2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム網羅的な発現遺伝子を指標にしたブナ林の環境影響評価
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26281030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 秀之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70312395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬々 潤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人工知能研究センター, 研究チーム長 (40361539)
小倉 淳 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (60465929)
山口 高志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 研究主任 (90462316)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノミクス / ブナ林 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.環境ゲノム学的な現地データのインベントリの構築:重点研究サイトである北海道黒松内添別ブナ林ならびにサテライト研究サイトである北海道狩場山ブナ林、神奈川県丹沢山系ブナ林、富士山南麓ブナ林、鹿児島県紫尾山ブナ林の各地点で夏期オゾン濃度と気温の測定を行った。DNAマイクロアレイデータとして北海道狩場山ブナ林、黒松内ブナ林、丹沢山系ブナ林(5ヶ所)、富士山ブナ林、福岡県英彦山ブナ林、背振山ブナ林、鹿児島県紫尾山ブナ林のデータを取得した。 2.環境影響評価の解析アルゴリズム開発:樹木個体の衰退度を葉の遺伝子発現プロファイルによって指数化できる方法を開発した。この衰退指数は環境刺激の指標と(酸化、温度、乾燥の影響)と独立した評価ができるようにできた。 3.環境影響評価法:上記2.で開発した衰退指標を用いて全国のブナ林の環境影響評価を行ったところ、地域間で衰退度に有意差が認められた。北海道狩場山で最も衰退度が低く、神奈川県丹沢山系檜洞丸および丹沢山で最も衰退度が高かった。 4.総合考察:上記3.の衰退指数と環境指標性遺伝子の発現パターンに基づく環境影響スコア値(手法は前年に開発済)の関係性を検討したところ、統計学的に有意な関係が認められた。衰退指数は酸性影響のスコア値と有意で影響力が最も大きく、乾燥影響のスコア値とも有意な関係が認められた。この結果から、神奈川県丹沢ブナ林における衰退現象は酸性沈着と乾燥の複合的作用に起因すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム網羅的な遺伝子発現プロファイルから環境影響指標と樹木の衰退度指標を独立した遺伝子によって設計することができ、両者の遺伝子発現パターンから環境影響とブナ個体の衰退の関係性を導くことができた。この点は、本研究課題の最大の難所を解決できたことを意味するため、本プロジェクトは当初の計画以上に進展していると評価できた。その一方で、生理学的な解釈に関する解析については、ブナのリファレンスゲノムのバージョンアップ(別プロジェクト)を待ったために作業が遅れているが、次年度中には当初計画のスケジュールに戻せる見込みである。以上をまとめ、概ね順調に進展していると評価できた。
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Strategy for Future Research Activity |
重点研究サイトである北海道黒松内添別ブナ林については継続調査を行う。サテライト研究サイトとして、北海道狩場山、新潟県、福岡県英彦山などにおいて新規調査ならびに昨年度からの継続調査を行う。 衰退指標性遺伝子の一般性を高めるために、健全木と衰退木の遺伝子発現パターンに関する比較研究を継続して行う。 遺伝子のシグナル伝達に関するパスウェイ解析に基づき、環境刺激の指標性遺伝子の発現パターンと個体衰弱の指標性遺伝子の発現パターンよる生理学的因果関係の解析を行う。 指標性遺伝子の絞込を行い、解析法の簡便化に取り組む。本件は、当初の計画で最終年度に予定していた研究項目であるが、前倒しで行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年3月30日に納品を完了したが、支出が平成28年度となったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験器具を平成28年3月30日に納品済、同年4月に支出予定。
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Research Products
(4 results)