2015 Fiscal Year Annual Research Report
慢性的高脂肪食摂取による学習記憶障害誘導経路の同定と解析
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26282026
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
田口 明子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 部長 (80517186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 認知機能障害 / インスリンシグナル / 血中因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高脂肪食付加糖尿病(DIO)マウスの海馬歯状回で観察される幼弱神経マーカーDcx陽性細胞の樹状突起の複雑性・パターン形成は有意に低下することを明らかにした。2.DIOマウス海馬歯状回のミクログリアマーカーIba1陽性細胞の数は同齢野生型マウスと変わらないが、活性化型ミクログリア数の増加による神経炎症が著しく亢進することが判った。3.Water T maze (WTM)テストを用いた行動解析の結果から、DIOマウスの海馬依存的記憶学習能は有意に衰退することが確認され、この時、DIOマウス海馬のインスリン様シグナルは顕著に亢進していることが判明した。4.我々がDIOマウス血中から単離した分泌因子の投与は若齢野生型マウス海馬歯状回のDcx陽性細胞の樹状突起複雑性の低下および神経炎症の増加を誘導すると共に記憶学習能を有意に低下させることを明らかにしていたが、この時、海馬のインスリン様シグナルはDIOマウスと同様に著しく亢進することを突き止めた。5.これらの結果から、DIOマウス血中から単離した血中因子/分泌因子は血中濃度依存的に脳インスリン様シグナルの活性化を誘導することを介して記憶学習能を低下させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の現所属への異動に伴い、前所属から現所属へマウスを個体で移動する予定であったが、前所属動物センターのギョウ虫感染問題に巻き込まれ(研究代表者のマウス全系統は一貫してギョウ虫感染を含む全ての微生物検査は陰性だったが)、現所属へマウス個体で搬入することが不許可となった。そのため、クリーンナップ(各系統雄マウスの精巣を搬入後、体外受精にて各系統を再作製)を強いられ、現所属でのマウスのセットアップが予定より7ヶ月遅れた。この予定の遅延により、研究の実施も予定よりかなり遅れている。体外受精によって再作製した各変異マウスを含む全てのマウス系統のコロニー作成の見通しが、年度末にどうにか立ったため、今後は遅れを挽回するため、さらに綿密に計画を立て直す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.単離分泌因子が脳インスリン様シグナルおよび認知機能へ与える影響についての確認・詳細:a)離分泌因子の若齢野生型マウス尾静脈内投与による記憶学習能低下作用を確認するため、単離分泌因子と共に中和抗体(対照群にはアイソタイプ抗体)を投与後、行動解析を行い記憶学習能を精査し、その後、海馬インスリン様シグナル(IRS2, PTEN, AKT)の変化について解析を行う。変化が見られた場合は、海馬の神経細胞新生、神経炎症についても解析を行う。b)単離分因子の中和抗体(対照群にはアイソタイプ抗体)をDIOマウス尾 静脈内へ投与し、記憶学習能および海馬インスリン様シグナル(IRS2, PTEN, AKT)への影響について解析を行う。変化が見られた場合は、海馬の神経細胞新生、神経炎症についても解析を行う。c)浸透圧ポンプを用いて単離分泌因子を慢性的に野生型マウスに投与し、記憶学習能および海馬インスリン様シグナル(IRS2, PTEN, AKT)への影響について解析を行う。変化が見られた場合は、海馬の神経細胞新生、神経炎症についても解析を行う。d)単離分泌因子受容体アンタゴニストをDIOマウスおよびc)に投与し、記憶学習能および海馬インスリン様シグナル(IRS2, PTEN, AKT)への影響について解 析を行う。変化が見られた場合は、海馬の神経細胞新生、神経炎症についても解析を行う。2.前認知症患者および認知症患者サンプルを用いた解析:a)前認知症患者および認知症患者(それぞれ糖尿病付随の有無のグループ)の血中における単離分泌因子の濃度の変化について解析を行う。b)同患者の髄液を用いて、血液と同様に単離分泌因子の濃度の変化について解析を行う。
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Causes of Carryover |
前述の通り、研究代表者の現所属への異動に伴うマウスの移動に問題が発生し、 マウスの移動、セットアップが予定より7ヶ月遅れ、H27年度はこれらのマウスを使用した実験の一部を行うことができなかった。そのため、本年度実施できなかった実験を次年度に行うため、実験に係る研究費分を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施予定であった若齢野生型マウスおよび高脂肪食付加糖尿病モデルマウスへの投与予定の中和抗体および関連薬の多量購入と行動解析機器あるいは分子測定機器の購入に当てる予定である。
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Research Products
(11 results)