2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による小核形成を起源とする染色体不安定化メカニズムの解明
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26281024
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 憲治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40196746)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物影響 / 染色体不安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ライブセルイメージングを用いて、X線誘発染色体分配エラーとDNA2本鎖切断(DSB)生成との関連性を解析した。細胞はヒストンH3を蛍光色素mcherryで可視化したマウスm5S細胞を用い、染色体分配エラーとしてクロマチン架橋形成に着目し、架橋形成した細胞の系譜を解析した。X線を2 Gy被ばくした細胞271系統について調べた結果、分裂異常が起きた系統は53%であり、そのうちの69%(99系統)がクロマチン架橋であった。クロマチン架橋が断裂した後、解析不能例を除くと、45%の細胞が持続的な増殖、22%がG1期停止、及び4%がアポトーシスを示した。このうち、G1期停止は、分裂終期における架橋の断裂により、DSBが新たに誘発されたことが原因でp53依存的に生じたものと推定される。以上の結果は、誤った再結合により生じた二動原体染色体を持った細胞の運命として、分裂期でクロマチン架橋を形成するが、およそ半数は増殖を持続し、20%程度がp53依存的期G1停止に至り、アポトーシスが誘導される例は稀であることを示している。 次に、X線(4 Gy)被ばくした小核を同調培養したp53野生型マウスm5S細胞に取り込ませた後の主核及び小核由来染色体の安定性を解析した。その結果、4 Gy被ばくした小核由来染色体は、G1期のm5S細胞に取り込まれた場合には、S/G2期のm5S細胞に取り込まれた場合に比べて、環状染色体や断片化などを含む複雑な構造異常や数的異常が起きやすいことが分かった。また、非被ばく染色体は、被ばく染色体に比べると取り込まれた後の変異が少ないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究推進計画では、1)ライブセルイメージングによるX線誘発クロマチン架橋形成とDNA2本鎖切断との関連性を解析する、2)X線未照射、あるいは照射した小核を同調培養した細胞に取り込ませた後の主核及び小核由来染色体の安定性を解析する、以上、主に2つの項目について実施する予定であった。このうち、1)のクロマチン架橋形成した細胞の運命に関するライブセルイメージングを用いた解析では、架橋断裂による新たなDSB形成がG1期停止を誘発していることを示す結果が得られた。また、2)のX線被ばくした小核由来染色体をG1期、またはS/G2期細胞に取り込ませる実験では、G1期とS/G2期で被ばく小核由来染色体の安定性が異なることを示す結果が得られた。以上の結果から、ほぼ計画通り研究を進めることができたと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)小核において、p53依存的にDNA複製によってDSB蓄積が生じることを実験的に明らかにする。p53野生型マウスm5S細胞に、紡錘糸形成阻害剤ノコダゾールを処理して小核形成させ、小核におけるDNA複製進行をブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みで、DSBの蓄積をγ-H2AXフォーカスでモニターして、両者の関係を調べる。さらに、p53をノックダウンした細胞でも同様に調べる。2)ライブセルイメージングを用いて、小核が主核に取り込まれる頻度を明らかにする。ヒストンH3を蛍光色素mcherryで可視化したマウスm5S細胞を用い、X線、またはノコダゾールによって誘発された小核が、再び主核に取り込まれる頻度を調べる。3)X線被ばくした小核を同調培養したp53野生型マウスm5S細胞に取り込ませた後の主核及び小核由来染色体について、短腕と長腕を分染するFISHを用いて構造異常の詳細を明らかにする。平成27年度は、小核由来染色体としてヒト2番染色体を用いたが、今年度は、異なる染色体(ヒト5番、または8番染色体)をm5S細胞に取り込ませて、その安定性を調べる。
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Research Products
(10 results)