2014 Fiscal Year Annual Research Report
スクラップ金属素材の微量含有元素選別を可能とするオンサイト発光分析装置の開発
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26281044
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
我妻 和明 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30158597)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リサイクル技術 / レーザー誘起プラズマ / 発光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、3次元的に様々な形状を有する金属スクラップの表面に正確にパルスレーザーを照射するために、マクロスコープとアダプター内蔵リレーレンズ、及びCMOSカメラからなるその場観察光学系を作製した。CMOSカメラからはHDMIにて直接ディスプレイに映し出し、パルスレーザーを照射する位置に対して正確に焦点を合わせることが可能な機構となっている。こうして作成した光学系によりリアルタイムに位置観察をしながらNd:YAGパルスレーザー(波長532nm)を照射し、各種鉄鋼試料から生成したプラズマからの発光を分光分析装置にて観測したところ、例えばステンレス鋼においてはクロム及びニッケルの含有の有無、及び耐食性を高めるために特にSUS316などに2-3%含まれているモリブデンを測定時間1秒(レーザ照射を0.5秒にて5発、データ処理時間0.5秒)にて容易に判別することが可能であった。なお、同じ条件下において市販の高速度鋼のドリルビットを計測したところ、17wt%程度含まれるタングステン及び4wt%程度含まれるクロムの検出は可能であったが、1wt%程度含まれるバナジウムの検出は良好なS/N比が得られず不可能であったため、パルスレーザーの照射回数の増加によるS/N比の向上が必要であると考えられた。 レーザ誘起プラズマは個々のパルス毎に非定常な発光現象であるため、元素分析手法として利用する際にはプラズマからの発光を積算するなどの処理を行いばらつきを低減させる必要があるが、今回のステンレス鋼の組成決定においては、20秒間、パルスレーザー200発分の発光信号を積算することで、クロム及びニッケルの濃度域が0.5-20wt%程度の範囲において、RSDで5%以下のばらつきを得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていたレーザー誘起プラズマ発光セルの開発を行うことができ、原著論文として発表することができた。(柏倉俊介、我妻和明:レーザー研究、42(12), (2014) 908-912.)また、本測定装置の応用分野として、金属材料中の介在物の迅速評価についての研究を行い、その成果を原著論文として発表することができた。(笠原岳、柏倉俊介、我妻和明:分析化学、64(1), (2015) 35-41.)さらに、介在物評価に関する研究成果を国際会議における招待講演として公開した。(G. Kasahara, S. Kashiwakura, and K. Wagatsuma: World Green Energy & Resources Congress 2014, Beijing, China, Nov. 1-3, 2014.) 以上のような実績より、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請課題にて採用した分光分析装置はCzerny-Turner型のイメージング分光器に検出器としてインテンシファイアを備えたCCDカメラを併用したものであり、一般的にレーザ誘起プラズマ発光分光分析法に用いられるエシェル分光器と比較して非常に明るく検出感度が高いことに加えて、微量元素からの発光線の選定によっては母相の鉄からの発光線をICCDカメラに導入しないことが可能であるために、分析条件の更なる最適化によってより高感度な測定が可能なシステムである。本年度は前述の国家備蓄7元素(Mn, Cr, Ni, Mo, Co, W, V)に加えて、Si, Ti, Al, Nbの最適な分析発光線、すなわち強度が比較的強く、母相あるいはこれらの微量元素相互から分光干渉の少ない発光線を検討し決定する。しかる後にこれらを含有した鋼種類の判別について、前述の測定条件の最適化等により1秒以内に達成することを目的とする。 また定量分析については前述の通り、レーザープラズマからの発光信号の積算回数が多いほどS/N比の向上とばらつきの低減が期待できる。申請者の研究室においては発振周波数が1kHzのNd:YAGレーザを別途所有しているが、この発振周波数に対してはCCDカメラのフレームレートの追従は不可能である。導入した分光器は光路を2系統備えているため、もう1方の系統において直接光電子増倍管を取り付け、分析波長を固定してプラズマからの発光信号に対して発生する光電流を直接観測することにより、1kHzの周波数にて発生するプラズマからの発光信号を全て取得し、短時間に高精度の元素分析を可能にすることを目指す。
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