2015 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯産サンゴ・大型海藻を用いた基礎生産者の新たな化学物質リスク評価システムの構築
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26281048
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
竹内 一郎 愛媛大学, 農学部, 教授 (30212020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 伸明 有明工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30227631)
高橋 真 愛媛大学, 農学部, 准教授 (30370266)
高山 弘太郎 愛媛大学, 農学部, 准教授 (40380266)
治多 伸介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60218659)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境 / リスク評価 / 環境化学物質 / 基礎生産者 / サンゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度に構築した飼育実験システムにより、サンゴとサボテングサを対象としたイルガロール1051(以下、イルガロール)の低濃度の毒性実験を実施した。ウスエダミドリイシAcropora tenuisをコントロール、1μg イルガロール/L、10μg イルガロール/Lで、2週間、飼育した。光合成光量子束密度(PPFD)は50μ mol m-2 s-1、水温濃度は27.5℃に設定した。その間、デジタル一眼レフカメラによる撮影を、毎日、行い、撮影した画像からサンゴの体色のRGB値(R, 赤:G, 緑:B, 青)を測定した。なお、R、G、B値はそれぞれ0~255の値をとり、R=G=B=255で白にR=G=B=0で黒になる。その結果、イルガロールが高くなるにつれ、R、G、B値ともに上昇した。サボテングサでもほぼ同様の実験結果が得られた。よって、1μg/Lレベルのイルガロール濃度でウスエダミドリイシ等に毒性影響があることが推察された。そこで、白化に関与する遺伝子群を明らかにするため、1および10μg/Lのイルガロール濃度で7日間曝露したウスエダミドリイシの次世代シーケンス解析を行った。その結果、イルガロール曝露によって特異的に発現変動する遺伝子群の同定され、これらはサンゴの白化に関連することが示唆された。高感度ルミノメーターにより、1μg イルガロール/Lに曝露したコユビミドリイシA. digitiferaの遅延発光を測定した結果、1日以内の曝露でも光合成活性が変化することが明らかになった。 また、沖縄県北部や愛媛県南部等の沿岸域から海水を採水し、イルガロールおよびジウロン濃度を液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)等を用い測定した。その結果、いずれの除草剤も10μg/L以下であり、近年の日本近海における研究例と比較しても、低濃度であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、当初、1)日本南岸各地のイルガロール1051等の除草剤の環境中の濃度実態の解明、2)高感度ルミノメーターによる除草剤のサンゴと大型海藻を対象とした遅延発光計測による毒性評価、及び、3)低濃度レベルのイルガロール1051等の除草剤曝露時におけるサンゴの遺伝子発現の解析等に関する調査・実験を予定していた。1)に関しては、沖縄県、愛媛県各地から採水した試料のイルガロール1051とジウロン濃度を計測した。2、3)に関しては、低濃度のイルガロール1051をミドリイシ属Acroporaのサンゴ等に曝露させ、実験、解析を行うことができた。 よって、「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下のほぼ当初の計画どおりの研究を予定している。 1) ジウロン等の除草剤の環境中の濃度実態の解明、2) 高感度ルミノメーターによるジウロンに曝露したサンゴと大型海藻の遅延発光計測による毒性評価、及び、3) ジウロン等の除草剤曝露における遺伝子発現の解析。 なお、2)の実験の一部として、環境中で観測されることが予想される低濃度レベルのジウロンに関する曝露実験を行う予定である。また、本年度も引き続き、得られた成果は、早急に、SETAC(国際環境毒性化学会)等の環境毒性学関連の学会や国際シンポジウムで発表するほか、国際的な学術誌にも投稿する。また、愛媛大学大学院農学研究科附属環境先端技術センターで本研究課題関連のシンポジウムを開催することも計画している。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、1)日本南岸各地のイルガロール1051等の除草剤の環境中の濃度実態の解明、2)高感度ルミノメーターによる除草剤のサンゴと大型海藻を対象とした遅延発光計測による毒性評価、及び、3) 低濃度レベルのイルガロール1051等の除草剤曝露時におけるサンゴの遺伝子発現の解析等に関する調査・実験を実施した。特に、3) では、年度当初の予定より、サンゴの遺伝子解析等に関する支出が減少した。平成28年度分の予算と合算し、物品費や遺伝子解析費等に支出したほうが本研究課題の実施により適切であると判断し、執行を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、本年度の予算と合算し、1)高感度ルミノメーターによるジウロンに曝露したサンゴと大型海藻の遅延発光計測による毒性評価、及び、2)ジウロン等の除草剤曝露における遺伝子発現の解析の実施に必要な諸費用に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)