2014 Fiscal Year Annual Research Report
大学の教学マネジメントにおける教育情報の実践的活用及び公表のシステムに関する研究
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26282063
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鳥居 朋子 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (10345861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 有司 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (10584071)
高橋 哲也 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (20212011)
杉本 和弘 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (30397921)
深堀 聡子 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (40361638)
川那部 隆司 立命館大学, 教育開発推進機構, 准教授 (40617081)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教学マネジメント / 教育情報 / インスティチューショナル・リサーチ / 情報の活用と公表 / 大学ポートレート / 説明責任 / 教学改善 / 質保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成26年度は、基礎的な研究資料・文献の収集・検討を進めながら、海外の先進事例に関して英国、米国、豪州において大学のポートレート運用団体および個別機関等への訪問調査を実施し(2015年2~3月)、大学の教学マネジメントおよび教育情報の実践的活用と公表のシステムの動向について情報収集を行った。 英国では、Unistatsの運用機関であるHigher Education Funding Council for Englandへの訪問調査を行い、なおかつ、University of Bristol、Kingston UniversityおよびMiddlesex Universityを訪問し、個別機関における教育情報の実践的活用と公表の実態について聴取した。 米国においては、Association for Institutional Researchの執行部に対するヒアリングとともに、James Madison UniversityおよびUniversity of Central Floridaにおいて、主にアセスメント情報の教学改革への活用のあり方について調査を実施した。 豪州では、豪州連邦教育省内のMyUniversity担当部署において、同ポートレートのコンセプトおよび活用状況や今後の改訂計画等についてヒアリングを実施した。さらに、Australian National Universityでは、質保証の枠組みおよび学修成果測定の状況について聴取した。 以上の海外における先進事例の調査にあわせて、国内外の学会等における研究発表を実施した。具体的には、Association for Institutional Research Annual Form(2014年5月米国フロリダ州オーランド)、大学教育学会大会(2014年6月名古屋大学)および同学会課題研究集会(2014年11月神奈川工科大学)等において、主に日本の大学における教学マネジメントおよび教育情報の実践的活用および公表の現状に関する研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、海外における先進事例の調査を中心に、当初の計画に照らして概ね順調に研究を遂行している。とくに、英国・米国・豪州それぞれの高等教育政策や高等教育質保証システムの異同を考慮しながら、各国の大学ポートレートや個別機関における教育情報の実践的活用および公表の実態が解明されつつある。具体的には、英国調査において、Unistatsで採用されているKey Information Set(KIS)と呼ばれる中核情報には、全国学生調査による学生満足度や進路決定情報等が含まれており、これらのKISは個別機関においても重要視され、教学マネジメントに影響を与えていることが確認された。また、米国調査において、学生数2万人規模の州立大学であるJames Madison UniversityのCenter for Assessment & Research Studiesでは、一般教育課程(入学前と通常2年目の2月)で学内共通のテストを一斉に実施をして、汎用的技能・リテラシーに関する付加価値を測定し、プログラム評価に活用している状況が明らかになった。また、専門課程では各プログラムの教員をCARSが支援しながらテストを開発して、学修成果を測定し、プログラム評価に活用している状況が確認された。一方、 学生数6万人規模の州立大学であるUniversity of Central Floridaの Office of Operational Excellence and Assessment Supportでは、学部教員が州基準やアクレディテーションにそってアセスメントを展開して、プログラム・レビューを実施できるようにサポートすることに徹していることが確認された。さらに、豪州のMyUniversityおよびAustralian National UniversityのPlanning & Performance Measurementでは、卒業率や学位取得率等の外形的な指標だけではなく、学修を通じた学生の成果にかかわる質的な成果指標の開発に関心の比重が移行していることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、個々の大学における「資産(asset)」としての教学マネジメント情報を組織的に可視化し、なおかつ可視化された情報を教育改善等に実践的に活用しかつ公表するための理論及び方法を追究することを目的とする。 今後は、これまでの研究成果をふまえながら、引き続き大学の教学マネジメント情報の実践的活用と公表の現状および課題を把握するために、海外における先進事例の新規調査および追跡調査や、国内における状況調査を実施する。海外における訪問調査については、米国・英国・豪州等における先進事例の追跡調査を進めながら、韓国等のアジア諸国における教学マネジメント情報の開発状況の調査も検討する。なお、日本の大学への訪問調査等に基づく教育情報の運用に関する現状及び課題の把握に関しては、当初平成26年秋に予定されていた「大学ポートレート」の本格稼動が平成27年3月に遅れたため、本研究の二年目および最終年度に計画を実行する。 以上の国内外調査の結果に基づき、日本における全国版の共通基盤による情報発信と機関独自の情報発信の関係に関する整理や、大学ポートレート等の円滑な運用の仕組みの解明とともに、大学の教学マネジメントにおいて学修成果等の教育情報を実践的に活用し公表する際に考慮すべき点やシステム上の要件等の抽出を目指す。 さらに、研究成果の発表に関しては、Association for Institutional Research(2015年5月米国コロラド州ボルダー)、大学教育学会大会(2015年6月長崎大学)および同学会課題研究集会(2015年12月岩手大学)、日本教育工学会大会(2015年9月電気通信大学)等の高等教育マネジメントおよびIRに関する学会・研究集会に参加し、国内外の情報を広く収集するとともに、研究成果の発表を通じた意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画において研究代表者は英国調査の担当ではなかったが、その後の研究の進捗や研究計画の吟味により、平成27年2月に実施した英国調査に研究代表者も参加する必要があったため、研究代表者の英国出張にかかわる航空費、鉄道料金、日当、宿泊費において次年度使用額が生じた。研究代表者の英国調査を要した主な理由は、1.訪問調査機関と研究代表者との人的ネットワークを活用し、研究初年度における訪問調査を円滑に実施するため、2.訪問調査機関において本研究に関するセミナーを実施するため、である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の使用計画においては、平成26年度の研究成果に立脚し、訪問調査国および訪問調査機関の精選を行う。とりわけ、英国調査に関しては、平成26年度の訪問調査において英国の高等教育政策の全体的な動向および全国データベースの特質が一定程度把握できたことにより、平成27年度はより焦点化した調査を実施し、合理的な経費の使用を行う。米国調査および豪州調査においても同様に、平成26年度の調査成果に立脚し、残された課題を明らかにした上でより焦点化した訪問調査を実施する。
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Research Products
(13 results)