2014 Fiscal Year Annual Research Report
断面分析試料からの極微量試料の採取とその化学分析手法の開発
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26282070
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 講師 (40409462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 嘉美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (90445841)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化財分析 / 熱分解分析 / 有機分析 / 微量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究により,ヤモリテープを文化財分析の保持素材として利用することは可能であるとの結論にいたった。この根拠として,(1)分析に必要な試料量は,その分析条件を最適化することで20μgまで減らすことが出来た(2)同条件にてヤモリテープが存在することによるデータの齟齬や予想外の変化など,分析に対する影響はほとんどなかった。(3)ヤモリテープ存在下の方が,分析の感度は数パーセントではあるが向上する可能性を見いだした。という3点が挙げられる。 当初,課題となるであろうと考えていたヤモリテープ上の不純物に関しては,使用前に不活性ガス下,800°Cで加熱することで容易に除去出来たため,実際の分析における影響は皆無である事が分かった。このことにより,当初の予想よりも試料量をより少なくした際の分析条件の検討に割く時間が確保することが出来た。 また,分析に用いる誘導体化試薬の検討についてもこれまでよりも詳細な検討を行った結果,マイクロ反応サンプラーによる誘導体化測定の標準偏差が,従来法よりも遥かに良い値となることが判明したため,今回見つかった条件を主として利用することとした。 一方,サンプリングに用いるナイフについても漆膜の表面から切削する場合の条件もおおよそ判明し,ヤモリテープによる微細粉末試料の回収は実用に耐えうる手法となった。しかしながら,ヤモリテープを複数回にわたって使用する場合における回収効率の低下が見られたため,ヤモリテープの形状変更などの措置をとることとしている。本内容に関しては,ヤモリテープ開発元の日東電工株式会社と相互に情報交換を行いながらより使いやすい形状のテープ作成を行う事で解消可能と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の大きな課題となるであろうと思われていたヤモリテープの不純物除去が,不活性ガス下での加熱を1回行うことで十分に達成できることが分かった。そのため,当初の予定よりも微量な試料の測定条件に大きく時間を割くことが出来た。その結果,研究の初期段階の予想よりも高感度で分析することが可能となった。その結果として(試料の状態にもよるが),漆膜を20マイクログラム前後で分析できることが可能となったことは,現状の文化財分析において大きな価値を持つ結果である。 また,誘導体化に関しても予想と同程度の感度に上昇し,順調な成果が得られている。特に,標準偏差(結果のばらつき)に関しては従来法よりも2.6倍ほど向上した。これは測定による結果の信頼性が大きく向上する結果である。 一方,切削に関しては,漆膜の表面からのサンプリングという条件であれば十分に実用可能域に達している。しかしながら,試料の保持に使っている接着剤の成分が検出されることも多く,これらの混入を避けることの出来る条件の設定が必要であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでは全体として非常に順調に研究は推移しており,平成27年度は特にマイクロ反応サンプラー内での試料の設置方法と,その分析手法に主眼を置いて研究を推進していく。実際に,ヤモリテープと誘導体化試薬を併用した場合における挙動を試行した際には,特に大きな問題は生じていないため,主として反応サンプラー内への無駄の少ない試料導入法の確立が重要であると考えている。 試料導入の方法については種々の方策を考えているが,マイクロ反応サンプラーのガラス管の径を改良するなどのハード面の検討も行う予定である。 一方,サンプリングの面においては,切削の際の固定樹脂の混入が問題点としてあげられる。この点に関してはナイフの素材の最適化や,混入したとしても明確に分別できる樹脂を利用すれば大きな障害にならないことも考えられる。そこで,試料の成形が可能でありながら,質量分析によって識別可能という素材の探索が大きなポイントであると考えている。
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Causes of Carryover |
少額の残額であったため,翌年度に繰り越しての利用がより効果的であると判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費は消費税の増額にともない増加傾向にあるため,平成27年度の消耗品費として利用する。
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Research Products
(3 results)