2015 Fiscal Year Annual Research Report
個体レベルから生物群集レベルを網羅したネオニコチノイド殺虫剤の影響評価
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26281050
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
関島 恒夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10300964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 貢 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10190315)
渡邊 肇 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10292351)
門脇 基二 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90126029)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド系殺虫剤 / 水田メソコスム / 有尾類 / クロチアニジン / カルタップ / 生物群集 / DNAマイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
新潟大学農学部圃場において水田メソコスムを設置し、2015年8月から12月にかけて、殺虫剤曝露による生物群集に対する影響を明らかにした。殺虫剤処理はクロチアニジンとカルタップの2つの殺虫剤を対象とし、両殺虫剤に対しそれぞれ低濃度群2区と高濃度群2区、それに殺虫剤無処理の対象群4区を加えた計12区を実験区として設けた。生物サンプリングの項目は、動物プランクトン、付着生物、底生生物、および水生昆虫の4項目とした。殺虫剤処理前日を処理前として1回、その後2週間間隔で各メソコスムにおいて生物サンプリングを実施し、5ヶ月間にわたり計13回の調査を行った。物理環境として、水中および土壌中の殺虫剤の残留濃度、水温、pH、溶存酸素(Do)、および濁度の5項目が、植被環境としてコナギと藻類の被度が測定された。 生物群集動態に対する殺虫剤の影響を可視化するため、プランクトン、水生生物、底生生物、および付着生物の調査項目ごとにPRC分析が行われた。その結果、クロチアニジンおよびカルタップともに、プランクトンと水生生物群集において、対照群との間に群集組成の有意な差異が認められた。さらに濃度の違いに関しては、クロチアニジン処理において、低濃度群に比べ高濃度群でよりプランクトンの群集組成が対象区と異なる傾向が認められた。一方、カルタップでは、プランクトンおよび水生生物群集ともに、濃度による組成の差異が認められなかった。 次に、メソコスムに形成された生物群集に対する環境要因の影響を抽出するためにCCA解析が行われた。夏期には、殺虫剤処理の影響を強く受ける幾つかの生物種が存在したが、秋期になると殺虫剤処理の影響は消失し、代わりに植皮率の影響を強く受ける生物が出現した。特にギンヤンマはコナギの植皮率の影響を、ウスバキトンボでは藻類の植皮率の影響を強く受けていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、メソコスムを用いた生物群集への影響評価を一つの柱とし、室内実験系において有尾類に対する殺虫剤曝露の影響評価をもう一つの研究の柱としている。室内実験系では、野生カエル類に対する殺虫剤曝露の影響評価に加え、有尾類の発生プロセスに対し殺虫剤が与える影響を遺伝子レベルで解明するために、モデル動物のアフリカツメガエルを用い、DNAマイクロアレイ解析を通して、殺虫剤により遺伝子調節を攪乱される遺伝子群を網羅的に抽出する予定となっている。 現在、野生カエル類に対する影響評価は順調に進んでおり、今春に予定されていた実験はすべて終了する予定である。一方、アフリカツメガエルについては、安定した飼育系の確立に時間がかかり、今後採卵そして実験開始の運びとなっている。なお、野生カエル類の実験が終了し次第、アフリカツメガエルの実験を開始する準備を進めており、研究期間中に予定していた全ての研究項目は期間内に終了できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
水田メスコスムを用いた殺虫剤曝露の影響評価は引き続き継続する。室内曝露実験に関しては、野生カエル類の実験終了に合わせ、アフリカツメガエルの実験を開始する予定である。野生カエル類では、カルタップにおいて発生段階の曝露により著しい催奇形性の発症が認められている。野生カエル類で認められた同様の催奇形性がアフリカツメガエルでも確認できれば、速やかに遺伝子解析に進むことができると考えている。
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Causes of Carryover |
アフリカツメガエルの安定した飼育系確立に時間を要したため、それ以降に予定していた当該種に対する室内曝露実験およびDNAマイクロアレイ解析関連の経費を最終年年度に後ろ倒ししたことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の使途については、アフリカツメガエルに対する殺虫剤の曝露実験、およびDNAマイクロアレイ解析に使用する予定である。
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