2014 Fiscal Year Annual Research Report
廃電子機器リサイクル副産物であるAs,Sb,Seの高選択的バイオ吸着素子の開発
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26281046
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
馬場 由成 宮崎大学, 工学部, 特任教授 (20039291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大榮 薫 宮崎大学, 工学部, 助教 (00315350)
岩熊 美奈子 都城工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00342593)
大島 達也 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00343335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超多孔性真球状キトサン誘導体 / 吸着 / レアメタル / Sb, As, Se / キトサンナノファイバー / 金属イオン鋳型吸着材 / パーフュージョンクロマトグラフィー / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.キトサン誘導体に超多孔質球状体の創製とIn, GaおよびAs, Sb, Seの吸着特性 O/W/Oエマルション法により貫通孔を有するキトサンの超多孔性・球状化に成功した。細孔構造は芯物質のヘキサンの粒径・量で決定された。これを基体として架橋と配位子導入を同時に達成できる「クエン酸(CAC)」を導入し、さらにIn/Ga/Znの相互分離が期待される「ホスフィン酸(PPAC)」を導入した。一方、Sb,As,Seの配位子には高塩基性の「イミダゾール(IMC)」や「ピペリジン類(PPC)」を導入し、レアメタル・有害金属の吸着特性を検討した。CACはpH=1-2付近でIn, Gaに対して高選択性を示した。さらに塩酸、硝酸、硫酸溶液からAsやSeは全く吸着せずSbに対して高い吸着性能を示した。PPACはIn>Ga>>Zn>Cuの選択序列であり、In, Gaが高選択的に吸着された。一方、IMCやPPCは各酸溶液の低濃度領域からSe(VI)を選択的に吸着し、これは注目に値する成果である。 2.生体高分子インプリント法による二重アフィニティーをもつキトサン誘導体の創製 キトサンに「ケトグルタル酸(KGAC)」を導入し、二重アフィニティーを付与するために対象金属として銅イオンを用い、KGACと銅イオンの高分子錯体を形成し、架橋後銅イオンを塩酸で脱離し調製した。本吸着材は1 ppm以下の銅イオンを「キレート形成能+サイズ認識」により吸着したと考えられる。 3.キトサン誘導体のナノファイバーの創製とSb, As, Seの除去・回収 キトサン/ナイロンのハイブリッドナノファイバーの創製に成功した。これを用いて銅とニッケルの吸着速度の実験を行い、瞬間的に吸着平衡に達することを明らかにした。このことは、高選択的・高速・高容量の吸着機能性を付与したナノフィルタ-の実用化が大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水の浸透圧差を利用したエマルション法による超多孔性真球状体のキトサン誘導体の粒径および細孔構造を制御する方法を新たに開発した。特に貫通孔の細孔構造はO/W/OエマルションのO/Wのヘキサンの粒径およびその量によって決定されることを明らかにした。この超多孔性真球状体の合成法はセルロース・ペクチン酸・たんぱく質などの生体高分子や合成高分子への応用展開が期待される。さらに、これを工業的吸着材として利用するために、キレート配位子の導入と架橋を同時に達成できるいくつかの新規キトサン誘導体の合成法を見出し、目的金属イオンへの高い吸着選択性を発現することに成功した。これらの成果はいくつかの特許として申請している。 また、キトサンの構造柔軟性によるキレート形成能を最大限に発揮し、さらに別のキレート配位子を導入して、銅イオンを用いて「イオンインプリント法」により銅鋳型キトサン誘導体を合成し、1ppm以下の極希薄溶液からの銅イオンの除去に成功した。このことは極微量のSb, As, Seの吸着除去材開発への応用が期待され、「高選択的」で「徹底的な除去」を達成できる吸着材開発への期待が高まった。 さらに「高選択的、超高速処理」を目的に高比表面積が期待される「キトサンナノファイバー」についても、ナイロンとのハイブリッドしたキトサンナノファイバーの合成に成功し、その強度についても工業的なモジュール化に十分な強度であることを明らかにすることができた。これらの多くの成果は、当初の計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の意義はバイオマスの特長である「規則的に配列された官能基(-NH2, -CH2OH)」と「高度に制御された細孔構造」を巧みに活用することにより、目的金属イオンに対して高選択的で、高容量、しかも高速で回収できる吸着材を創製し、「バイオマス廃棄物の有効活用と金属資源の循環システムの構築」を同時に達成することにある。 初年度の実績報告で述べたように、キトサンを素材として対象金属イオンに高い吸着選択性を発現する吸着材として使用するには、その大量の官能基(-NH2, -CH2OH)を最大限に利用して新たな配位子を導入することによりさらなる吸着機能を強化(高選択性・高容量・高速処理)すると共に、その操作性の良さを図る必要がある。そのためにはバイオマスの柔軟性を利用した「超多孔性真球状体」や「キトサンナノファイバー」の創製が重要なポイントになってくる。キトサンを素材とした微粒子やナノファイバーは金属イオンの工業用吸着材だけではなく、生体適合性材料としても期待される。初年度にこのような超多孔性の微粒子やハイブリッド型のキトサンナノファイバーを新規に合成することに成功し、しかも細孔構造の制御法を見出せたことは、新たな機能性をもった材料開発の一つの設計指針になると確信している。 本研究プロジェクトはレアメタルや有害金属の安定供給のための分離・回収材としての吸着材の開発を目的としており、本プロジェクトで最初に提案していた通りの方向性で研究の展開を図っていく予定である。今までの成果から判断すると、これまで以上の研究の進展が期待される。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、現有装置を使用してナノファイバー作成を行っていく予定であったが、装置も古くなり、その修理費も必要となっている。本研究ではこの装置は必須の装置であり、また本装置一台だけでは十分な実験データを得ることが厳しくなってきている。特に本年度から開始しようとしているエマルション系の溶液を使用してナノファイバーを作成するには、別の付属装置も購入する必要がある。 さらに「キトサン」を原料としたレアメタルやアンチモン、ヒ素、セレンなど有害金属の吸着材の開発において、その実用化を目指すにはカラム法を用いた吸着分離システムを構築する必要があり、有害金属やレアメタルを含んだ実廃液を用いてカラム法による実証試験が重要となる。本技術の最適化を図るために次年度以降に本予算を使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在検討中のキトサンを原料とした超多孔性真球状のキトサン誘導体を製造する技術や、分子インプリント法による二重アフィニティーをもつキトサン誘導体の合成、およびキトサン/ナイロンのハイブリッドナノファイバーの合成技術は、安価で省エネであり、しかも環境にやさしい分離機能性材料の開発を目指しており、未来型の吸着材として大いに期待される。現有設備が充実していたこともあり、当初の予定額よりも安価に始めることができたが、今年度はさらにキトサンナノファイバーを基体とした新たな材料開発も予定していることから、研究補助員の雇用も含めて予算を使用する計画である。
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