2014 Fiscal Year Annual Research Report
畜産排水処理施設から水環境中への窒素流出および薬剤耐性菌の伝搬とその制御
Project/Area Number |
26281037
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
池本 良子 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (40159223)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 典礼 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 講師 (00369969)
本多 了 金沢大学, サステナブルエネルギー研究センター, 助教 (40422456)
関 平和 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (90115246)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 河北潟 / 干拓 / 富栄養化 / 畜産関連施設 / 薬剤耐性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
河北潟周辺には畜産関連施設が多く存在し,湖沼水質,特に窒素濃度に大きな影響を与えていると推定される。一方,畜産における抗生物質の使用により排水中には薬剤耐性菌が多く存在していると推定され,排水処理過程で薬剤濃度による選択圧や耐性遺伝子の水平伝播が行われ,環境中に放出されている可能性がある。本研究では,まず,①河北潟周辺の畜産関連施設の排水,水路,湖沼の調査を行うことにより,畜産関連施設の窒素および薬剤耐性菌の影響を把握し,②畜産排水処理への嫌気無酸素好気生物ろ床による窒素除去法の適用性を明らかにするとともに,③排水処理に伴う薬剤耐性菌・耐性遺伝子の挙動を解析することにより,窒素および薬剤耐性菌の両面からの制御方法を検討するものである。 河北潟内5地点,流入河川5地点,干拓地内排水路1地点および,畜産関連施設の排水が流入する水路3地点を調査を行った結果,畜産関連施設排水中の窒素濃度が高く,河北潟の水質に影響を与えていると推定された。また,干拓地内の農地からの窒素や難分解性物質の流入の影響も高いことが示された。 一方,大腸菌濃度と抗生物質耐性菌の季節変動を調べた結果,河北潟一帯でアモキシシリン(AMP)とカナマイシン(KM)に対する耐性率が高く検出され,キノロン系の抗生物質(CIPとNFX)に対する耐性率は低かった。地点AとFでは,サルファメトキサゾール(ST)とテトラサイクリン(TC)に対する耐性率が他の抗生物質より比較的高くなっていた。地点AとFでは,大腸菌濃度とアンモニア濃度が比較的高かったことから,対象水域において,STとTCに対する耐性菌は糞便汚染と関連があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査は6月からはじめ,水質調査は月2回,耐性菌の調査は月1回の頻度でおおむね順調に推移している。当初窒素同位体比測定を行う予定であったが,これについてはうまくいっていないが,難分解性有機物の測定が流入起源解析に有効であったことから,本方式を用いて,農業および畜産関連施設の影響について解析し,良好な結果を得ている。一方,連続処理装置の運転もおおむね順調にすすんでいる。今年度は,耐性菌については,定期モニタリングによる対象水域における薬剤耐性菌の分布を把握する計画であり,予定通り進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
流域調査を継続し,年間の調査を行う予定である。窒素同位体比の測定については困難であったが,難分解性有機物を指標としたほうが多くの情報が得られたことから,引き続き難分解性有機物に着目した調査を継続する。 畜産関連施設のうち,食肉センターの排水の調査を行った結果,排水量も多く高濃度であることから,本排水をターゲットとして,嫌気無酸素好気法の適用を試みる。この際,調査結果から硫酸塩濃度が比較的低かったことから,人工排水の組成を見直して,処理実験を継続する計画である。また,アナモックス微生物を培養し,これを指標微生物とすることで,微生物解析を実施していく予定である。さらに,畜産排水処理施設の調査を継続し,その適用性を検討する。 薬剤耐性菌については,平成27年度は,5月まで定期モニタリングを続け,その後,キノロン系耐性遺伝子に着目して,その分布と季節変動を明らかにする。平成28年度は,薬剤耐性を持つ大腸菌の遺伝子型を潟内と畜産関連処理施設から単離した株とで比較し,起源推定を行う。
|