2014 Fiscal Year Annual Research Report
個体レベルから生物群集レベルを網羅したネオニコチノイド殺虫剤の影響評価
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26281050
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
関島 恒夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10300964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 貢 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10190315)
渡邊 肇 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10292351)
門脇 基二 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90126029)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド系殺虫剤 / クロチアニジン / ネライストキシン系殺虫剤 / カルタップ / ヤマアカガエル / 催奇形性 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
カエル類の発生過程に対するネオニコチノイド系殺虫剤クロチアニジンとネライストキシン系殺虫剤カルタップの影響を評価するため、野生カエル類のヤマアカガエルを用いて室内曝露実験を実施した。卵塊の採集は殺虫剤が施用されない湿地から行われた。採集された卵塊から、Gosner (1960)の発生段階表に基づき、発生段階16未満の発生初期卵が選定され、発生初期卵が暴露実験に用いられた。 その結果、カルタップにおいては、200mg/l、20mg/l、2mg/lにおいて生存率の顕著な低下が認められた。200mg/lの条件下ではステージ16に達するまでに平均で89%、20mg/lでは50%の個体が死亡し、いずれもステージ19に達する以前に全ての個体が死亡した。2mg/lの条件下ではステージ19までの段階に達するまで100%の個体が生存し、ステージ25に達する以前に全ての個体が死亡した。0.2mg/lでは、ステージ19に達した後、死亡数の増加がみられた。0.02mg/lでは、死亡数の増加は認められなかった。また、2mg/lでは、孵化後、遊泳可能となる発生段階にも関わらず、自力運動の一切が行われない麻痺状態を経て死亡となること、0.2mg/lにおいては、死亡に先立ち、刺激への反応低下を経て、同様の麻痺を生じることが観察された。奇形発生率においては、2mg/l において死亡に至る以前に100%の奇形率、0.2mg/l において平均で54%の奇形率となった。クロチアニジンに関しては、全ての濃度において、曝露後の死亡率および奇形率の顕著な上昇は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験条件下における野生ガエル(ヤマアカガエル、トノサマガエル)の発生過程に対する殺虫剤曝露の影響評価はほぼ終了し、カルタップについては著しい催奇形性が認められる一方、クロチアニジンについては明瞭な催奇形性が認められないなど、野生カエル類の発生過程に対する殺虫剤の影響に関し成分差が明らかとなった。この結果を踏まえ、モデル動物のアフリカツメガエルを用い催奇形性に関わる遺伝子を網羅的に探索することを目指しているが、平成26年度はアフリカツメガエルの飼育系の準備に留まり、発生過程に対する催奇形性の評価およびDNAマイクロアレイの実験には至らなかった。なお、DNAマイクロアレイについては、予備的に試行実験を実施した。 野外実験水槽を用いた殺虫剤曝露実験については、実験水槽の準備に想定以上の時間を要したため、本格的な実験開始は、平成27年度以降となった。
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Strategy for Future Research Activity |
野外実験水槽の準備およびモデル動物アフリカツメガエルの飼育系の確立の遅れから、計画は当初予定からやや遅れているものの、実験の準備が整いつつあることから、平成27年度以降は当初予定通りの研究が展開できると考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた、野外実験水槽を用いた殺虫剤曝露実験が生物発生量がピークを迎える6月までに完成できなかったことから、平成26年度は実験水槽の作成に重点を置き、実験開始は平成27年度に繰り越した。また、カエル類に対する室内曝露実験では、殺虫剤の影響評価が野生ガエル類の評価に留まり、モデル動物であるアフリカツメガエルにまで展開することができなかったため、アフリカツメガエルに対する曝露実験およびDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析については平成27年度以降に繰り越し、実験を集中して実施することにした。以上が、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野外実験水槽を用いた殺虫剤曝露実験については、実験水槽も準備が整い、実験水田の作成および生物調査も実施できる見通しが立った。ただし、実験水槽の設置にあたり、想定していた以上に実験水槽の設置工事、水田土壌の運搬費、および用水ポンプの設置に費用がかかることが分かったため、それらの費用に充当することとした。また、カエル類に対する室内曝露実験では、平成27年度にモデル動物アフリカツメガエルの飼育系を確立し、平成27年度~28年年度に集中して催奇形性の評価および、それらを引き起こす遺伝子を網羅的に探索する予定であるが、繰り越しした予算は、平成27年度以降に繰り越した実験に充当する予定である。
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