2014 Fiscal Year Annual Research Report
感覚・コミュニケーションを支援するウェアラブル触覚インタフェースの実用化研究
Project/Area Number |
26280070
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊福部 達 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 名誉教授 (70002102)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 一貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10403594)
坂尻 正次 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (70412963)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 福祉工学 / ヒューマンインタフェース・インタラクション / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、視覚・聴覚・発話などの機能が低下したり失ったりした障害者・高齢者(以下、当事者)のために、画像・音響の情報を触覚ディスプレイで当事者の手指に伝達するウェアラブルな携帯電話インタフェースを実用化することにある。代表者らは、今まで40年に渡り視・聴覚支援用の触覚ディスプレイの研究開発に携わっており、その経験と技術を基に本課題で必要な基本技術を開発し、その有用性を評価する。得られた成果は以下の通りである。 まず、(1)①触覚ディスプレイの要素となる圧電素子を10V以下の低電圧で駆動できるようにし、それらを用いた32チャンネルの小型触覚ディスプレイを1cm平方に収めることができた。②駆動回路を容積2cm×5cm×10cm、重さ183gという軽量小型化にすることができ、本課題の目標である「ウェアラブル化」を実現できた。③各種モード(視覚障害用、聴覚障害用、盲ろう者用)と各種パラメータ(振動強度・周波数、カメラ設定、フィルタ設定、触覚センサ機能設定)を行うための本デバイスとPCとのインタフェースを開発し終わった。 次に、(2)本デバイスを視覚障害者(後天盲、40歳、男性)に使ってもらい、アルファベット文字を触覚によりどの程度認識できるかを予備的に調べた。その結果、/HELLO WORLD/ のパターンを、電光掲示板のように右から左に移動するように提示したところ、訓練なしで/P,E,L,L,O,W,O,S,D/と認識したが、/H/を/P/に、/R/を/S/に誤認識した。また、/U/と/V/、/V/と/W/、および/O/と/D/の識別が難しいことが分かったが、5分程度の訓練により、それらの弁別も出来るようになった。 この結果を踏まえて、日本語カナ文字を触覚ディスプレイを通じて提示した場合、どのようにすれば、どこまで認識させ得るかを考察し、デバイスの改良点について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたように、おおむね順調に進展しているが、聴覚障害および盲ろう者支援に適用した場合の評価が今年度に持ち越すことになった。また、昨年度は装置の改良化のための技術開発までは進展しなかったことから、ハードウェア開発は今年度に持ち越された。 なお、研究の過程でヴァーチャルリアリティ(VR)におけるハプティック技術など汎用性の高いインタフェースへ展開する道をつけることができた。一方では、触覚を介した情報を当事者がどのように認知するようになるかを追跡し、感覚や脳の可塑性や代償機能を浮き彫りにして、脳科学へも新しい問題を提起することができた。VRへの展開や脳科学への問題提起については、著書や解説記事を通じて発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)評価実験 複数の視覚障害者に協力してもらい、先天と後天との違いなどを調べながら、前年度でやり残した、聴覚障害者や盲ろう者による本デバイスの評価実験を進める。この結果を通じて改良すべき項目を洗い出し、部分的な回路修正やソフトウェアの改良化を行う。 (2)デバイス改良 また、前年度はカメラ画像の処理の遅さが問題になり、ハプティックデバイスとして利用できないことが指摘されたので、その改良化のための設計を行う。さらに、携帯電話とのインタフェースが未解決であるので、その設計を行う。さらに、触覚ディスプレイを触覚センサとして利用する場合にも幾つかの技術的な問題が出てきたので、それらの改良化のための設計を行う。
|
Causes of Carryover |
昨年度は既に試作済みのデバイスを利用して、視覚障害者による文字認識を通じてその評価を行ったが、その結果をデバイスの改良化まで反映させることができなかった。そのため、昨年度の予算使途は主に評価のための実験ソフトウェアの開発に留まり、多くの予算を必要とするハードウェア改良のための設計・制作については今年度に遂行することにした。そのため、昨年度の予算の一部を今年度に使用できるようにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度では、昨年度に予定していたハードウェアの改良および多くの被験者による評価を行うため、昨年度の予算を装置の改良に要する電子部品および人件費に充てる。
|
Research Products
(8 results)