2014 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による小核形成を起源とする染色体不安定化メカニズムの解明
Project/Area Number |
26281024
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 憲治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40196746)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 小核 / 放射線 / ライブセルイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
X線誘発小核の運命を明らかにするために、動原体由来タンパク質CENP-Aを蛍光色素mKOで、ヒストンH3を蛍光色素Plumで標識したヒト線維肉腫細胞HT1080を作成し、ライブセルイメージングで1Gy、または2Gy照射後に出現する小核について調べた。この細胞を用いれば、小核を断片由来か、あるいは染色体由来か区別できる。線量当たりの染色体由来小核出現頻度は、0Gy、1Gy、2Gyでそれぞれ、5%、14%、26%と増加した。さらに、生じた小核が次の分裂で消失するか否かを調べたところ、1Gy及び2Gy照射による消失の割合は、断片由来で31%、28%であり、染色体由来では、それぞれ42%、19%であった。このことは、小核の由来にかかわらず、形成した20~40%の小核が次の分裂時に主核に取り込まれるか、あるいはアポトーシスを起こして消失することを示唆している。そこで、小核が主核に取り込まれる際に、両者のDNA複製のタイミングに差異があるのかについて興味を持ち、同調培養法を用いて調べた。マウスm5S細胞にノコダゾールを処理してM期に同調後、解除して最初のDNA複製のタイミングをBromodeoxyuridine(BrdU)の取込みにより主核と生じた小核とで解析した。その結果、p53野生型細胞では、主核と小核のDNA複製のタイミングはほぼ合致しているのに対し、p53ノックダウン細胞では、小核のDNA複製のタイミングがずれて主核よりも少し遅れる傾向がみられた。このことは、p53機能が失われると主核と小核の同調的なDNA複製のタイミングが失われることを示唆している。この場合、小核におけるDNA複製タイミングのずれによってDNA損傷が生じるのか否かを明らかにすることが次の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では、1)ライブセルイメージングによるX線誘発小核の形成と消失の細胞系譜解析、2)53BP1可視化細胞を用いた染色体分配エラーのライブセルイメージングを用いた解析、3)主核と小核におけるDNA複製タイミングの解析、以上の3項目を実施する予定であった。このうち、2)の53BP1可視化細胞を用いる解析に関しては、実験計画通りに進めることができなかった。その理由は、検出に適した53BP1の蛍光量を有した細胞が得られなかったからである。一方、1)ライブセルイメージングによるX線誘発小核の形成と消失の細胞系譜解析と3)主核と小核におけるDNA複製タイミングの解析は、ほぼ計画通りに進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)ライブセルイメージングを用いて、X線誘発染色体分配エラーとDNA2本鎖切断生成との関連性を解析する。細胞はヒストンH3を蛍光色素mcherryで可視化したマウスm5S細胞を用いる。本研究では、染色体分配エラーとして染色体架橋形成に着目し、架橋形成した細胞の系譜を解析する。このライブセルイメージングによる解析によって、X線によって染色体架橋が誘発された細胞のその後の運命が明らかになる。この解析結果は、染色体架橋形成が、その後の染色体安定性にどれだけ影響を与えるのかを探るための基礎データとなる。2)単離した小核を同調培養したp53野生型マウス細胞に取り込ませた後の主核及び小核の染色体安定性を解析する。小核を同調培養したマウス細胞のG1期、及びS/G2期に取り込ませ、その後の主核と小核の染色体安定性を区別して解析する。紡錘糸形成阻害剤コルセミドを用いてヒト染色体1本を含む小核を誘導後、遠心分離によって小核を単離する。この小核を、同調培養したマウスm5S細胞をG1期、及びS/G2期にそれぞれ分けて取り込ませて、主核のマウス染色体と小核由来ヒト染色体の安定性をFISHにより区別して解析する。3)X線照射した小核を同調培養したp53野生型マウス細胞に取り込ませた後の主核及び小核の染色体安定性を解析する。コルセミドを用いて単離した小核にはDNA2本鎖切断(DSB)はないので、単離した小核にX線を照射して、DSBを誘発した後に、実験2)と同様に細胞周期を同調したレシピエント・マウスm5S細胞に取り込ませる。この場合、単離した小核ではDNA修復は行われないので、小核が細胞に取り込まれるまではDSBは修復されず、DSBが内在する小核のモデルになる。
|
Research Products
(8 results)