2014 Fiscal Year Annual Research Report
多元的環境正義を踏まえたエネルギー技術のガバナンス
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26282064
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20316334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西城戸 誠 法政大学, 人間環境学部, 教授 (00333584)
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
本巣 芽美 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (40714457)
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
森岡 正博 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80192780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エネルギー技術 / ガバナンス / 環境倫理 / 再生可能エネルギー / 国際情報交換 ドイツ / 国際情報交換 デンマーク / 科学技術社会論 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー技術と社会の関係について多面的に明らかにするために(1)持続可能な社会に関する社会理論研究(2)エネルギー技術の社会化過程の実証研究(3)エネルギー技術のガバナンスを実現する社会実験、という三つの研究領域を設けて研究を進めた。国内外の事例調査を通じて、エネルギー技術に付随する多様な価値を網羅的把握し、諸価値の齟齬や対立を含めた全体像を明らかにした。 実証的研究では導入地域における諸問題や合意形成過程を定性的に明らかにし、現実のプロジェクトにおいてはステークホルダ間の利害の齟齬があることと、その配分構造が合意形成上の障害など関連していることを明らかにした。また導入を進める側と受け入れる側とでは評価の枠組みが異なっていることもあり、これを共有する過程を省略することが手続き的正義にかかわる問題の原因となっていることも明らかにした。その一方で、地域の主体が能動的に関与しながら多様な付加価値をもたらす事業が存在することも明らかになった。 このことを踏まえてエネルギー利用に伴う諸問題を時空間の枠組みの中で整理すると同時に、その利害配分を最適化するためのガバナンスの理念と方法を図式化した。 実証的研究と理論研究によって明らかにされた知見と並行して社会実験を立案し、その一部を実施した。具体的には、経済セクターも含めた多様な主体の利益を実現する事業モデルを構築する協議会や、規制での対応が困難な環境影響を制御するための方策を支援しつつ、その成果を検証するための方法論を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)社会理論(2)実証研究(3)ガバナンスの社会実験いずれの研究領域においても一定の成果を上げた。事例研究では国内外におけるエネルギー事業の取り組みについて網羅的に把握し、その理論的示唆へのフィードバックも進んでいる。これを踏まえた社会実験の方も具体的に動きつつある。各領域相互の知見も適宜共有されており、総合的な知識生産が実現している。単なる経済論や技術論、あるいは社会論という特定の枠組みを超えるという当初の目標に向けて順調に進捗している。 時宜に適った成果を発表しつつあり、社会的にも注目を集めている。雑誌論文10本、図書2点、学会報告14報を発表し、招待講演も含めて国際会議においても積極的に成果を報告している。こうしたことから国内外において当該研究の存在が認知されつつある。 事例調査の結果、量的調査の手法と方法について内容と時期の見直しが必要となった。このため当該調査の実施は当初予定の年度末よりは遅れている。ただし、より発展的な内容を含む調査が実現する見込みとなっているため全体としての遅れは生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き事例調査、社会理論、社会実験の連携を図りながら研究を進める。今年度は海外事例の調査に重点を置き、理論研究との相互フィードバックにも留意しながらドイツやデンマークなどの国との比較を行う。またエネルギー事業の社会的受容性やエネルギー技術の技術の選好に関する量的調査を早期に実施し、その成果は社会実験にも活用する。具体的には電力自由化後の電力メニューの提案などへの応用を検討する。 社会実験については現場での進捗状況に応じて適切な知見を反映させる。今年度はビジネスモデルの構築や環境影響の制御について具体的な動きが予想されることから、他の主体との連携には十分注意する。また実証的研究と理論研究によって明らかにされた知見も反映させながら、一般的知見として地域の状況と事業の進捗の段階に応じて予想される問題の所在や対応方法についての見取り図の作成に着手する。
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Causes of Carryover |
協力者からの提案により質問票調査の時期及び詳細を再検討する必要が生じ、これに伴う諸経費の執行が持ち越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施時期は遅れたが、内容の見直しなどは完了しているため、次年度の早期に実施する予定である。
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Research Products
(37 results)