2016 Fiscal Year Annual Research Report
水生植物アサザを用いた科学的リファレンス像の構築に関する研究
Project/Area Number |
26281051
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 雅之 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60263985)
山室 真澄 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (80344208)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アサザ / 遺伝的変異 / RAD seq法 / クラスター解析 / ネットワーク解析 / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)野外集団の調査:北海道,関東,信州,山陰,紀伊半島,九州の各地域での試料収集を行った.これらのうちのいくつかの集団については,当該水域が埋め立てによって消滅していた.さらに,これまでの継続観察により,アサザ個体群規模は,数年で10倍程度の拡大または縮小を行う場合のあることが明らかとなった. 2)開花および花型の調査:各地での野外観察および収集株の栽培によって各集団の花型の特定を行った.従来は開花が観察されていなかった愛知県の1集団について,短花柱花であることが明らかとなった. 3)米軍撮影の航空写真を用いた霞ヶ浦の湖岸植生の解析について,投稿論文の執筆を行った. 4)遺伝的変異の解析:RAD seq法を用いて,系統解析,ネットワーク解析,クラスター解析を行った.その結果,3タイプの遺伝子型に分化しており,それらの遺伝子型がお互いに交雑することで,アサザ全体の遺伝的な多型が構成されている可能性が示唆された.すなわち,A(東北・関東・信州に分布), B(九州・四国に分布),C(九州・琵琶湖に分布)の3タイプと,それらの交雑型である.交雑型では,A×Bタイプが東北南部から九州に卓越しており,A×Cタイプが霞ヶ浦のみで見いだされた. 5)リファレンス像の構築:遺伝子型とその地理的分布から,アサザの交雑による多様化の実態と人為的な移入について検討し,リファレンス像についての予備的な構築を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最新のRAD seq法は,正確で大量の遺伝情報を得られる一方で,膨大なデータ取得とその解析のために1タームあたり約3ヶ月の期間を要する.加えて,多量のサンプルを同時に分析することがコストダウンとなるため,分析に供する多試料の調整にかなりの手間と時間が必要であった.このため,当該年度は1タームの試料分析となり,これまでに収集した試料の1/3程度の解析にとどまった.
一方,野外調査と試料収集および花型の調査は順調に進み,とくにDNA用の試料収集については予定を超える地域空の収集に成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で導入した遺伝子解析のRAD seq法は,かなりの時間を要することが判明した.このため,28年度は既収集試料の1/3程度しか解析を行うことができなかった.よって残りの試料は29年度に解析することとした.他の研究パートは順調に進捗しており,最終目標であるリファレンス像の構築にむけた統合解析を行う.
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Causes of Carryover |
新たな遺伝子解析の手法として本研究で導入したRAD seq法は,かなりの時間を要することが判明した.このため,28年度は収集試料の1/3程度しか解析を行うことができなかった.よって残りの試料は29年度に解析することとした.そのため,28年度の一部の予算を29年度に繰り越して使用する.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子解析分担者の牧雅之(東北大)が,RAD seq法による遺伝子解析を担当する.29年度中にこれまでに収集したすべての試料を解析する予定である.
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