2014 Fiscal Year Annual Research Report
アラスカ湾堆積物から探る北米氷床の消長と海洋環境動態
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26281006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須藤 斎 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80432227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今野 進 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00553405)
沢田 健 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20333594)
芦 寿一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
松崎 賢史 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (50728582)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋環境動態 / 北太平洋 / アラスカ湾 / 氷床変動 / テクトニクス / 酸素同位体比変動 / 海洋生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラスカ湾沿岸域で得られた連続試料を用いて,氷床発達やそれに伴う陸域削剥量変動史と海洋生物群集変動のリンケージを明らかにすることを目的として研究を開始し,以下のような成果が得られた. ①サイトU1418およびU1417の酸素同位体比層序のための試料準備,および測定結果を基にした年代モデルの構築を行なった.オレゴン州立大学に委託測定により,U1417で63試料,U1418で472試料の酸素同位体比データが得られた.分析データを基に酸素同位体比基準年代モデルとの対比を行ない,U1418で100万年前までの年代モデルを構築することが出来た.②珪藻および放散虫化石の生層序と群集組成変動解析のため,光学顕微鏡観察用スライドと電子顕微鏡観察用試料を作成し顕微鏡観察を行った.珪藻化石分析に関しては,U1417は5サンプル,U1418は200サンプルの計量試料解析を終了し,群集解析用の準備を始めている.これらのサイトは残りのサンプルの解析とともに①および③~⑤の解析結果との比較のための準備も進めている.また,U1419は約70サンプルの計量試料解析が完了した.放散虫化石分析は,U1418の80サンプルの分析が終了し,詳細な中期-後期更新世の放散虫生層序を構築できた.③U1418におけるオパール分析による生物生産量および珪質微化石群集との関連性の解明のため,珪藻を多く産出するコア堆積物上部について分析を行い,60 mまで分析を終えた.④過去の堆積環境の復元を目的とし, U1417・U1418での透水率測定および粒度分析を行った.また透水試験で使用した試料片を用いて,SEMによる微細構造の観察およびAMSを用いた粒子配列分布を解析した.⑤古水温・湧昇-栄養塩供給システムの復元・評価を目的とし,U1417における長時間スケールでの珪藻バイオマーカー分析の準備を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ順調に分析および分析のための前処理などが進んでいる.一方で,有孔虫酸素同位体比測定のための堆積物洗い出し作業は予定通り進んだものの,同位体測定のための有孔虫化石の拾い出しが予定よりも進まず,予定個数の分析が行えなかった.また,洗い出しおよび拾い出し作業を含めた分析準備を進めてもらうために,ポスドクの雇用を見込んでいたが,良い人材が見つからずパートタイム研究支援者を2名雇用することにより,当初よりも予算を少なく使うこととなった.このような状況が発生し,分析作業自体は予定よりもやや遅れているが,現在順調に有孔虫の洗い出し作業が進んでおり,次年度には酸素同位体比分析を本格的に開始することができるため,研究の進捗としては大きな問題は無く,次年度と次々年度中に全ての解析とデータの比較や論文化への作業が行えると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の①~⑤の追加分析を行い,より詳細な環境変動復元モデルの作成のために以下のように分析を進める予定である.①U1418での年代モデルの精度向上,およびU1417での年代モデル構築のための新たな酸素同位体比測定サンプルの準備を行なう.また,炭素同位体分析に関しては昨年度に改良した試料精製ライン装置を用いて分析と準備を進める.②分析が終わっていないサンプルを用いて珪藻および放散虫化石の生層序と群集組成変動解析とともに①および③~⑤の解析結果との比較のための準備も進める.また,サイトU1419は海外共同研究者が行っている有孔虫酸素同位体比解析や物性物理測定の結果との比較などを行う.③U1418におけるオパール分析による生物生産量および珪質微化石群集との関連性の解明のため,珪藻を多く産出するコア堆積物上部60 m以深の分析を進める.④昨年度の分析結果を踏まえ,他のデータとの比較のための追加サンプル分析や準備を進める.⑤U1417における長時間スケール(後期中新世-現世)での珪藻バイオマーカー(HBIアルケン, 長鎖1,14ジオール, 長鎖1,13ジオール等)分析を進める. また,今後,これらのデータを統合し,モデル実験によって,氷床発達に伴って削剥された陸源成堆積物の堆積メカニズムを検証し,北太平洋気候変動に伴う氷床と海洋環境変動の関係を解明するためのプログラムの開発を行っている.
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Causes of Carryover |
本年度使用額の見積もりは,有孔虫酸素同位体比測定のための外注分析費用としてその多くを見込んでいた.しかし,分析のための堆積物洗い出し作業は予定通り進んだものの,同位体測定のための有孔虫化石の拾い出しが予定よりも進まず,予定個数の分析が行えなかった.また,洗い出しおよび拾い出し作業を含めた分析準備を進めてもらうために,ポスドクの雇用を見込んでいたが,良い人材が見つからずパートタイム研究支援者を2名雇用することにより,当初よりも予算を少なく使うこととなったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在順調に有孔虫の洗い出し作業が進んでおり,次年度には酸素同位体比分析を本格的に開始することができる.見込みとしては,技術補佐員雇用費として2名1年分(約200万円,進捗状況によっては2017年度に継続),酸素同位体比分析約2000サンプル(約400万円)の金額を使用する予定である.また,他の分担研究者も分析が順調に進んでおり,海外共同研究者とのデータ解析結果の発表やすり合わせなどを目的とした海外学会への参加ができる状況となっているため,その渡航費用としても使用する予定である.
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[Presentation] IODP Exp. 341 U1418 の酸素同位体比層序2015
Author(s)
朝日博史・Mix, A.C.・須藤 斎・今野 進・福村朱美・松崎賢史・Belanger, C.L.・Gupta, S.M.・Romero, O.E.・Gulick, S.・Jaeger, A.J.・LeVay, L.・IODP Ship-board Scientists
Organizer
東京大学大気海洋研究所研究集会 2014年度 古海洋・古気候に関するシンポジウム
Place of Presentation
東京大学大気海洋研究所
Year and Date
2015-01-06
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[Presentation] Oxygen isotope stratigraphy in the Gulf of Alaska (IODP Exp. 341)2014
Author(s)
Asahi, H., Mix, A.C., Suto, I., Belanger, C.L., Fukumura, A., Gupta, S.M., Konnno, S., Matsuzaki, K.M., Romero, O.E., Nam, S.-I. & IODP Expedition 341 Scientists
Organizer
American Geophysical Union (AGU)
Place of Presentation
San Francisco, USA
Year and Date
2014-12-16
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