2015 Fiscal Year Annual Research Report
匂い成分を認識触媒する多様なNADH系酵素を用いた高感度な生化学式蛍光ガスセンサ
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26280053
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
當麻 浩司 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40732269)
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 講師 (50409637)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生化学式蛍光ガスセンサ / NADH / 還元酵素 / 光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な匂い成分の認識素子として利用が可能な各種の脱水素酵素や還元酵素での補酵素であるNADH(又はNADPH)について、その蛍光(em. 339nm近傍、flu. 491近傍)の蛍光計測系を構築し、高感度フォトマルチプライアや自家蛍光を抑制した高分子を独自に合成し酵素の固定化に用いることで、高感度な匂い成分モニタリングが可能な新規な人工嗅覚を開発することである。 27年度では、初年度に開発したガスセンサにおいて、脱水素酵素ならびに還元酵素の補酵素である還元型NADHを高感度に蛍光計測するために、高輝度UV-LEDと高感度フォトマルチプライアを導入し、自家蛍光を抑制した酵素固定化用のポリマーの合成を進めた。酵素固定化では、担持膜として蛍光特性が少ない親水性PTFE膜を選択し、包括固定化用の高分子材料PMEHを独自に合成し、作製した脱水素酵素膜を先端感応部に装着して用いた。構築したシステムにアルコール脱水素酵素(ADH)を適用し、酸性環境下での逆反応によるアセトアルデヒド溶液の蛍光測定に供した結果、逆反応での至適pHがpH6.5であることを見出し、逆反応におけるNADHの減少を蛍光検出することで、2-1000uMの範囲でアセトアルデヒド溶液の測定を実現した(初期NADH濃度:1000uM)。なお定量特性は初期のNADH濃度に依存する知見が得られた。次にガス計測では、感応部にガス成分やその代謝産物が蓄積を防ぐため、嗅覚の粘膜層に相当する自作の洗浄セルを光ファイバ先端に取り付け、NADH溶液の循環システムを組み込んだ。このガスセンサシステムにてアセトアルデヒドガスをADHの逆反応により検出することに成功した。現在、ガス計測系でのpHやNADH濃度の最適化、洗浄セルの条件設定を行い、高感度化を展開中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請課題の目的は、申請者が培ってきた「生化学式ガスセンサ」の技術をもとに、NADH高感度計測系をなどの蛍光計測用光学機器を、脱水素酵素群と組み合わせ、高感度の光学式匂いセンサを開発するもので、特にNADHを基質とする還元酵素系を用いることで多様に匂い成分を対象としたセンサを構築し、連続モニタリングが可能な高感度な匂いセンサを開発し、新規な人工嗅覚を構築することである。2年目である27年度の研究では、光学系ならびに酵素固定化を改良することで、高感度な生化学式ガスセンサの構築を進めることであった。 これに対して、申請者らは光学系において高輝度UV-LEDと高感度フォトマルチプライアの導入を行い、また酵素固定化において蛍光特性が少ない親水性PTFE膜を担持膜として選択し、生体適合性ポリマーMPCを改良することで包括固定化用の高分子材料PMEHを独自に合成し、導入した分光蛍光光度計にて特性を調べた後に、脱水素酵素膜を作製し先端感応部に装着して用いた。そしてアルコール脱水素酵素(ADH)を適用し、酸性環境下での逆反応によるアセトアルデヒド溶液の蛍光測定を実現した。また嗅覚の粘膜層に相当する自作の洗浄セルを光ファイバ先端に取り付けたガスセンサを構築し、アセトアルデヒドガスの蛍光計測に成功し、NADH溶液濃度やpHの最適化、セルの改良よる高感度化を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ28年度(最終年度)では、酸化還元酵素による計測対象を増加させると共に、27年度までに構築した高感度な蛍光式匂いセンサシステムについて、計測条件の最適化を実施する。さらに、標準ガス発生装置を低濃度レベルのガスを発生できるように改善し、センサの連続計測特性を調べ、新規な人工嗅覚へと発展させる。申請者らは現在、匂い成分を発生する標準ガス発生装置を保有している。高感度な匂いセンサの開発において、単成分の出力比較だけではなく、多様な匂い成分が混じりあった複合臭気でのセンサ特性(選択性)評価が極めて重要である。そこで現有の標準ガス発生装置について改良を行い、複合ガスが発生できるように改良する。そして、平成26~27年度にて開発を進めてきた高感度匂いセンサの特性評価(検出下限界、選択性、連続計測能)などを調べ、酵素系を利用した光学式人工嗅覚の可能性を見出す。
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Causes of Carryover |
27年度では340nmのピーク波長を有する高輝度UV-LEDを購入し、既存の光高感度フォトマルチプライアを利用することで光学系を作製し、また酵素固定化用ポリマーについても独自に設計開発することで研究費の支出を抑制しながら、導入した蛍光分光器にて特性を評価し、NADHおよびアセトアルデヒドの蛍光計測を実現することができた。28年度(最終年度)では蛍光特性を調べると共に、ガス発生装置の改良を行い複合ガス成分の作製を行い、光学素子や各種の酵素群、化学試薬、機械・電気部品などを購入し、高感度な生化学式蛍光ガスセンサ素子の最適化と高機能化を行い完成させることから、当初の計画以上の費用支出が発生する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度には還元型NADHの高感度蛍光計測については蛍光特性および最適化を進めながら、当初予定通りガス発生装置の改良を実施し、高輝度UV-LEDと蛍光波長特性に優れた高感度フォトマルチプライアを設備導入し、自家蛍光を抑制した酵素固定化ポリマーの合成を行い、生化学式蛍光ガスセンサ素子の開発と特性評価を行い、完成させる。実験用設備としては現有設備に加え、ガス発生装置の改良を実施し、光スペクトラム・アナライザと高感度分光器、ファンクションジェネレータ、高度ドラフトチャンバ、緩衝液冷却系、二重式暗ブースを用いて、既製品の光学素子や各種の酵素群、化学試薬、機械・電気部品などの物品費に支出し研究を進める。またこれまでの研究成果の国内外学会会議での発表や、学術論文への投稿費用にも充当する。また研究を加速するため、実験補助等への謝金にも支出する。
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Research Products
(2 results)