2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26281010
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石松 惇 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (00184565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 二郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (10284481)
征矢野 清 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (80260735)
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90363473)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物海洋 / 海洋酸性化 / 海洋温暖化 / 再生産 / 生態系影響予測 / ウニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気中二酸化炭素濃度の上昇による海洋酸性化と温暖化が海産無脊椎動物、特にウニ類の生理に与える影響について検討する。平成27年度および28年度は、筋機能に着目し、行動解析およびin vitroでの張力測定、さらにはタンパク質組成解析による検討を行った。アカウニを2000および10000ppmのCO2濃度に平衡させた海水中で48日間飼育したところ、管足の収縮力が有意に低下した。管足から抽出したタンパク質を二次元電気泳動で解析した結果、6種のタンパク質量が上昇(アップレギュレート)され、2種が低下(ダウンレギュレート)されていることが判明した。さらにこれら8種のタンパク質について解析を進めたところ、アップレギュレートされた6種のうち、3つのスポットが同定できた(チューブリンβ鎖、トロポミオシン断片、アクチンN末端断片)。またダウンレギュレートされたスポットはアクチンC末端断片とミオシン軽鎖であることも判明した。管足に対する影響とは対照的に、アカウニの咀嚼器官の主要な筋である前引筋の張力はCO2による影響が有意ではなかった。また、摂餌量は10000ppmの条件では有意に低下したが、2000ppm条件では影響は見られなかった。これらの結果は、CO2濃度上昇が、主に筋肉関連のタンパク質の翻訳後プロセシングとタンパク質分解に関連したプロテオームの変化によりウニの管足筋に障害を与える可能性があることを示唆している。この発見は二酸化炭素濃度上昇によるウニの筋肉機能障害の仕組みを理解するための手がかりとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種解析が順調に進行し、昨年度は論文1編が科学雑誌に受理された。また、担当した大学院生の学位も取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究期間に得られた未発表のデータをまとめ、2編の論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
一部の消耗品を安く購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
諸雑費として使用する。
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