2015 Fiscal Year Annual Research Report
Development of risk evaluation method for environmental chemicals based on the exposure routes
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26281028
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
埴岡 伸光 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (70228518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 透人 名城大学, 薬学部, 教授 (10179096)
須野 学 岡山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20621189)
重山 昌人 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (90598327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異物代謝酵素 / 化学物質 / 曝露経路依存的 / リスク評価法 / ヒトiPS細胞 / UDP-グルクロン酸転移酵素 / フタル酸ブチルベンジル / 加水分解反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、化学物質の暴露経路(標的臓器・組織:肝臓、小腸、肺及び皮膚)を考慮した包括的in vitroリスク評価法の開発を目指す。 本年度は、「ヒトiPS細胞由来の腸管上皮細胞様細胞の作製」、及び「フタル酸ジエステル類の代謝に関与する加水分解酵素の種差」の2課題について重点的に研究を遂行し、以下の成果が得られた。 1)ヒトiPS細胞由来の腸管上皮細胞様細胞の作製:まず、ヒトiPS細胞Dotcom株を用い、activin A処置による胚体内胚葉誘導、FGF2処置による腸管幹細胞誘導及びEGF処置による腸管上皮細胞の成熟化を行った。得られた分化誘導細胞は腸管上皮細胞様の形態を持つことを確認した。次に、iPS細胞由来腸管上皮細胞様細胞においてUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)を中心とするmRNA発現及び酵素機能解析を行った。腸管上皮細胞様細胞において生体小腸に近いUGT mRNA発現プロファイルが確認された。また、OME処置によるCYP1A1のmRNA発現誘導が確認された。 2)フタル酸ジエステル類の代謝に関与する加水分解酵素の種差:フタル酸ブチルベンジル(BBP)に焦点を当て、ヒト、ラット、マウス、イヌ及びサルの肝ミクロゾームによる加水分解反応の種差を検討した。BBPはいずれの動物種の肝ミクロゾームでもフタル酸モノブチル(MBP)とフタル酸モノベンジル(MBzP)に加水分解された。ヒトのBBPからのモノエステル体の生成は、MBzP>MBPであり、速度論的挙動は、MBP生成反応では二相性、MBzP生成反応ではHill式に従う挙動を示した。イヌでは、いずれのモノエステル体の生成活性もヒトと同程度であった(MBzP>MBP)。一方、ラット、マウス及びカニクイザルのBBPの加水分解反応の挙動は、ヒトとは逆の挙動であった(MBP>MBzP)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまでにヒトiPS細胞を肝細胞様細胞に分化誘導することに成功し、UGT及び転写制御因子のmRNA発現を解析した。また一方で、フタル酸ジエステル類のヒトにおける加水分解反応に関与する酵素の特性を解明した。これらの成果を踏まえて、本年度は、「ヒトiPS細胞由来の腸管上皮細胞様細胞の作製」、及び「フタル酸ジエステル類の代謝に関与する加水分解酵素の種差」について検討した。ヒトiPS細胞Dotcom株から腸管上皮細胞様の形態を細胞に分化誘導することに成功し、生体小腸に近いUGT mRNA発現プロファイルを示すことを確認した。また、OME処置によってCYP1A1 mRNAが誘導されたことも観察した。BBPは、BBPはいずれの動物種の肝ミクロゾームでもMBPとMBzPに加水分解され、その代謝挙動に大きな種差があることを明らかにした。従って、本年度の検討及びそれらの成果は、本課題の当初の計画を概ね達成したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
【今後の研究計画】 1)化学物質の個人差の解明:単一酵素系(リコンビナント酵素(CES, CYP, UGT))及び複合酵素系(カクテルリコンビナント酵素及びミクロゾーム画分)によるフタル酸ジ-2-エチルへキシル(DEHP)のin vitro代謝反応を包括的に解析する。 2)実験動物における代謝プロファイル:マウス、ラット、イヌ及びサルの肝及び小腸ミクロゾームによるDEHP及びフタル酸モノ-2-エチルへキシル(MEHP)のin vitro代謝プロファイルを明確にし、ヒトにおける結果と比較してDEHPの代謝と毒性の関連性を解析する。 【次年度の研究費の使用計画】 当研究室には細胞培養のための設備並びに異物代謝酵素の発現解析(mRNA及びタンパク質)及びin vitro代謝反応のための装置などは所有している。一方、リコンビナント酵素の作製などの試薬や器具、並びに個人肝・小腸ミクロゾームを十分量必要とする。そのため、平成28年度の研究費のほとんどは消耗品に充てる。研究成果は学会や国際誌に発表する予定であり、旅費(学会参加のための旅費)やその他(英文校正料)にもそれぞれ10~15万円を充てる予定である。
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