2014 Fiscal Year Annual Research Report
食事成分の量と質がエネルギー代謝および内臓脂肪蓄積に与える影響
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26282021
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 郁男 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40136544)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エネルギー代謝 / 高脂肪食 / 内臓脂肪 / 肝臓トリアシルグリセロール |
Outline of Annual Research Achievements |
過食が肥満を誘発することは間違いないが、食餌中の脂肪と炭水化物の量と質が内臓脂肪蓄積に影響する可能性も多くの研究で指摘されている。しかし、過食の影響を排除し、等カロリー条件で脂肪と炭水化物の量と質の影響を調べた研究は少ない。そこで本研究では、SDラットおよびC57BL/6Jマウスを用いて試験を行った。基本的に低脂肪高炭水化物食と高脂肪低炭水化物食の2群とし、脂肪添加量は低脂肪食は7%、高脂肪食は21%とした。食事脂肪はラードを用いた。高脂肪食では炭水化物量を減らし、その分セルロースを添加して、両食餌を重量当たりで等カロリーとした。その結果、ラット、マウス共に総エネルギー消費量に2群間で有意な差はなかった。また、内臓脂肪重量にも差はなかった。肝臓トリアシルグリセロール濃度は、ラットでは、高脂肪食群が5週飼育で有意に高かったが、9週飼育では有意差はなかった。糞便への脂肪酸排泄量は、高脂肪食群で高かった。特に、C57BL/6Jマウスでは、かなり高く、エネルギーロスが大きい可能性が示された。これらのことから、C57BL/6Jマウスでは、高脂肪食に含まれる高セルロース量により、糞便への脂肪排泄がかなり高くなり、厳密には等カロリー摂取となっていないと考えられた。従って、マウスではできるだけ等カロリー摂取となるように、摂食試験方法の変更を行う必要があると考えられた。 食事誘発体熱産生測定試験:C57BL/6Jマウスを用い、大豆油およびラードを含む高脂肪食を等カロリーで与え、食後の体熱産生量を測定した。摂食タイミングを合わせるため、摂食飲水行動量測定装置を用いた。その結果、大豆油とラード間で、摂食後のエネルギー消費量、脂肪消費量、炭水化物消費量に有意差はなく、食事脂肪の質は摂食直後の体熱産生や消費する物質の種類に影響しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、等カロリー条件下で、高脂肪低炭水化物食と低脂肪高炭水化物食の影響を調べる。単位重量当たりに脂肪のカロリーは、炭水化物の2倍以上あるので、高脂肪食にすると、餌の単位重量当たりのカロリーが高くなり、この条件で摂食させると、高脂肪食群の摂取カロリーが高くなってしまう。そこで、単位重量当たりで等カロリーに調整するために、高脂肪食にはセルロース(ゼロカロリーとする)を増量して実験を行った。しかし、セルロースは繊維質であるため、脂肪の排泄を増加させることが知られている。セルロースのこの作用は、それほど強いものではなく、SDラットの試験では、若干の脂肪排泄増加が見られたものの、肥満に影響するほどではなかった。しかしながら、C57BL/6Jマウスでは、高脂肪食群では、かなりの量の脂肪排泄が認められ、これは、増量したセルロースの影響と考えられた。このことから、体内に吸収されるカロリーが高脂肪食群では低脂肪食群に比較し低いと考えられた。従って、高脂肪食群で等カロリー摂取を実現できれば、肥満する可能性が示唆された。そのため、高脂肪食でのセルロースの増量をやめることとする。そうすると、単位重量当たりのカロリーが高くなるので、カロリー摂取過多になる可能性がある。そこで、摂食量を毎日調整し、等カロリー摂取となるように、高脂肪食群の摂食量を減量した。このようにして再度試験を行っている。現在、データを解析中であり、最終結果が得られていない。この点の試験が遅れている。また、飼育方法を変更し再試験を行ったために、計画していた飼育試験の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
進行状況に書いてあるとおり、マウスの試験では、高脂肪食の食餌中にセルロースを添加すると糞便中への脂肪酸排泄がかなり増加し、厳密な等カロリー摂食試験はできないことが明らかとなった。そこで、マウスについては、新たな摂食方法で試験することに試験方法を変更する。基本的には、SDラットおよびC57BL/6Jマウスを用いて、いくつかの食事脂肪を用いて、高脂肪低炭水化物食および低脂肪高炭水化物食のエネルギー代謝、脂質代謝および内臓脂肪蓄積への影響を調べることとする。また、挑戦的萌芽研究において、食餌性肥満モデルマウスであるdb/dbマウスでは、等カロリー条件下で高脂肪食を与えると肥満する可能性が示されたことから、このマウスを追加して同様の研究を行うことを計画している。いずれにしても、食事へのセルロース添加によるカロリー調整ではなく、セルロースを添加せず、摂食量を調整することで摂取カロリーを等カロリーに合わせるpair-feedingで試験を行うことを計画している。また、食事誘発体熱産生測定試験では、当初はddyマウスを用いる予定であったが、上記のdb/dbマウスがよりよいモデルとなる可能性があることから、db/db マウスでラードと魚油の影響を調べることを計画している。分析項目は、前年度と同様であり、脂肪組織重量、血清中性脂肪、アディポネクチン、レプチン、血糖、インスリン等を測定する。肝臓は、各種脂質濃度、脂肪酸生合成系および脂肪酸β酸化系酵素の活性およびmRNA発現量を測定する。また、糞便への脂肪酸排泄量もまた測定する。これらの情報から、等カロリー条件下で肥満が誘発される条件、動物系統を探索し、そのメカニズムをあきらかにする。
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Causes of Carryover |
前年度の飼育試験において、実験上問題が生じたため、飼育試験方法を変更して、再飼育試験を行った。そのため、飼育は終了したものの、各種分析が遅れており、分析試薬や器具の購入を行っていない。また、再飼育試験を行ったために、予定していた飼育試験の一部を行うのが遅れている。これらの理由で、繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一部は、横浜でのアジア栄養学会議での結果発表の為の旅費として使用する。 残りは、物品費の消耗品費(実験動物費、飼育飼料費、分析試薬、分析器具等)として使用する。
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