2014 Fiscal Year Annual Research Report
構造から表面まで:漆造形物制作におけるデジタル基盤技術導入の実践的研究
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26282008
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
土岐 謙次 宮城大学, 事業構想学部, 助教 (20423783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 浩也 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (00372574)
金田 充弘 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (00466989)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漆 / プロダクトデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は「①漆技術習得実習」「②職人技術撮影」「③漆の啓発活動」「④レーザー沈金」を行った。①では、研究代表者所属の宮城大学に共同研究機関の教員、研究者、学生総勢20名が集い、漆職人の指導のもと、一連の漆伝統技術を実習体験した。②では、漆職人の基本的な漆の技術を4K解像度で映像に収録した。職人の頭部に小型カメラを取り付け、職人の目線からも同時に撮影し、多角的な視点で技術を記録した。合わせて職人の解説の英語字幕を入れた映像を映像共有サイトYouTubeにアップロードし、一般に共有できる状態とした。③では、ウルシ樹の生体電位を利用して、宮城県南三陸町長清水地区に植樹されたウルシを対象に、デジタル技術を応用して遠隔地にその佇まいを再現する仕組みを開発し、「Tele-Flow」と題した芸術作品を制作し各地の展覧会で展示発表を行った。作品展示と共に日本の漆の危機的な現状(国産は1%、99%は中国からの輸入)をまとめて日英両国語で製作した印刷物を配布して啓発を行った。④では、従来の漆加飾技術のうち、彫刻刀で漆塗表面を線彫りをした後に彫刻部分に漆で金粉を埋め込む「沈金」にレーザー加工機の応用を試みた。120mm角のアクリル板に漆塗りを施した後に、デジタルデータで作成された図案をレーザー加工機によりその表面を彫刻し、事後に金粉および金箔を施す作業を行った。線状の彫刻ではレーザー加工機特有の発振痕が残り、手彫りの彫刻線に比べてやや乱雑な印象となり、手仕事を凌駕する品質を得るには機材の改良や出力の制御など検討箇所が多いことが分かった。一方、面的な彫刻では手彫りでは実現できない均一な彫刻面を得られることで、彫刻部分に金箔を施すという、新しい表現が実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究内容の検討に時間を要したため。また、研究内容の検討過程において研究を遂行する上で必要な技術を共同研究関係者が身につける必要が生じ、技術実習を行うことを盛り込んだため、全体に計画が遅れた。合わせて、漆職人の仕事を見学、記録するなど、共同研究関係者の漆技術の理解を深めるためにも時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は漆の造形手法を「造形的構造技術」と「表面的装飾技術」の2面から検討する。造形的構造技術では乾漆によるハニカム構造の製作手法の最適化、強度試験を行う。また従前より引き続き乾漆パイプ制作の機械化、省力化を検討し、より工業的な生産手法を開発する。あわせて比較的長尺(500~1,000mm)の乾漆パイプの強度試験も行う。表面的構造技術では、漆伝統技術のデジタルファブリケーションによる読み替えをテーマとし、レーザーカッターによる沈金制作手法の検討、漆を盛り上げて塗布する「漆錆絵」のCNC機構による制作などを計画している。また、漆表面の防炎性能を評価することで、建材としての漆塗りの性能評価を得る。
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Causes of Carryover |
漆職人の見学等で、旅費が増加したものの、物品の購入を抑制したことにより未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
11,040円を前年度未使用額として27年度に算入する
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