2017 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上国における生活支援教材の開発と協働-ラオスを事例に-
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26282010
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高増 雅子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (20120769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 晴子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (50299905)
佐々井 啓 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (60017241)
飯田 文子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (60160826)
望月 一枝 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (60431615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラオス / 学校給食 / 食教育 / 女性支援 / 教材研究 / ワークショップ / 人材育成 / 持続可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ホークショップを通してラオス北部地域の学校給食現場に従事する女性同盟員や学校教員・行政官、学校給食を管理する村落教育委員会担当者への食教育支援を行うとともに、持続可能な学校給食・地域コミュニティに必要な人材育成、資料・教材提供の可能性について探ることである。 研究方法として、ワークショップ参加者を対象に、インタビュー調査・自記式アンケート調査を実施した。調査対象者は、ウドムサイ県、ルアンナムター県、ポンサリー県3県の学校給食に関る行政官、小学校校長や教員、村落教育開発委員会(VEDC))の構成員、女性同盟の技術員、教員養成校教員及び学生である。調査時期と実施場所は、2017年10月にルアンナムター県教育委員会会議場で実施した。 参加者へのアンケート調査結果では、95.3%の参加者が「ワークショップに積極的に参加した」と回答し、「今後の活動へのワークショップの効果」では、100.0%の参加者が「効果あり」と回答した。「次回のワークショップへの参加の意思」については、83.7%の参加者が、「参加したい」と回答した。 作成した食教育教材を使いながらワークショップをおこなったが、参加者が一番役にたつと思った教材は、児童に分かりやすいように絵で食品を表し、食品を栄養的な働きによって分類した掛図で、続いて地元の食品100g当たりの栄養価を食品の写真とともに載せた食品成分表冊子であった。地元食品の写真と情報をカード化した教材も、74.4%の参加者が役に立つと回答していた。 今回使用した食育教材のレベルは、日本の小学校家庭科の教科書とほぼ同じレベルの内容であったが、様々な職域からの参加者であったことから、参加者のニーズに合わせて、中学校レベルや高校レベルの食教育教材も必要であったと考える。様々な職域に対応したワークショップを複数回開催することの必要性を感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年のワークショップ開催時は、ラオス北部の地域で学校給食が始まって、まだ給食が軌道にのっていない時期であり、学校給食の形態をとることに精一杯の時期であった。2017年のワークショップ開催時は、2015年から2年経過し、学校給食従事者の中で、学校給食の質についても考えるようになってきたのではと、考える。自分の職域で使いたい教材や欲しい教材を見ると、参加者が給食の献立のバリエーションを増やしたり、児童・生徒への食文化や栄養教育を行う上からも、参加者が教材の必要性を感じ始めていることが伺えた。 学校給食づくりに必要な基本的な知識である栄養学や食品学、衛生学等を学ぶ機会が、現行の教育体制ではないので、指導者向けに上記のような基礎知識を扱った教材作成が急務と考える。しかし、欧米の支援団体、世界食糧機構等の支援で作成した教材は、ほとんど現地で使用されていなかった。教材として、使用してもらうためには、地域の人と協働で地域のニーズに合わせた教材の作成と同時に、教材の使い方の指導も必要であることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果として、ラオス北部地域でワークショップの実施したことで、学校給食現場に従事する女性同盟員や学校教員・行政官、学校給食を管理する村落教育委員会担当者への食教育支援に効果があることが示唆された。しかし、持続可能な学校給食・地域コミュニティに必要な人材育成や、資料・教材提供には、このようなワークショップを継続的に実施するための地域指導者の養成及び実施するための資金調達が必要と考える。 今後の研究としては、学校給食事業担当責任者や 郡・県担当部署への情報提供や技術面でのスキルアップをするための人材育成方法を考えるとともに、地域産品による給食用食品加工技術の開発や学校給食による栄養改善への助言を、世界食糧機構ラオス事務所やラオス教育省を通して、行っていきたい。 また、ラオスのワークショップ開催で得られた支援方法や教材を、他の発展途上国でも活用できるように、より完成された普遍的な教材、および指導書を作成するとともに、他地域でのこれらの実証実験も実施できればと考える。
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Causes of Carryover |
2017年度、ラオス現地での調査研究を研究者1名で行ったため、当初予定していた旅費等をすべて使用することができなかった。また、2017年ワークショップでの課題も、少しでも解決できればと考える。2018年度は、2017年にラオスで行ったワークショップの成果及び課題を生かした教材づくり、および指導教本づくりを行うとともに、ラオス教育省及び世界食糧機構ラオス事務所を通して、ラオス北部地域に制作物を届けたいと計画している。また、これらの教材・指導書の普遍性を実証研究するために、他地域での調査を行いたいと考える。
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Research Products
(2 results)