2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己他者感覚に着目した技能遂行・習得メカニズムの探求
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26280101
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
阪口 豊 電気通信大学, 情報システム学研究科, 教授 (40205737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 洋二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10203572)
西井 淳 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00242040)
井上 康之 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (00644436)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 身体体制化 / 自己他者関係 / 行動実験 / 計算モデル / 関節間協調 / 歩行 / 介助動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主題は,「自己と他者の身体体制化」という観点から身体技能における感覚運動制御について検討し,動作やその感じ方に個人差が生じるメカニズムを計算モデルと行動実験により明らかにすることである. 計算モデルについては,「身体の捉え方に応じて制御が変わる計算モデル」の実装に向けた原理的アイディアを整理した.具体的には,注意の向け方に応じて運動規範を切り替えるモデル,複数パーツから構成される身体の分割法と駆動法の違いが運動パフォーマンスに変化を生むモデルなどを考案した. 行動実験については,以下の三つの課題についてそれぞれ下記の成果を得た. ①個体単体の場合:歩行中の腰・膝・足関節の協調関係が歩行のフェーズに応じて変化する様子を明らかにした.この結果は,運動遂行において注意を要する部が変化するのに応じて身体体制化が動的に変化することを示すものである.このほか,身体への注意の向け方に応じて運動軌道や身体パーツ間の連動性にどのような変化が生じるか,また,ヒトがどのような物理量に注意を向けることができるかについても実験を行なった. ②個体+道具の場合:水の入ったコップをもって静止立位する状況での関節間協調メカニズムを分析した.具体的には,振動する水平台を用いて被験者の足元を水平方向に振動させたときの身体動作を計測し,身体自由度の拘束が関節間協調に与える変化を非制御多様体解析(UCM解析)により調べた.その結果,利用可能な身体自由度が減少して運動課題が難しくなると関節間協調がより強く働くようになることを示唆する結果を得た. ③個体+個体の場合:武術における稽古動作を対象として,仕手と受手の重心動揺の同期性について解析した.また,障碍者を対象とした構成的インタビューにより,介助者と被介助者における自己他者関係性が介助の質に与える実態について解析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算モデルの研究ではモデルの実装には至っていないものの,モデル実装に向けた基本的概念の整理が進んでいる.モデルの実装は当初より研究期間全体にわたって継続的に行なう計画であり,当初計画どおりに進んでいると考えている. 行動実験については,複数の題材を利用した実験が並行して進んでおり,全体として順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も,基本的に,申請時の計画調書に記載した内容に沿って研究を実施する予定である. ただし,行動実験の研究において「個体+個体」の枠組みにおける具体的例題として,計画当初は「武術における仕手と受手の関係性」を想定していたが,これに加えて「介助動作における介助者と被介助者の関係性」についてさらに具体的な検討を進める予定である.実績概要にも記載したとおり,今年度のインタビュー調査により自己他者関係性が介助動作の質に影響することが明らかになったことから,本研究課題を推進するうえで介助動作は適切な例題であると考えている. その他,研究を進める過程で適切な例題に遭遇した場合は,それを研究の中に積極的に取り入れていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
理由は以下の二点である. 一点は,当初謝金の支出相手として予定していた研究補助者が他機関に転出し,その代わりに適切な研究補助者を見出すことができなかったために,同補助者が使用する予定であった謝金,旅費,その他経費に余剰が生じたことである. もう一点は,行動実験の内容を検討する過程で実験装置の内容が確定せず,実験遂行のための実験システムの構築が遅れたために,そのための予算執行が年度内に終了しなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度に繰り越した予算の大部分は,行動実験の実験システム構築に必要な物品費として使用する.すでに実験システムの内容が確定し,予算執行のめどがたっている.その他,打ち合わせ旅費や実験補助者の謝金として使用する.
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Research Products
(15 results)