2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26282012
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
後藤 景子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30243356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 靖之 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究員 (00416330)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 防汚加工 / Soil guard / Soil release / テキスタイル / 大気圧プラズマジェット / プラズマ酸化 / プラズマコーティング / 接触角 |
Outline of Annual Research Achievements |
衣服の美観や機能を保つために, 汚れが付着しにくく, 付着した汚れが洗濯により除去されやすい機能が望まれている. これを実現するための加工が防汚加工であり, 着用中の汚れ付着を抑えるSG (Soil Guard) 加工, 洗濯による汚れ除去を促進するSR(Soil Release) 加工などが開発されている. 通常, 防汚加工は加工剤を用いて行われており, SG性は繊維表面の撥水撥油化, SR性は親水化により付与される. しかしながら, 加工剤の使用は廃液や繊維の強度低下など問題となることが多い.そこで本研究では大気中での処理が可能なプラズマジェットにより防汚性付与を試みた. 処理に関する基本的情報を得るために,幾何学的に簡単なセルロースおよびPETフィルムを用いて,プラズマ酸化処理およびヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を前駆体として用いたプラズマコーティング処理を行った. 処理前後のフィルムに対する液状汚れと粒子汚れの付着性, および洗浄による粒子汚れの脱離性を顕微鏡画像解析により調べた結果,いずれのフィルムでもプラズマコーティング処理により液状および粒子汚れのSG性が,プラズマ酸化処理により粒子汚れのSR性がそれぞれ向上することが確認された. 比較のため, PEG系親水化剤およびフッ素系撥水撥油化剤を用いて処理したところ,SG性,SR性ともにプラズマ処理に較べて劣り, とくにフッ素系撥水撥油化剤で処理をした場合は顕著なSG性の低下が起こることがわかった. 綿布およびポリエステル布を用いた実用防汚試験でもプラズマ処理の効果が認められる結果となり, 汎用加工剤と較べて防汚効果が高いことがわかった. とくに, プラズマコーティング処理では, SG性が向上する一方で,懸念されるSR性の低下が小さかった. テキスタイルの防汚加工へのプラズマ処理の利用が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繊維材料のモデルとなるセルロースおよびポリエチレンテレフタレートの2種の高分子フィルムを試料として、大気圧プラズマ表面改質によるフィルム表面の形態的・化学的変化を表面分析により明らかにした。さらに、防汚性能への影響に関する基礎データとして、汚れの付着性や水系洗浄による脱離性を調べ、汎用加工剤と比べて高い性能を持つことを確認している。 さらに, 汎用衣服材料である綿布とポリエステル布を用いて実験を行い、大気圧プラズマ処理による変化がフィルムで得られた結果と概ね同様の傾向をもつことを確認し、テキスタイルの防汚加工への大気圧プラズマジェット利用の実現可能性を示している. これらの成果について7回の学会発表を行い, さらに, 3つの論文にまとめ, すでに掲載または掲載が決定している. また, 防汚加工に関して収集した情報を用いて, 学術雑誌に総説を掲載している.
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Strategy for Future Research Activity |
大気圧プラズマジェットコーティング処理によりPETフィルム表面に形成された膜に関して、X線光電子分光分析、フーリエ変換赤外分光分析、電界放射型電子顕微鏡観察、およびWilhelmy法によるぬれ性評価を行い、横断面も含めた詳細な情報を取得する。 大気圧プラズマジェットコーティング、並びに表面粘着性の異なるフッ素系加工剤を用いてポリエステル布およびレーヨン布を処理し、表面の性質とSG性を詳細に調べる。ぬれ性および帯電性と合わせて表面粘着性を考慮することで、SG性の支配要因を明らかにし、優れた防汚素材開発のための基本的指針を示す。得られた実験データをまとめ、国内外での学会発表および国際誌への論文投稿を行う。 さらに高分子フィルム・布以外の材料表面の大気圧プラズマジェットコーティング処理による改質、同一表面に2種の大気圧プラズマジェット処理を順次行うことによる効果を調べ、異分野への応用の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
消耗品(薬品、ガラス器具など)および謝金の使用額が予定より大幅に削減できた。加えて設備(タッキング試験機)の新規購入を予定していたが、実際のサンプルでデモ試験をしたところ、必要な測定精度を満たしていないことがわかり、購入を断念した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
テキスタイルに関する実験データ取得が順調に進んでおり、当初計画にはない異分野への応用の関するデータ取得を行う予定である。この中には表面の形態、化学構造に関する詳細な解析が含まれており、現有設備だけでは対応できない状況が見込まれる。タッキング試験も含めて依頼分析の利用を検討している。
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