2016 Fiscal Year Annual Research Report
障害者スポーツのための義肢装具のデザイン及び設計製作手法の研究
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26282004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山中 俊治 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (60528917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仰木 裕嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 教授 (90317313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デザイン / 義足 / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までの知見をもとにデジタル計測およびCADを用いた自転車競技用大腿義足の設計検討およびデザインを行なった。また、必要強度を満たしながら既存の義足より軽量にするため、従来の手法で作成された義足の破壊試験を行い、昨年度推定した目標強度の確認および再検討を行なった。昨年度の試作において問題があった部品の改良を行った。また、昨年度までの成果をより広く社会に示すため、国内外での展示を行った。 1)昨年度まで行なっていたデジタル計測データおよびCADを用いたドライカーボン製の義足ソケット製作の手法を応用し、大腿切断者のトライアスロン選手を対象とし、自転車競技用大腿義足のソケットをドライカーボンで製作するための設計検討およびデザインを行った。 2)昨年度までの研究で試作した陸上競技用下腿義足で用いていた金属製のコネクタパーツが必要とする強度に達していなかったため、必要強度を満たすためシミュレーションを用いながら新たな構造の開発を行なった。また制作方法や重量、外観など複数の要件を考慮した上で、実際にパーツとしての設計を行い、試作も行なった。また、従来選手が使用していた製作手法の義足に対する強度試験を行い、目標とする強度等の要件を再度検討した。 3)昨年度までの研究で製作していた義足が、ミラノトリエンナーレの一部として開催された企画展示に採録され、国外の人々への発表の機会が得られた。また、昨年度学内で行なった展示を国立新美術館で展示し、より広く社会に成果を提示することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、広く障害者に機能的で美しい義肢装具を供給するために、バイオメカニクスの基礎研究を行い、先端技術を駆使したセミオートクチュールの設計開発手法を確立することである。本年度は、昨年度までの成果であるドライカーボンを用いたセミオートクチュールの設計開発手法を応用し、自転車用の大腿義足ソケットにおいて機能と美観するデザイン開発を行なった。これまで行なっていた陸上競技用下腿義足に比べて一般的でなく、特殊な構成および形状であったため新たな知見が得られたが、対象とする選手の方針変更により競技で義足を使用しないことになり開発が中止となり最終的な製作までは至らなかった。 前年度から継続して開発していた陸上競技用下腿義足は、義足ソケットと板バネの位置や角度の調節を行う金属製のアダプター部品が強度不足であることが判明したため、構造から新たに設計を行った。その結果、角度調節のための機構を内包し、強度及び美観を両立する新たな構造の開発に至った。シミュレーションによる確認は行ったが、アダプター部品という特性上他の部品との接触条件が特殊で、実物での強度試験も不可欠なため、実制作も行なった。今年度はアダプター部品の再製作に注力したため、ソケット部の再設計/製作には至らなかった。 昨年度までの成果から、海外での展示や、新国立美術館での展示を行うことが出来、研究の成果を広く社会に示すことが出来た。安全性の観点から開発に時間を要し、計画よりは遅延し、また被験者の方針から開発中止になったものもあったが、新たな構造の開発やデザインプロセスの知見を得ることが出来たため、研究全体としては進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
機能と美しさを併せ持つ義足の設計手法確立のため、下記の通り研究を推進する。 1)新たに製作したアダプター部品の強度測定:実際の使用を想定した荷重をかけるための装置/治具を設計して試験を行い、目標とする強度要件を満たしているかどうか確認する。異なる構造をもった2種類のアダプターを製作しているため、それぞれ試験を行ったうえで使用する部品の選定を行う。 2)ソケット部の再設計:以前行なった強度試験の結果を踏まえ、ソケット部分の再設計を行う。ソケット部品に荷重試験を行なった際、カーボン繊維強化樹脂と金属部品の接着部分が剥がれる問題があったため、軽量性は維持しつつ接着を強めるための構造を検討し、再製作を行う。 3)被験者への着用試験:再制作した義足に対して再度強度試験を実施し、安全性を確認したうえで、実際に走行試験を行う。装用感について被験者に対してヒアリングを行う。可能であれば慣れるまで使用してもらい、軽量化によってパフォーマンスにどのような変化があるか観察、検証を行う。 4)デザイン手法のまとめ:これまで行なってきた設計プロセスをまとめ、デザイン手法を整理しドキュメント化する。
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Causes of Carryover |
自転車用大腿義足の開発が試作段階で中止となり、予想していた制作費用の使用がなくなった。そのため、陸上競技用下腿義足の開発に注力することになったが、自転車用の開発を行っていたため、取り掛かりが遅れた。陸上競技用で用いる調整アダプター部品の再設計に関して2種類の構造を開発し、製作を行ったため時間がかかり、コストの掛かるソケット部分の製作を次年度に持ち越すことになり、次年度への繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度製作したアダプター部品は強度試験にかけるため、強度の確認後再度製作を行う。また、ソケット部分においても強度試験を行うため、2個以上製作する。アダプター部品はチタン製、ソケット部分は炭素繊維強化樹脂製で製作にコストがかかるため、これらの製作で次年度使用額の多くの使用が予想される。また、成果物の写真や着用時の映像などの記録、公開のためにも予算の使用を想定する。
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