を提供することを目指している。 初年度は、高密度コーパスの分析に着手するとともに、「わたしは知っている」から「わたしたちは知っている」への以降に対する志向性の重要な一形態としての教示行動の発達的起源に実証的にアプローチする実験研究をおこない、成果を発表した。また、他者の曖昧な発話「これは?」に対する意図推論あ、先の教示行為と鏡の裏表を成す現象であるが、幼児期におけるこの発話解釈について、開発した新課題による実験をおこない、成果を発表した。We概念と関連の深いTheory of Mindに関わる新課題も、共同研究の一環として日仏での比較研究を行い、興味深い知見を加え発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調であるが、コーパス分析を詳細におこなう上での効率的な進め方について、いましばらく調整の時間が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にあらたに蓄積したノウハウを活用しつつ、引き続き課題を推進する。分析手法の精緻化については、当該分野の専門家の助言を得られる体制を整えた。
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Research Products
(7 results)